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2014年11月10日月曜日

千葉大学園芸学部にはイタリア式庭園とフランス式庭園がある ー 千葉大松戸キャンパスをはじめて訪問(2014年11月9日)

(フランス式庭園 筆者撮影 以下同様)


千葉大学園芸学部をはじめて訪問した。千葉大学は県庁所在地の千葉市内にキャンパスあるが、園芸学部はJR常磐線沿線の松戸市にある。1909年に設立された千葉県立園芸専門学校がその前身だからだ。

千葉大学園芸学部は、日本で唯一設置された官立高等園芸学校として、すでに通算100年以上の歴史をもつ名門だ。千葉大学は地方大学だが、園芸学部は千葉県外でも有名なのではないだろうか。かつての勤務先の上司も、園芸学部の造園科出身であった。現在は改組されて名称は変更されているようだが。


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(松戸キャンパスの北門)


今回たまたま千葉大学松戸キャンパスにいく用事があったので、ついでに一般人が入ることのできるところだけ歩いてみた。


(手前がイタリア式庭園、左手にフランス式庭園)


植物工場も見てみたいが見学日が限定されているので、無料で開放されているイタリア式庭園とフランス式庭園に立ち寄ってみた。案内板をみてはじめて知ったが、与謝野晶子の歌碑もキャンパス内にあるようだ。




本日(2014年11月9日)は曇り空で時折雨も降っている天気だったのだけでなく、すでに11月に入っており晩秋でもあるので、残念ながらイタリア式庭園にもフランス式庭園にも華やかさが欠けるのが寂しい。花の咲いている時期なら、もっと美しかったことだろう。


(イタリア式庭園 日時計)


西洋式庭園は歴史的発展の順に、イタリア式庭園、フランス式庭園、イギリス式庭園(=いわゆるイングリッシュ・ガーデン)の3つのパターンになる。

ルネサンス期のイタリアで生まれ、バロック時代のフランスを経て完成し、フランスとは対極的な発想の島国イギリスでは個性ある発展をとげる。

幾何学的な設計のフランス式庭園は近代合理主義精神そのものだが、イタリアはかならずしもそうでもない。近代後に生きるわれわれには、むしろイタリアのほうに親しみを感じるのは不思議ではないだろう。

ガーデニングがブームになって以降の日本では、自然をそのまま活かしたイギリス式庭園が人気があり認知度も高いと思うが、ヨーロッパ大陸ではフランス式かイタリア式が圧倒的に多い。Zen Garden (=禅庭)も含めた日本式庭園も、哲学や思想のある庭園として、とくに知識階層のあいだでは根強い人気があるようだ。

千葉大学園芸学部には、もともと西洋式庭園の3パターンすべてが揃っていたようだが、イギリス式庭園は現在では撤去されたため、残念ながら見ることができなかった。


(フランス式庭園 幾何学的設計が特徴)


フランス式庭園は幾何学的設計が特徴。さすがデカルト以来の幾何学と数学の国である。フランス式庭園というコトバを知らなくても、見れば「ああ、これがそうか」とわかるはずだ。


(フランス式庭園を反対側からみる)


ほとんど駆け足で回っただけなので、じっくり鑑賞するヒマがなかったが残念。

フランス式であれ、イタリア式であれ、庭園の基本設計はそのまま導入しても、日本の風土のなかでは土壌も気候も異なり、それにしたがって植生も異なるので、フランスそのものではなく、フランス「式」なのだなあと思ってしまう。失礼を顧みずに正直に感想をいえばそうなる。


千葉大学の園芸学部は、「実学」に重点を置いた応用科学系学部で、園芸学科(・・栽培・育種学プログラム、生物生産環境学プログラム、応用生命化学科(・・応用生命化学プログラム)、緑地環境学科(・・緑地科学プログラム、環境造園学プログラム、環境健康学プログラム)、食料資源経済学科(・・フードシステム学プログラム、資源環境経済学プログラム)の4学科が置かれている。

園芸学部の英語名称は Faculty of horticulture とある。horti-culture(=園芸)には culture(=耕作)が含まれていることからもわかるように、農業と重なる面も多い。前半部の hortus はラテン語で庭という意味である。だから、園芸とは「庭を耕す」ことなのだ。そもそもヨーロッパにおいても、園芸と造園の境界もあいまいなようだ。

ヨーロッパでも日本でも、薬学部は薬草園をもっているが、出自の異なる園芸学部には薬草園はない。ヨーロッパがアジアの植民地につくった植物園(=ボタニカル・ガーデン)は熱帯植物のコレクションと研究が目的であったので、これもまた庭園とはそもそも性格が異なる。

園芸学や西洋式庭園の造園学もまた、明治以降に西欧学問の輸入から始まったため、実学としての造園という観点からキャンパス内にフランス式庭園やイタリア式庭園がキャンパス内につくられたのだろうか? 

西欧文明における植物園や薬草園、庭園の関係について、もっと知りたいという好奇心がかきたてられた一日であった。


 (画像をクリック!)


<参考文献>

●『ヨーロッパ100の庭園』(巖谷國士=文・写真、平凡社コロナブックス、1998)
●『ヨーロッパ庭園物語(知の発見双書)』(ガブリエーレ・ヴァン・ズイレン、小林章夫=監修、渡辺由貴訳、創元社、1999)
●『ヨーロッパの庭園-美の楽園をめぐる旅-』(岩切正介、中公新書、2008)
・・いずれも現在は品切れ状態。


<関連サイト>

千葉大学園芸学部松戸キャンパスの散策
・・個人が解説しているサイト。くわしい説明がある



PS 千葉大学園芸学部に隣接して「戸定邸&公園」がある

千葉大学園芸学部を訪問した際、「戸定邸」(とじょうてい)の意味を知らずに、立ち寄らずにすましてしまった。ちょうど2年後に訪問する機会を得た。

最後の水戸藩主・徳川昭武の屋敷であった戸定邸(とじょうてい)をはじめて訪問(2016年11月4日)-「維新の負け組」は後世に向けて文化遺産を残す

「戸定邸」の庭園は、芝生を張った洋風庭園。しかしお屋敷は和風建築。この異質な要素のコントラストは意外としっくりフィットしている。

(2016年11月7日 記す)


<ブログ内関連記事>

「ふなばしアンデルセン公園」にはじめて行ってみた(2014年4月6日)-デンマーク王国オーデンセ市と千葉県船橋市が姉妹都市となって25年
・・コペンハーゲンのチボリ公園は、イタリアのローマのティヴォリを北方で再現したもの

「自分の庭を耕やせ」と 18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールは言った-『カンディード』 を読む
・・「庭を耕す」には象徴的な意味の他に、園芸という意味もある

「無憂」という事-バンコクの「アソーク」という駅名からインドと仏教を「引き出し」てみる
・・ヨーロッパによるアジア植民地における植物園(ボタニカル・ガーデン)について触れている

「東京大学総合研究博物館小石川分館」と「小石川植物園」を散策(2009年7月12日) ・・薬草園

「植物学者 牧野富太郎の足跡と今(日本の科学者技術者シリーズ第10回)を国立科学博物館」(東京・上野)にいってきた

「世界遺産キュー王立植物園所蔵 イングリッシュ・ガーデン 英国に集う花々展」(パナソニック汐留ミュージアム(2016年1月22日)-現在の英国を英国たらしめている植物愛を体現している植物園とその世界を紹介した展示会

(2016年3月28日 情報追加)


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2009年7月12日日曜日

「東京大学総合研究博物館小石川分館」と「小石川植物園」を散策(2009年7月12日)






 小石川植物園に久々にいってみた。東京大学総合研究博物館小石川分館にいくためである。常設展示の「驚異の部屋 -The Chambers of Curiosities」を見に行くのが目的だ。本日は気持ちいい天気で、かっこうの散歩日和であった。

 「驚異の部屋」とは、ドイツ語のヴンダーカマー(Wunder-kammer)のこと、16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで盛んに作られた、好奇心の対象がごった煮になって詰め込まれた部屋のこと。博物館の前身にあたる。

 試みに Google で Wunderkammer とそのままドイツ語で画像検索してみると、実に多種多様な Wunderkammer の実例をみることができるので、ぜひ試してみてほしい。

 さらに深い関心がある人は、『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』(小宮正安、集英社新書ヴィジュアル版、2007)がおすすめだ。


 さて日本のヴンダーカマーはいかに?

 またまた、本日も小学生に戻ってしまった。ワーオ、と何度も連発したくなるのだ。こんな空間が日本にも、しかも東京大学にあったとは!

 さすが東大、明治の先人たちのサイエンスへのあくなき情熱をひしひしと感じることができるのだ。



 ナチュラル・ヒストリー(博物学)と、ナチュラル・サイエンス(自然科学)がまだ完全に分離していない時代のあくなき好奇心。

 望遠鏡に巨大地球儀、数々の動物剥製、人体模型、鉱物標本に化石、数々の生物標本、人体解剖模型、牛の解剖模型、骨格標本・・・

 さらには、まだまだ国産品がなかった時代の顕微鏡やさまざまな計測機器、タイプライターなど機器の数々、いやあ学問への情熱がみなぎってますねー。なんだかうれしくなってくるなあー!


 せっかくだから、小石川植物園も久々に散策してみることに。正門まで歩くのにはかなりの距離がある。入場料は330円、門前のたばこ店のおばあさんから購入する。


 現在は東京大学大学院理学系研究科附属植物園という形で東大が管理運営する資産になっているが、もともとは徳川綱吉が命じて作らせたという薬草園から始まっており、なんと300年以上の歴史をもつというから、世界に誇れる植物園なのだ。

 今回の収穫は「精子発見60周年記念(昭和31年)」のイチョウの大木を見ることができたことだ。実にうれしい発見だった。




 イチョウは雌雄に分かれており、精子と卵によって受精することを世界で初めて発見したのが、東大に画工として雇われていた平瀬作五郎であったとプレートに書いてあった。1896年のことである。
 
イチョウの受精については高校一年の生物学で学んだが、日本人が世界で初めて発見したことは聞いた記憶がない。こういう事実はもっともっと声を大にして世に知らしめなくてはならないのではないか。


 さて、そもそもの出発点であった薬草園は、実にこじんまりしたものになってしまっている。雑草も生え放題になっているのはなぜだろうか? 

 かなり以前に東邦大学薬学部(千葉県習志野市)の薬草園を見学する機会があったが、医学部薬学科のある東邦大学では薬草園はかなりきちんと管理されていた。小石川の薬草園はもはや現役ではないのか?


 もともと生物学志望だった私は、世界の植物園(ボタニカル・ガーデン:botanical garden)は数々みてきた。ゲーテも訪れたというイタリアのパドヴァの植物園、スペインのマドリー、ポルトガルのリスボン、それからアジアでは英国の植民地だったセイロン(スリランカ)の熱帯植物園などなど。

 また井の頭公園の温室植物園は子供のころ毎週のように通っていたほどだ。(注:残念ながら2013年3月末で閉園となったそうだ・・・)

 その中でも、なんといってもオランダの植民地であった、インドネシアのボゴール熱帯植物園が世界最高である!という印象をもっている。


 小石川植物園は春の桜の名所として有名だが、歴史ある植物園として、本来あるべき薬草園にはもっと力を入れてもらいたいものだと思う。

 世界の植物園(ボタニカル・ガーデン)がヨーロッパ起源のものが大半のなかで、中国の本草学の影響のもとにあるとはいえ、小石川は日本が独自に作った薬草園である。

 明治の先人の燃えるような情熱は、回顧すべき対象として博物館に展示するだけでなく、その精神を現代に呼び覚まし、活かさねばならないのである。イチョウの精子を発見した平瀬作五郎のような、学問的素養のない一般庶民までが学問に貢献した明治という時代の精神を。
  
 日本人は世界に誇るべき多くの業績を残してきたし、これからも残すことができるはずなのだから。





PS 読みやすくするために改行を増やし、写真も大判にした。記事を書いてからすでに5年になるが、この間に展示が終了した常備展や閉鎖された植物園があることがわかった。ボタニカルガーデンは教育施設でもあるので、きわめて残念。博物学への情熱をなんとか日本人のあいだにふたたびかき立てることができないだろうか・・・ (2014年5月10日 記す)



<関連サイト>

小石川植物園 東京大学大学院理学系研究科附属植物園

「驚異の部屋 -The Chambers of Curiosities」 (残念ながら、2012年9月30日に閉鎖)
・・東京大学総合博物館小石川分館は現在は「建築ミュージアムとして 2013年12月14日にリニューアル・オープン)

インドネシア・ボゴールの熱帯植物園 (小石川植物園後援会ニュースレター第26号 2004年掲載記事)

井の頭公園の熱帯鳥温室が展示終了へ (博物月報 2013年3月30日)

(項目新設 2014年5月10日)




<ブログ内関連記事>

書評 『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』(小宮正安、集英社新書ヴィジュアル版、2007)-16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで流行した元祖ミュージアム

銀杏と書いて「イチョウ」と読むか、「ギンナン」と読むか-強烈な匂いで知る日本の秋の風物詩

市川文学散歩 ①-葛飾八幡宮と千本いちょう、そして晩年の永井荷風

"粘菌" 生活-南方熊楠について読む-

「植物学者 牧野富太郎の足跡と今(日本の科学者技術者シリーズ第10回)を国立科学博物館」(東京・上野)にいってきた

「石に描かれた鳥たち-ジョン・グールドの鳥類図譜-」(玉川大学教育博物館)にいってきた(2013年1月26日)-19世紀大英帝国という博物学全盛時代のボタニカルアート

マロニエはマロン(栗)にあらず

秋が深まり「どんぐり」の季節に
・・食料としてのドングリ、木材としてのオーク材について触れている

(項目新設 2014年5月10日 情報追加 2014年8月2日)


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