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2015年10月31日土曜日

「パンプキン詐欺」にご用心!-平成のいまハロウィーンは完全に日本に定着した(2015年10月31日)


ことしもハロウィーンがやってきた。というよりも、ことしのハロウィーンの勢いはすごい。もはや押しとどめることができない流れのようだ。

ハロウィーンはもともと欧州の先住民族であるケルト人の農耕儀礼として始まったものが新天地のアメリカで発展し、それがさらに欧州に逆輸入されて世界的な大発展の過程にあるわけだが、日本におけるハロウィーンは、そもそもアメリカからの輸入文化である。

日本のハロウィーンも、すでに日本の年中行事の一つとして急速に定着しつつあるといってもいいかもしれない。

「なぜ1000億円市場になれた?独自の進化を遂げた日本式ハロウィンの実態|データで読み解くニッポン|ダイヤモンド・オンライン(2015年10月31日)という記事にこういうくだりがある。「日本記念日協会はハロウィンの市場規模は1220億円に上ると推計を発表した。同協会は、2011年の推計市場規模を560億円と発表しており、これをなぞるならわずか4年で市場は2倍以上に拡大したことになる」。

4年間で2倍である!この勢いがどこまで続くかわからないが、右肩上がりで増大していくことは間違いないだろう。クリスマスとバレンタイン、そしてハロウィーン。クリスマスが戦前の日本で導入され戦後に定着したものであれば、バレンタインは戦後日本のものであり、ハロウィーンは戦後というよりも平成になってからのものだ、といえる。


平成という時代のパラレルな現象である詐欺事件とハロウィーン

平成という時代は、オレオレ詐欺をはじめとする、さまざまな詐欺事件が横行するようになった時代でもある。とくに平成20年代になってからのここ数年は、その勢いにさらに拍車がかかっている。

そういった詐欺のなかに「還付金詐欺」というものがある。還付金(かんぷきん)の支払いにかこつけて詐欺行為が行われるわけだが、テレビでの注意喚起を画面を見ないで音声だけ聞いていると、どうしても「パンプキン詐欺」と聞こえてしまう(笑)

そう思う人は必ずしも少なくないようで、「パンプキン詐欺」でネット検索したら、いくらでもでてくるので安心(?)したりもするのだが・・・。

ハロウィーンといえば、オレンジ色のかぼちゃ(=パンプキン)のお化けが主役といってもいい。この時期は、日本全体がパンプキンだらけといっていいような状態だ。ハロウィーンで地域を盛り上げようという商店街もある。いわゆる町おこしの重要なアイテムになっているのだ。

アメリカでは子どもたちが「トリック・オア・トリート」(Trick or treat)といって家々を訪問してはお菓子をねだるのが習慣だ。「お菓子をくれなきゃ、イタズラしちゃうぞ!」という意味だ。

そう、ハロウィンにはそもそもトリック(=詐欺)が含まれている。だから「パンプキン詐欺」というのは、けっしておかしな話ではない。まあ、牽強付会(けんきょうふかい)というか、こじつけに近い話ではあるが(笑)

だが、詐欺事件の横行とハロウィーンの定着はパラレルな関係にある。因果関係はまったくないとしても、ビッグデータ的にみれば相関関係はあるのではないか? ともに時代を代表する現象であることは否定できまい。


なぜ日本人はハロウィーンを受け入れるようなったのだろうか?

では、なぜ日本人はハロウィーンを受け入れるようなったのだろうか?

そのひとつには「仮装」があると思われる。ハロウィーンの仮装は、日本がその震源地であるコスプレ文化とシンクロしあっているというべきだろう。

年間をつうじて楽しめるコスプレと期間限定のハロウィーンの仮装との違いは存在するが、コスプレ愛好家とハロウィーンで仮装する人たちは精神構造的には似たものが共有しているというべきかもしれない。仮装というコスチューム・プレイによって、ほんとうの自分という個性を消しつつ、じつは間接的に個性を主張するという素直ならざる方法論である。

この意味においては、日本では一部を除いては定着していないヴェネツィア型のカーニバル(=謝肉祭)の仮面による仮装があげられる。これは秘密クラブなどでは年間をつうじて行われているものだが、わたし自身は参加したことはないので、その実態については知らない。映画『アイズ・ワイド・シャット』に描かれている世界がそれである。セレブ感が強いだけに、一般的な普及は考えにくいかもしれない。

ハロウィーンはキリスト教色がほとんどないという点も大きいのではないか? 

クリスマスもまた、もともとはキリスト教とは関係のない農事暦にもっとづいた年中行事であったが、キリスト生誕日としての色彩が強いことは否定できない。だから、クリスマスは嫌いだというに発言にはいまでも日本人おあいだで一定の支持がある。

その点、ケルト人の民俗に由来するハロウィーンには、キリスト教の影響はない。農事暦のなかでもっとも重要な秋祭りである。日本の秋祭りとおなじ意味合いをもつ。

いまからちょうど4年前の2011年10月31日のことだが、このブログに ケルト起源のハロウィーン-いずれはクリスマスのように完全に 「日本化」 していくのだろうか? という記事を書いた。

その記事のなかの末尾でこんなことを書いているので、ちょっと長いが再録しておこう。

日本でもお盆やお正月は、最近でこそ形骸化しつつあるとはいえ、まだまだ伝統行事としての性格が強く保たれています。伝統行事と時期が重なる祭については、外国から伝来した新たな祭も、旧来のものにとって変わるのは簡単ではないようです。 この時期の祭礼であるお神楽などとは、完全に棲み分けがされていますが、もしかすると、もともと農耕儀礼であったハロウィーンが神社の祭礼と融合していくなんてことになるかもしれません。 貪欲に外来文化を取り入れてきた日本人が将来どのような取捨選択をするのか、たいへん興味深いものがあります。

この文章を書いてから4年たつが、状況は急速に進展した。というよりも急速に変化する途上にあるというべきだろうか。

そのうち神社の秋祭りにハロウィーンのお化けかぼちゃが登場することだろう。いや、わたしが知らないだけで、すでに登場している神社もあるかもしれない。日本でも巨大なオレンジ色のパンプキンの栽培は普及しつつあるのだから。というより、かぼちゃ自体がカンボジア経由で日本に渡来した作物ではないか!

伝統なんて、じつは創られたものであり、それは言い換えれば誰かが発端になって作り変えてしまうものだ。とくに無意識レベルで融通無碍(ゆづうむげ)な日本人にとっては、抵抗感はそれほど大きくないだろうだろう。あとは「あらたな伝統」の拡散プロセスが、どうスピードアップするだけの問題だ。

この4年間で市場規模が2倍に拡大した日本のハロウィーン。4年後の2019年(=平成31年)のハロウィーンはどうなっているか、おおいに楽しみである。





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平成時代と詐欺の高度化

「振り込め詐欺」はなぜなくならないのか?-ルポライター鈴木大介氏の『老人喰い』(ちくま新書、2015)と『奪取-「振り込め詐欺」10年史-』(宝島SUGOI文庫、2015)




(2017年5月18日発売の新著です)




(2012年7月3日発売の拙著です)









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