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2014年1月4日土曜日

書評『馬の世界史』(本村凌二、中公文庫、2013、講談社現代新書 2001)ー ユーラシア大陸を馬で東西に駆け巡る壮大な人類史



西洋古代史を専門とする馬好きの日本人歴史学者が書いた「馬の世界史」。

ユーラシア大陸を西に東に縦横に馬をテーマに駆け巡ったこの「世界史」は、まさに「世界史」の名にふさわしい。欧米中心史観でもなく中華思想でもない、日本人歴史家ならではの視点が十二分に生かされた作品である。

より正確にいえば「馬と人間の関係」を軸に描いたユーラシア史である。キモとなるのは馬のスピードと機動力。この2つが人間にもたらしたものは計り知れない! 著者がいみじくも指摘するように、「もし馬がいなかったら、21世紀はまだ古代だった」であろうことは誇張でもなんでもない。

なぜなら、20世紀以降の機械文明も、馬がもたらした文明の延長線上にあるからだ。自動車も馬車の延長線にあるものだ。馬力(horse power)という概念もまた生まなくしては生まれなかったものである。「スピード」は資本主義社会である21世紀においてもきわめて重要なテーマである。

「歴史をふりかえるとき、人間と馬の出会いはたんなるエピソードですむことではない。それどころか、最大級の衝撃であった」、のだという著者の発言は読み終えたとき十分に納得することだろう。

読んでいて思うのは、この人はほんとうに馬好きなのだなあということ。毎週末に競馬場に通うのだそうだが、そうでなければ専門外の領域にも大胆に踏み込んだ、こんな壮大な歴史を書くことはできなかったであろう。そして馬を主人公にしたからこそ、広大なユーラシア大陸を西に東に縦横に駆け巡ることができたのだろうと。


「人間」は「馬」を家畜化して交通手段と軍事に使用した

「世界史」において、なによりも馬は軍事において抜群のパワーを発揮した。

馬に引かれた「戦車」の登場は、歴史を変革する大事件であったのだ。「戦車は、世界史の舞台に登場した最初の複雑な武器であった。車両の管理や馬の制御を専業とする戦士の養成には・・(中略)・・・武人というエートスを身につけた人間類型が誕生」した、と著者はいう。

世界帝国は、騎馬遊牧民の衝撃に強力な軍事力をもって対抗するために形成されたものであった。騎馬遊牧民の国家形成は、ユーラシア大陸の東では中国、西では中近東からヨーロッパに大きな影響を与える。騎馬遊牧民の脅威に対して世界帝国が形成され、後者が弱体化すればふたたび前者が優勢になるという歴史のダイナミズム

古代ギリシアの「海の神」ポセイドンは、もともと「馬の神」であったらしい。「馬」(うま)から「海」(うみ)へというと日本語ではなんだかダジャレみたいだが、陸上交通の主役としての「馬」が海上交通においては「船」となったことを考えれば納得のいく話だ。



そして、「戦車」に代わって「騎兵」が戦場の主役に登場する。この段階において人と馬のかかわりはより密着したものとなる。いわゆる「人馬一体」という形である。これによって機動力はさらに高まり、馬のもつ軍事的な意味は計り知れないものとなる。

中央ユーラシアを疾駆する騎馬遊牧民は、離合集散しながら勢力を拡大し、4世紀にはフン族の興隆がゲルマン民族の大移動をもたらし、古代ローマ帝国の安寧を脅かすにいたる。


ユーラシア東西が13世紀に連結し「世界史」が成立した

「世界史」は、13世紀初頭の騎馬遊牧民のモンゴル人を中心にしたモンゴル帝国の成立によるとしたのは、岡田英弘氏をはじめとする日本の東洋史家たちだが、欧米中心史観でもなく中華思想でもない、日本人ならではの視点が十二分に生かされた見解である。著者もまたその見解に賛成しているが、きわめて公平なもの見方というべきだろう。

ユーラシア大陸の西で始まったルネサンス期のイタリアでは、それまでのアリストテレス学説にかわって実地観察にもとづく馬術書があらわれたこと。ビジネスマンであるわたしにとって意外な事実だったのは、英国ではイタリアの馬術書の影響が深まるにつれて management(マネジメント)というコトバが生まれたという事実だ。

英語の management はイタリア語の maneggiare から派生したそうだが、もともとはラテン語の manus(手)に由来するという。management とは馬を手で扱うことを意味したのだそうだ。経営は馬の世話から始まったのだ!

このようにユーラシア大陸を西に東に移動しながらエピソードをふんだんに散りばめながらつづられた「馬の世界史」は、著者自身が楽しみながら書いているだけでなく、読者もそれぞれの関心にしたがって楽しみながら読める好読み物である。

個々の固有名詞は読みながら忘れていったもまったく構わない。馬がいかに人類史において大きな意味をもっていたか、それを感じ取れればこの本を読む意味があるというものだろう。

2014年の午年(うまどし)を迎える前に12年のときをへて文庫化された本書は、ぜひ気軽に読める「世界史」として推奨したい。





目 次

プロローグ-もし馬がいなかったら、二一世紀はまだ古代だった
人類の友
馬と文明世界-戦車の誕生
ユーラシアの騎馬遊牧民と世界帝国
1 西方ユーラシア
2 東方ユーラシア
 ポセイドンの変身-古代地中海世界の近代性
 馬駆ける中央ユーラシア
 アラブ馬とイスラム世界
 ヨーロッパ中世世界と馬
 モンゴル帝国とユーラシアの動揺
 火砲と海の時代-近代世界における馬
 馬とスポーツ
エピローグ-われわれは歴史の負債を返済しただろうか
あとがき


著者プロフィール

本村凌二(もとむら・りょうじ)
1947年、熊本県生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。博士(文学)。専攻は古代ローマ史。主な著書に『薄闇のローマ世界』(サントリー学芸賞)など。『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



PS 2016年8月に著者の趣味である競馬について、『競馬の世界史-サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで-』(中公新書)という本が出版された。(2016年8月30日 記す)





<ブログ内関連記事>

ユーラシア大陸国家の興亡

書評 『モンゴル帝国と長いその後(興亡の世界史09)』(杉山正明、講談社、2008)
・・ユーラシア大陸の東西を連結し「世界史」を誕生させたモンゴル帝国

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である! 
・・ユーラシア全体を視野に収める壮大な文明論

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ

書評 『帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」-機密公電が明かす、戦前日本のユーラシア戦略-』(関岡英之、祥伝社、2010)

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む

書評 『ノモンハン戦争-モンゴルと満洲国-』(田中克彦、岩波新書、2009)


ユーラシア民族学

『新版 河童駒引考-比較民族学的研究-』(石田英一郎、岩波文庫、1994)は、日本人がユーラシア視点でものを見るための視野を提供してくれる本
・・「(『馬の世界史』には)ポセイドンが「馬神」であったことまでしか書いていない。どうやら歴史学者は『河童駒引考』を参照していなかったようだ。「歴史学」と「歴史民族学」の違いといってしまえばそのとおりだが、『河童駒引考』というあまりにも地味なタイトルが災いして「馬」関連の参考書籍から漏れてしまったのかもしれない」

書評 『回想のモンゴル』(梅棹忠夫、中公文庫、2011 初版 1991)-ウメサオタダオの原点はモンゴルにあった!
・・戦前の内蒙古におけるフィールドワークの記録。馬についての生物学、生態学、人類学的な記述がある


「馬」関連

「下野牧」の跡をたずねて(東葉健康ウォーク)に参加-習志野大地はかつて野馬の放牧地であった
・・日本における「馬の文化」について、千葉県の習志野を中心にややくわしく書いておいた

陸上自衛隊「習志野駐屯地夏祭り」2009に足を運んでみた・・千葉県の陸上自衛隊習志野駐屯地に配属されている戦略部隊の「第一空挺団」の前身は「騎兵隊」。基地内には「日本騎兵之碑」がある

書評 『秋より高き 晩年の秋山好古と周辺のひとびと』(片上雅仁、アトラス出版、2008)--「坂の上の雲」についての所感 (5)
・・日本騎兵隊の父・秋山好古!

冬の日の氷雨のなか、東京のど真ん中を走る馬車を見た
・・外国大使の信任状奉呈式には皇居までの移動に馬車がつかわれる

ハンガリーの大平原プスタに「人馬一体」の馬術ショーを見にいこう!

書評 『ポロ-その歴史と精神-』(森 美香、朝日新聞社、1997)-エピソード満載で、埋もれさせてしまうには惜しい本
・・『馬の世界史』では競馬には触れられているが、「人馬一体」のスポーツであるポロには少ししか言及がないのが残念

ミャンマーではいまだに「馬車」が現役だ!-ミャンマーは農村部が面白い


自動車は「馬のない車」

書評 『自動車と私-カール・ベンツ自伝-』(カール ベンツ、藤川芳朗訳、草思社文庫、2013 単行本初版 2005)-人類史に根本的な変革を引き起こしたイノベーターの自伝

(2016年4月3日 情報追加)


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