企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた。会場は、お台場の日本科学未来館。
入館するとまず目に入ってくるのが常設展示の GEO-COSMOS(ジオ・コスモス) だ。天井からつるされている地球には、時々刻々と変化する様子がうつしさされている。
「地球時代の知の巨人」という称号もある梅棹忠夫にとって、人類について考えるには地球で考えなくてはならないということは、きわめて重要なコンセプトだ。だから、地球は梅棹忠夫の学問のキーワードでもある。日本科学未来館は、梅棹忠夫にはじつにふさわしい会場というべきだろう。
昨年2011年、3月から6月まで大阪・千里の国立民族学博物館(通称みんぱく)で開催された 特別展「ウメサオタダオ展」 の巡回展である。
ほんとうは大阪会場に行きたかったのだが、そうもいかない事情があったので、展示を見るのはあきらめて特別展の図録である 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡』(千里文化財団、2011)を購入して我慢していたのだが、やはりじかに展示会場に足を運んでみるのにしくはない。これもまたフィールドワークである。
以下に、主催者の文章を引用しておこう。国立民族学博物館のい内容と同じなのか、若干は違うものがあるのか両者をみているわけではないのでわからないが、東京会場ではこういう展示内容であることを知ることができるだろう。
ウメサオタダオ展 -未来を探検する知の道具- 展示概要
梅棹忠夫氏は、理学博士でありながら、精力的なフィールドワークにより収集した膨大な資料を通して、また多様な分野の知識人との交流、対談を重ねて、独創的な視点から世界を読み解きました。情報整理法を解説しつつ、知的活動とは何かを論じた『知的生産の技術』はロングセラーとなっています。
本展では、『知的生産の技術』ができるまでのカードやメモのほか、国内外でのフィールドワークで用いたノート、スケッチ、日記などを展示。その膨大な知的生産の過程と成果を紹介します。また、東京会場では、梅棹氏の未完の書のタイトルでもあった『人類の未来』について、各界有識者のコメントを眺めながら、来館者一人ひとりが人類の未来について考え、メッセージを書き込むデジタルコンテンツを追加します。
「知の巨人」が今を読み解き、未来を探検した知の道具やその方法が、混迷の時代を生き抜く私たちの羅針盤になることを願っています。
本展では、梅棹氏の知的生産の過程と成果を紹介するほか、『人類の未来』について、各界有識者のコメントを眺めながら、来館者が人類の未来を考え、メッセージを書き込む展示物を体験できます。
職員の方にたずねたら、写真は撮影してかまわないということだったので、たくさん撮らせてもらった。
展示内容については「図録」をみればいいのだが、デジカメで撮影して、自分のパソコンで好きなときに好きなように展示物を見たいという欲求があるからだ。
「図録」ではなぜか取り上げられていなかった「カナモジ」やローマ字にかんする展示もあったのはうれしい(・・写真は京大の学生時代のもの)。この隣に「カナタイプライター」の本物も展示されている。
主催者からはまた、こんなメッセージもあるので紹介しておきたい。
【小中学生の保護者の皆様へ】
梅棹氏が実践された、対象物について調査する方法や自然を観察・記録する方法などは、小中学校の理科の学習でも応用できるものです。また、同氏が文章を書く際に用いた手法(トピックスをカードに書き出し、並べ、組み立てる)は、お子様の文章記述や思考力アップにも役立ちます。
まさにその通りだと思う。まずは理科から。そして社会へと進んでいくのが、子どもの知性の正しいのばし方だ。男の子だけでなく、女の子もそれがのぞましい。
本日(2012年1月7日)は三連休の初日だったが、お昼の時間帯にはあまり来客は多くなかった。
平日に社会科見学(?)の一環で小中学生が多く来場しているのだろうか、感想やコメントを「京大式カード」に記して掲示されているコーナーがあって、子どもたちの素直な感想を読むとなるほど(!)と思わされるものがあった。
そのなかにあったのが、「ウメサオ先せいは かいぞくだ」という感想文(写真参照)。
うーむ、これはすごい! まさに直観的な本質把握。
「かいぞく」とは海賊のことだろうが、「知の海賊」と考えれば、多くの分野で知的貢献を残した梅棹忠夫には、じつにふさわしいのではないだろうか。展示会場にあるのはお宝ばかりだし(笑)。
小難しい漢字なしの平明な文章。この文章じたいが、たいへんウメサオタダオ的でいい。
なんにもしらないのは、よいことだ。
あるきながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながらあるく。
「発見」というものは、たいていまったく突然にやってくるのである。
小学生でもよめばすぐにわかる文章。これらのフレーズは梅棹忠夫の実践型知性による思想と方法のエッセンスである。
企画展「ウメサオタダオ展 - 未来を探検する知の道具」は、2012年2月20日まで、日本科学未来館にて開催中。ぜひ一度は足を運んでみてほしい。
小難しい話はべつにして、自分自身が小中学生にもどって、「知を遊ぶ」体験をしてみてはいかがだろうか?
(「京大式カード」に入場スタンプを押してお土産にするのもよい)
<関連サイト>
企画展 ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-(日本科学未来館)
ウメサオタダオ展 -未来を探検する知の道具- 展示概要(日本科学未来館)
シンボル展示 GEO-COSMOS(ジオ・コスモス)(日本科学未来館)
日本科学未来館のアクセス
■ 新交通ゆりかもめ(新橋駅~豊洲駅)
「船の科学館駅」下車、徒歩約5分
「テレコムセンター駅」下車、徒歩約4分
■ 東京臨海高速鉄道りんかい線(新木場駅~大崎駅)
「東京テレポート駅」下車、徒歩約15分
<ブログ内関連記事>
書評 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)
書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)
書評 『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)
書評 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)
梅棹忠夫の幻の名著 『世界の歴史 25 人類の未来』 (河出書房、未刊) の目次をみながら考える
書評 『まだ夜は明けぬか』(梅棹忠夫、講談社文庫、1994)-「困難は克服するためにある」と説いた科学者の体験と観察の記録
『東南アジア紀行 上下』(梅棹忠夫、中公文庫、1979 単行本初版 1964) は、"移動図書館" 実行の成果!-梅棹式 "アタマの引き出し" の作り方の実践でもある
書評 『回想のモンゴル』(梅棹忠夫、中公文庫、2011 初版 1991)-ウメサオタダオの原点はモンゴルにあった!
梅棹忠夫の「日本語論」をよむ (1) -くもん選書からでた「日本語論三部作」(1987~88)は、『知的生産の技術』(1969)で黙殺されている第7章とあわせ読むべきだ
梅棹忠夫の「日本語論」をよむ (2) - 『日本語の将来-ローマ字表記で国際化を-』(NHKブックス、2004)
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