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2010年9月13日月曜日

庄内平野と出羽三山への旅 (3) 「山伏修行体験塾」(二泊三日)に参加するため羽黒山方面に移動




いよいよ今回の旅のメインイベントである「山伏修行体験」(二泊三日)に参加
  
 繰り返しになるが、今回の旅のテーマは以下のとおりである。

① 「山伏修行体験塾」(二泊三日)に参加すること
② 出羽三山(羽黒山・月山・湯殿山)をすべて歩くこと
③ 即身成仏による「ミイラ仏」を実際に見ること
④ 庄内地方が生んだ 大川周明、石原完爾ゆかりの地をまわること


 さて、いよいよ今回の旅の中核(コア)、メインイベントである①「山伏修行体験」(二泊三日)に参加する。ワクワク、ドキドキ感でいっぱいなのは、私にとってはまったくの初体験だからだ。期待と不安、その両方を感じていた。
 山伏姿には憧れを感じていたが、とはいっても単なるコスプレではなく修行することとなるわけだし、携帯電話もデジカメも、その他情報機器ともしばらくお別れである。「情報遮断」の数日間を送ることになるわけであり、望むところではあるのだが。

 「情報遮断」の結果デジカメが持ち込めないので貴重品として預けることになる。したがって、山伏修行体験」期間中は写真はいっさい撮影していない。じっさいのところ、いっさい写真撮影しないのは、それはそれで気楽ではあったのだが。
 挿入した写真は、それ以外の旅行中に撮影したものであることをお断りしておく。


 さて、集合場所である「いでは文化記念館」は羽黒山の中腹にある。鶴岡駅前から庄内バスで羽黒山まで向かう途中で下車することになる。料金は800円。

 鶴岡市内はまた雨。うまい具合に午前中に市内観光をしておいたよかった。雨が降っているとママチャリのレンタサイクルで市内観光というわけにはいかないから。


なぜ私は「山伏修行体験」に参加したのか

 なにごとも自分で体験してみないことには自信を持って人に語ることはできない、というのが私の信条というか生活態度になっている。

 これは、今年(2010年)の7月に実行した「成田山新勝寺の断食参籠修行」(三泊四日)もそうであるし、このブログに書いた「むかし富士山八合目の山小屋で働いていた」もそうであるように、本で読んだ話や人から聞いた話だけではなく、自分のカラダを使って、五感すべてを働かせてこそ、自分なりに納得し、自分のコトバで体験を語ることができると考えているからである。

 意外と人から聞いた話を自分の体験と思い込んでいることがありがちだからこそ、あえて自らの肉体を使って体験することが何よりも重要なのではないだろうか。だから、私が書いていることもそのまま鵜呑みにしないほうがいい。自分自身で検証してみることをぜひ勧めたい。

 山伏についていえば、小学生のときに東京西郊の高尾山でみた記憶がホンモノの山伏を初めてみた体験であり、強く印象に残っている。山伏姿の行者がホラ貝を吹いている姿を見て、小学生時代の私はあたかも「生きた化石」シーラカンスのように感じたものである。山伏は現代にもいるのか(!)と。
 山歩きする人間にとっては、日本の山がすべて信仰登山から始まったことを知れば、山伏を含めた山岳修行者の存在はけっして縁遠いものではないのだ。

 山伏といえば、中学校の国語の教科書に載っていた「柿山伏」という狂言も記憶に強く刻まれている。室町時代にできあがった能狂言の幕間喜劇である狂言では、山伏はつねに戯画化(カリカチュア)して描かれているが、室町時代と現代を結んで存在し続けた山伏に多大な興味を抱くのは、好奇心の塊である私のような人間にとっては当然のことだろう。

 だから今回の参加は、長年にわたって気になってきた山伏という存在を、二泊三日という体験であるにせよ、自らのカラダをとおして体験してみたいという強い気持ちがあったからだ。

 いまから10年以上前にも参加を考えたことはあったが、その後そのまま状況に流されて、秋になるたびに今年も参加できなかったなあとため息をつく年月が過ぎていった。
 いよいよ今年度に参加を決めたのは、「断食参籠修行」を体験した以上、次は「山伏修行体験」をしなくてどうするのだ、という強い気持ちというか、まあ勢いみたいなものであった。

 学術目的とはほど遠いが、フィールドワークのようなものとして体験してみたい。ただし、今回の体験塾においては情報遮断が要請されるので、写真もメモもいっさい取っていない。記憶によってのみ、参加体験の感想を書いてみたいと思う。実際のところ、体験塾参加中は次から次へと続くメニューに追いまくられ、あまりものを考えている余裕はなかったというのが真相だ。


「山伏修行体験塾」の募集要項の紹介

 2011年度以降に参加される方もいるかもしれないので、参考のために2010年度の参加募集要項を抜粋して掲載しておこう。


個人及び17人以下のグループは、「9月3(金)~5日(日)」の体験塾主催に参加して頂きます。

用意するもの

1.体験用装束(白衣・袴・脚絆・帯・地下足袋)は、貸与します。
2.体験用装束(金剛杖・宝冠・ふんどし等)及び体験中の宿・食は、経費に含まれています。
3.必需品(*)として、雨具(ポンチョは不可。上下別々の物)、トレーナー、トレパン、小さなナップザック、白Tシャツ数枚、女性の方は水着。靴のサイズが28cm以上の方は履き慣れた白いスニーカーを持参ください。
4.宣伝PRの一環として、新聞社・雑誌社・テレビ局などのマスコミ関係の取材が入る場合がありますの、応じたくない方については映らないように配慮いたしますので事前にお申し出ください。

(*)参加してみての感想だが、白Tシャツ数枚は男性には不要。山伏装束をつけたままふんどし姿で寝るので下着はいらない。今年は猛暑だったが、通常は朝晩は冷え込むのでトレパンなど持参したほうがいいかもしれない。


 なお、2010年度の参加費用は、29,800円であった。この費用には、二泊分の宿泊費、食費、精進落とし関連などの諸経費がすべて含まれているので、けっして高くない。集合場所までの交通費はもちろん自腹である。

 なお参加にあたっては「誓約書」の提出が求められる。体験塾とはいえ、山伏修行には危険は付きものである。参加に当たっては自己責任原則を貫くことが重要だ。もし事故が起こったら、マスコミの格好の餌食になってしまう恐れがなくもない。


「山伏修行体験」(二泊三日)コースの内容

 募集要項に記載されていたコースメニューをそっくりそのまま転載しておこう。( )内の日付は2010年度のものとして私が追加したものである。
 用語の意味や内容については、おいおい解説していくこととしたいが、参考のために( )内に一般用語を挿入しておいた。

一日目(2010年9月3日)

13:30 「いでは文化記念館」に集合、着替え
    峰入り式
14:00 講話
14:30 水垢離
15:00 抖(と)そう行(=歩行)
17:30 床固め(=座禅)
18:30 壇張り(=食事)
19:00 抖(と)そう行
21:30 忍苦の行(=南蛮いぶし)
22:00 宿入り


二日目(2010年9月4日)

4:00 起床
4:30 水垢離
5:00 床固め(=座禅)
6:00 壇張り(=食事)
7:00 月山抖そう行
15:00 滝うち
18:00 床固め(=座禅)
18:30 壇張り(=食事)
19:00 天狗相撲
20:00 抖そう行
21:30 忍苦の行(=南蛮いぶし)
22:00 宿入り


三日目(2010年9月5日)

4:00 起床
4:30 水垢離
5:00 床固め(=座禅)
6:00 羽黒山抖そう行
9:30 出世式(=火渡り)
10:00 終了式
10:30 精進落とし(=入浴、ひげ剃り)
11:00 解散


 ただし、すべてがこのコースメニューどおりに行われたわけではない。参加者の状況や天候などによって臨機応変に修正が加えられる。中身ついては、これからおいおい説明してゆくこととしたい。

 今回の参加者は41人。企業から一括で18人の参加があったが、「地獄の特訓」や「自衛隊体験入隊」と勘違しているのではないかとも思われた。一言でいうと、マナーが悪すぎる。自分の意思で参加したのではないという思いが甘えを生んでいるのであろう。
 あくまでも個人の意思で、自己責任のもとに参加するのが本来のスジというものだろう。個人参加者とは心構えがまったく異なる人たちであった。


山伏装束について

 「山伏修行体験」なので、本格的な山伏修行とは異なる。簡素なものである。
 
 すべてが白装束である。いわば死に装束である
 つまり山伏修行に入るということは、象徴的にいったん死んで、再び生まれ変わるということを意味するために、修行期間中は白装束をまとうことになるのだ。  

 合気道やってたので装束をつけるのは慣れているが、山伏の袴(はかま)は、ニッカーボッカーのように、膝上で絞る仕組みになっているのが違うところだ。

 ふんどしも初体験。私の年代の人間で日常的にふんどしを使用しているのはごく一部の人だけだろう。ふんどしの付け方もわからなかったがこれはいい経験になった。実際に着用してみると、話に聞いていたとおりで、すうすうして気持ちよい。
 恥ずかしいという気持ちは修行に入った瞬間から捨てることだ。水垢離(=みそぎ)や滝行では、男子はふんどし一丁で水に入ることになる(・・女子は水着着用)。
 なお、ふんどしは貰って帰ることができるので、今後は愛用したい!?

 軍足のうえに脚絆(きゃはん)をつける。これは登山用具のスパッツのような機能を果たす。なんせ山伏修行とは、ほとんどが信仰目的の山歩きなのである。
 おかげで、床固め(=座禅)といっても正座をする必要はない。すべて山伏は胡座(あぐら)である。


 とにかく苦労したのが地下足袋。
 色は白、祭のときに履く白足袋のゴム底の地下足袋であるが、私は足首の骨が太いのか、足のサイズで選んだ地下足袋のホックがなかなか入らなくて往生した。時間がかかって仕方がないので、いつも最後のほうになっていた。
 修行の最中に何度も脱いだり、履いたりしないといけないので、もしこれが軍隊だったらめちゃくちゃ殴られているところである。これは冗談だが・・

 最後に、頭には宝冠(ほうかん)を巻く。宝冠とは、幅広のはちまきを、まず頭巾(ずきん)のようにかぶり、余った布でもって後頭部と前頭部のまわりを巻き、側頭部の両サイドにネコ耳のような形をたて、冠のようにするものである。

 このようにまず形から入ることが重要だ。
 白装束、すなわち死に装束に身を固めて、山伏修行を行うのである。



 では、次回の(4)から、山伏修行体験そのものについて見ていきたい。
 庄内平野と出羽三山への旅 (4) 「山伏修行体験塾」(二泊三日) 初日の苦行は深夜まで続く・・・




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「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に (総目次)

書評 『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』(岡田芳郎、講談社文庫、2010 単行本 2008)

「山伏修行体験塾 2011 東京勧進」 に参加-ヤマガタ・サンダンデロ(銀座)にて山形の食材をふんだんにつかった料理とお酒を存分に楽しんできた(2011年11月11日)

「お籠もり」は何か新しいことを始める前には絶対に必要なプロセスだ-寒い冬にはアタマと魂にチャージ! 竹のしたには龍がいる!

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日)体験記 (総目次)




(2012年7月3日発売の拙著です)









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