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2018年8月27日月曜日

「ブルーシール・キャンディ」がうまい ― 内地で沖縄気分に浸る



ポーク・ランチョンミートを一括して大量購入した。ネット検索で価格を調べてみたら、楽天に出店しているオキコ沖縄土産店が一番安かったので。

TULIP ブランドはデンマーク産のランチョンミート豚肉消費量が多い沖縄では定番で、デンマーク本国よりも消費量が多いという。ランチョンミートは、チャンプルーつくるには必須アイテムですからね。

「内地」ではアメリカ産の SPAM ばかりで、TULIP はあまりみかけない。在庫を切らさないようにしておかないとね!

(デンマーク産のランチョンミート缶詰 筆者撮影)

今回の注文に「おまけ」として無料で同梱されていた「ブルーシール・キャンディ」アメリカ生まれで沖縄育ちのアイスクリーム BLUE SEAL をキャンディーにしたもの。アイスクリームのキャンディ化。そしてアメリカ製品の沖縄ローカリゼーション


はじめて食べてみたが、このキャンディー、けっこう旨いね。バニラ味とシーカーサー味とマンゴー味の3種類。とくに酸味と甘みが絶妙のバランスなシークヮーサー味がいかにも沖縄オリジナルらしくていい

(ブルーシール・アイスクリームのキャンディ化 筆者撮影)

内地にいながら、しばし沖縄気分にひたる(^^) 沖縄には、ひさしくいってないからね。でも、本当はたまには沖縄に行きたいものだなあ。




<ブログ内関連記事>

■沖縄関連

書評 『沖縄本礼賛』(平山鉄太郎、ボーダーインク、2010)-本を買うのが好きな人、コレクター魂をもつすべての人に

熟れつつあるゴーヤは三色に変化-外皮が緑から黄色に変化するだけでなく中身のタネが深紅な物体に!

書評 『沖縄戦いまだ終わらず』(佐野眞一、集英社文庫、2015)-「沖縄戦終結」から70年。だが、沖縄にとって「戦後70年」といえるのか?

「沖縄復帰」から40年-『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(佐野眞一、集英社、2008)を読むべし!


■製品ローカリゼーション

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?

書評 『缶詰に愛をこめて』(小泉武夫、朝日新書、2013)-缶詰いっぱいに詰まった缶詰愛


■米国による占領以後の日本

「日米親善ベース歴史ツアー」に参加して米海軍横須賀基地内を見学してきた(2014年6月21日)-旧帝国海軍の「近代化遺産」と「日本におけるアメリカ」をさぐる

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加(2013年7月18日)-軍港クルーズと徒歩でアメリカを感じる横須賀をプチ旅行

書評 『ワシントン・ハイツ-GHQが東京に刻んだ戦後-』(秋尾沙戸子、新潮文庫、2011 単行本初版 2009)-「占領下日本」(=オキュパイド・ジャパン)の東京に「戦後日本」の原点をさぐる


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2014年4月6日日曜日

「ふなばしアンデルセン公園」にはじめて行ってみた(2014年4月6日)― デンマーク王国オーデンセ市と千葉県船橋市が姉妹都市となって25年



千葉県船橋市とデンマークのオーデンセ市が姉妹都市になって今年(2014年)で25年なのだそうだ。

ふなばしアンデルセン公園」で記念式典があるということだが、船橋市に住んでいながら姉妹都市のことも知らず、アンデルセン公園にも一度もいったことがなかったので、どんなものかだけでも見ておこうと思って足を運んでみた。

「ふなばしアンデルセン公園」は wikipeda日本語版にはこう説明されている。船橋市は東京湾岸のベイエリアに立地しているが、「ふなばしアンデルセン公園」は内陸部にある。

ふなばしアンデルセン公園は、千葉県船橋市にある総合公園。船橋市はデンマークのオーデンセ市と姉妹都市であるが、童話作家アンデルセンがオーデンセ市の出身であることにちなみ公園名称にアンデルセンを使用する。なお、開業当初の名称は「ワンパク王国」であった。


(ふなばしアンデルセン公園にて)

デンマークがらみの公園といえば、岡山県倉敷市に「倉敷チボリ公園」がかつて存在したが、いまはすでに廃園となっている。1997年から2008年までのわずか11年という短い期間であった。チボリ公園はクラボウ工場の跡地だが、チボリ公園跡地には「三井アウトレットパーク倉敷」ができているということだ。モール型の商業施設のほうが集客力は高いだろう。

じつは1990年代前半のことだが、チボリ公園開演前のマーケティング調査と大企業へのプロジェクト参加要請にかかわったことがある。正直いって、そのときもなぜ倉敷にチボリ公園なのかがよくわからなかった。そもそもデンマークのチボリ公園の視察すらしないで調査の一端にかかわっていたのである。

結局、わたしは倉敷チボリ公園はいちども訪れることなく終わってしまったが、倉敷チボリ公園の開園後の1999年にデンマークの本家本元のチボリ公園を訪れた。感想としては、日本人にとってはあまり面白いものではないというのが正直なところだった。

(本家本元のチボリ公園のアンデルセン城  wikipediaデンマーク語版より)

冬の寒いデンマークの、イタリアへのあこがれがチボリ(Tivoli)というネーミングに表現されているわけであり、えらくシンプルな公園である。

1843年開園のこの公園は、コペンハーゲン地元では人気が高いようだが、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオをもつ日本人にはぜんぜん物足りない。現地で人気があっても、異国の日本では受けいられないにはある意味では当然なのだ。

ちなみに本家本元のチボリ公園には Det japanske Taarn(=The Japanese Tower:日本タワー)という日本風の五重塔(?)がある。日本人には中国風にしか見えないのだが・・・

(Det japanske Taarn=日本タワー wikipediaデンマーク語版より)

デンマーク人にとってのイタリアは、森鴎外の名訳で有名な『即興詩人』なのだろう。アンデルセンの作品である。

だが、現在の日本では、『即興詩人』よりも、童話作家アンデルセンのほうが根強い人気を保ち続けている。そういう意味では、アンデルセン公園が生きのびている理由も理解できるというものだ



オーデンセ(Odense)という町については、その存在も場所も、しかもアンデルセンの生誕地であることも、これまでまったく知らなかった。Googleマップで調べてみると、ユトランド半島と首都コペンハーゲンのあるシェラン島のあいだに位置するフュン島にある。

デンマークはコペンハーゲン(・・現地語ではコペンハーヴン。Haven は港の意味)しかいったことがないが、デンマークはコペンヘーゲンという首都だけでないことは言うまでもない。地方都市の生活は、映画『偽りなき者』(2012、デンマーク)で知ることができる。

東京湾岸に位置する千葉県船橋市には、スウェーデンのIKEA や デンマークのソストレーネ・グレーネ や フライイング・タイガー・コペンハーゲン などの北欧の低価格ショップが集積しつつある。意外と気質的に近いのかも(?)しれない。北欧のライフスタイルは、日本とアメリカの中間的な位置づけであろうか。

「ふなばしアンデルセン公園」では、姉妹都市締結25年を記念して「花と緑のフェア」を開催中である。






PS 「ふなばしアンデルセン公園」初の公式ガイドブックが2016年10月25日発売!

開園20周年、総入園者数1000万人を突破! 「ふなばしアンデルセン公園」初の公式ガイドブックが学研から発売される。監修は、公益財団法人船橋市公園協会。(2016年10月19日 記す)




<関連サイト>

「都市の友情 未来永劫」 姉妹提携25周年で式典 船橋・オーデンセ (ちばとぴ 2014年4月7日)
・・「日本デンマーク協会名誉総裁の常陸宮さまが出席されたほか、駐日デンマーク大使、オ市副市長らも参列」

上橋菜穂子さん、国際アンデルセン賞を受賞 児童文学のノーベル賞 (ハフィントンポスト 朝日新聞デジタル 2014年3月25日付記事より転載)
・・「「獣の奏者」などのファンタジーで知られる作家で、文化人類学者の上橋菜穂子(うえはしなほこ)さん(51)が24日、国際アンデルセン賞の作家賞に選ばれた。日本国際児童図書評議会(JBBY)に同日、連絡が入った。「児童文学のノーベル賞」と言われるアンデルセン賞。その作家賞を日本人が受けたのは、1994年のまど・みちおさん以来、2人目となる」

1962年生まれの同世代になる。「大学は史学科だったが、山口昌男『アフリカの神話的世界』でアフリカ神話に衝撃を受け、文化人類学を学び、大学院に進む」(wikipedia日本語版)

 「Søstrene Grene」(ソストレーネ・グレーネ)ですが、FBページもあります
・・日本初出店についても記事が投稿されてます。  Today we had the Grand Opening of the first Søstrene Grene shop in Japan. It was...

千葉県船橋市に北欧雑貨「フライング タイガー コペンハーゲン」がオープン
・・イオンモールの競合先である三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAYに、デンマークの低価格雑貨店 Flying Tiger Copenhagen ららぽーとTOKYO-BAYストア が2014年3月14日にオープン。ますます北欧化が進行中

世界一の幸福大国で暮らすデンマーク人の、幸せな人生を送るための秘密 (大本 綾、ダイヤモンドオンライン、2014年2月28日)  「幸福大国デンマークのデザイン思考」 目次


えっ!全国3位 船橋・アンデルセン公園 人気遊園地ランク USJ超え(東京新聞、2015年8月1日)
・・「千葉県船橋市の「ふなばしアンデルセン公園」が、世界最大級の旅行口コミサイトが発表した今年の日本の人気遊園地部門で大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を上回り、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーに次ぐ3位に選ばれた。大掛かりなアトラクションはなく、知名度や予算も劣る公園の「快挙」に、地元では喜びと驚きが交錯している。・・(中略)・・アンデルセン公園の口コミ評価は「一日中遊べる」「花が多く大人も楽しめる」「お金を使わなくて済む」-などから「とても良い」「良い」に集中。」

ふなばしアンデルセン公園が「日本3位」の理由 年々少なくなる子供の遊び場 (日経ビジネスオンライン、2015年10月13日)


アンデルセンの故郷、ロボット産業の中心地に デンマーク小都市の成功物語(MIT Technology Review 日本語版 2025年3月11日)


(2015年8月2日、10月15日、2025年3月11日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

「イオンモール幕張新都心」(2013年12月20日オープン)をフィールドワークしてきた
・・「グランドホール内の「Søstrene Grene」(ソストレーネ・グレーネ)。北欧デンマーク発の低価格雑貨店 ・・(中略)・・ 低成長時代には、「北欧」スタイルが日本にもフィットしてきたのかな、という印象をもちます。もちろん「デザイン重視」の姿勢が根本にありますが、それに加えて「低価格」を支える「合理主義」があるのが「北欧」の特長でしょう。低成長時代の日本も、そういう志向性があるのでしょう」

映画 『偽りなき者』(2012、デンマーク)を 渋谷の Bunkamura ル・シネマ)で見てきた-映画にみるデンマークの「空気」と「世間」

新装刊の月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年7月号を読む-今月号の特集は「アップルが、世界を変える」 
・・「■北欧-その光と影 世界が羨む「理想社会」■ 内村鑑三の『デンマルク国の話』以来、日本でも理想社会として讃えられてきたデンマーク。フランス人ジャーナリストが描いた幸福度ランキングNo.1のデンマークのレポートを実に興味深く読むことができました。 デンマークの現状は、記事を読む限り、かつての日本のようでもありますが、現在の日本とはほど遠い、なんだかユートピアの話を聞いているような錯覚にも陥ります・・」。

IKEA (イケア) で北欧ライフスタイル気分を楽しむ-デフレ時代の日本に定着したビジネスモデルか?

書評 『クオリティ国家という戦略-これが日本の生きる道-』(大前研一、小学館、2013)-スイスやシンガポール、北欧諸国といった「質の高い小国」に次の国家モデルを設定せよ!

アッシジのフランチェスコ (5) フランチェスコとミラレパ
・・デンマークの詩人ヨルゲンセンが書いたフランチェスコ伝を紹介。デンマーク人にとってのイタリア

語源を活用してボキャブラリーを増やせ!-『ヰタ・セクスアリス』 (Vita Sexualis)に学ぶ医学博士・森林太郎の外国語学習法
・・アンデルセンの『即興詩人』をドイツ語訳から日本語に翻訳した「外国文学紹介者」としての鴎外


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2013年5月1日水曜日

映画『ロイヤル・アフェア ー 愛と欲望の王宮』(2012、デンマーク他)を 渋谷の Bunkamura ル・シネマ)で視聴 ー 啓蒙の世紀」を小国デンマークから見る


オランダ王国では昨日(2013年4月30日)ベアトリクス女王の退位によってウィレム=アレクサンダー皇太子が新国王が即位、123年ぶりに男性国王となったことが報道されている。日本ではもっぱら雅子皇太子妃殿下が11年ぶりの公務としての公式訪問ということで話題になった。

フランス革命からはじまった共和制の流れのなか、第一次大戦と第二次大戦という二つの世界戦争をへて君主制がつぎからつぎへと消えていった欧州であるが、英国とオランダ、北欧のデンマーク、スウェーデン、ノルウェーは断絶することなく現在まで王室がつづいてきた(・・スペインは復活)。欧州の君主制は現在はみな立憲君主制である。日本もまたそうである。

映画 『ロイヤル・アフェア』は、18世紀後半の北欧の絶対王制のデンマーク王国を舞台にしたドラマである。

基本的に日本では女性をターゲットにプロモーションを行っているが、映画だからもちろんいろんな見方があるだろう。ちょっと違った観点からこの映画を見ると、なぜデンマーク王室が生き延びたのか、その理由の一端を知ることができるかもしれない。以下、わたしなりの見方である。



王室は国民と乖離していた

映画の宣伝文句としては、「デンマーク王室最大のスキャンダル」ということになっているが、この手のスキャンダルはじつは王室にはつきものだ。そもそも愛情をベースに婚姻関係が結ばれるのではなく、ヨーロッパをまたいだ王家どうしのつながりの強化が目的であった。

18世紀後半のデンマークが舞台の、この映画の主人公の王妃カロリーネ・マティルは英国出身であるが、けっして例外ではない。同時代のフランス王室に嫁いだマリー・アントワネットもウィーンのハプスブルク家出身であったことを思い出しておこう。そもそも当時の英国王室じたいがドイツ北部のハノーファー出身であった。

フランス革命により「国民国家」が成立する以前は、王室と国民が異なる民族であってもなんら問題にもされなかったのである。


王を演じるということ

映画 『アマデウス』におけるモーツァルトのようなけたたましい哄笑をするこの若いデンマーク国王は狂気であったのか、それとも狂気を装わざるを得なかったのか?

デンマークといえば、デンマークの王子ハムレットである。つまりシェイクスピアの『ハムレット』である。外国人医師ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセが、はじめて国王に謁見したときのシーンに注目しておこう。シェイクスピアからの引用のラリーがつづき、それによって国王は外国人医師にココロを許すことになる。

キーフレーズは、「この世は舞台、男も女もみな役者」(All the World's a Stage. All the Men and Women merely Players.)という『お気に召すまま』のセリフである。そう、男も女もみな役者、国王だって役を演じる役者なのだ。このセリフとシーンはじつに意味深長である。映画を見る際は、アタマのなかにいれておくといい。



啓蒙主義という自由思想が流行した18世紀

映画がはじまるのは1769年、「啓蒙の世紀」といわれた18世紀ヨーロッパは、ルソーやヴォルテールに代表される啓蒙主義が、時代の新思想として流行していた時代である。

自由思想(freethought)にもとづく啓蒙主義(Enlightenment)とは、知性を重視しキリスト教の権威に対抗し、一般民衆にチカラを与えるべきと主張した思想である。文字通りの意味は、「もっと光を!」という意味である。


この映画のほんとうの主人公は啓蒙主義という思想そのものであるという見方も可能だろう。啓蒙主義という当時の新思想が、ビーイクル(乗り物)としての主人公たちに感染し歴史を動かしたのであると。

啓蒙主義思想の著書を匿名で出版したドイツ人医師、その医師を侍医としてかかえココロを許したデンマーク国王、そしてアタマからココロ、最後はカラダまで虜にされた英国人王妃は、ある意味では啓蒙主義が演じさせた役者に過ぎないといえるかもしれない。映画のタイトルの「アフェア」とは事件や情事を意味するコトバである。

検閲制度によって啓蒙主義思想が浸透することを水際で防いでいたはずの北欧の小国デンマーク王室には、じつは国王と王妃というまさに頂点から啓蒙主義が浸透していったのだ。

映画のなかにドイツのプロイセン王国がでてくるが、これはおなじく映画に名前がでてくるフランスの啓蒙思想家ヴォルテールを招いたフリードリヒ2世のプロイセンのことである。

この時代には、プロイセンのフリードリヒ2世、ハプスブルク帝国のマリア=テレジア、ロシアのエカチェリーナ2世のように「啓蒙専制君主」とよばれた、上からの改革をすすめた君主たちがいた。

この映画は、小国デンマークからみた「啓蒙の世紀」である。


結果として政治改革の予行演習が行われたデンマーク

「啓蒙主義」の時代にそれを推進するチャンスを得た外国人医師ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセは、王の侍医として、王妃カロリーネと関係(アフェア=情事)をつうじて、啓蒙主義思想にもとづく政治改革を実行する権限を手に入れる。国王を操り人形とすることに成功する。

しかし、急進的な政治改革、それによって利益を失うことになる貴族層の反発を招き、強力な敵としてしまうことになる。この侍医の野望はいったい何であったのか、映画からはよくわからないが、企業経営でも顧問などの形で入った人間が、実質的に権力を奪い取って会社を乗っ取ることはしばしばみられることである。そういう観点から見るのも面白い。

この映画の時代設定の約20年後の 1789年にフランス革命が勃発したことを念頭におきながらこの映画を見ていただきたいと思う。フランスでは国王のルイ16世も王妃のマリー・アントワネットも断頭台の露と消えたのである。

そしてデンマークは・・・。

デンマークにおいては、フランスのように王室そのものが打倒されることなく生き延びることができたのは、すでに啓蒙主義の実践を経験していたからだろうか。政治改革は反動時代というインターバルをはさんで確実に実行されることになる。

美しい映像にバロック音楽の調べ。啓蒙の世紀はまた、宮廷においてはバロック後期でもあった。バッハの時代であり、モーツァルトの時代でもある。

宮廷と対比される都市の一般民衆の劣悪な生活。冒頭の王妃が宮殿入りするシーンでの、首都コペンハーゲンの公衆衛生の悪さに注目してほしい。ドブネズミが走り回る下水もない市街地。

これはけっして例外ではなくヨーロッパ都市はみなそうであった。これが伏線となるので目を凝らして見逃さずにいてほしい。だからこそ、啓蒙主義的な政治改革が求められる素地があったのだ。

そしてギロチンによる処刑シーン。目をそむけたくなる人もいるだろうが、処刑場に集まる民衆の群れにも注目していただきたい。『アンデルセン自伝』には、1805年生まれのデンマークの童話作家アンデルセンが子ども時代に処刑を目撃したことが記されている。娯楽の少なかった当時、処刑は見世物でもあったのだ。


デンマークでは7カ月のロングランとなったという歴史エンターテインメント作品である。小国デンマークの知られざる歴史を知るよい機会となるだけでなく、啓蒙の世紀であり革命の時代でもあった18世紀後半のヨーロッパを小国デンマークから見るという視点がまたじつに興味深い。



『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(2012年)
(En kongelig affære)
監督: ニコライ・アーセル
脚本: ニコライ・アーセル、ラスマス・ヘイスターバング
主演: マッツ・ミケルセン他
上映時間:  137分
製作: デンマーク、 スウェーデン、チェコ
言語: デンマーク語




<関連サイト>

映画 『ロイヤル・アフェア』 公式サイト

クリスチャン7世(デンマーク) (wikipedia)

侍医ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセ (wikipedia)


<ブログ内関連記事>

映画 『偽りなき者』(2012、デンマーク)を 渋谷の Bunkamura ル・シネマ)で見てきた-映画にみるデンマークの「空気」と「世間」

「マリーアントワネットと東洋の貴婦人-キリスト教文化をつうじた東西の出会い-」(東洋文庫ミュージアム)にいってきた-カトリック殉教劇における細川ガラシャ

「自分の庭を耕やせ」と 18世紀フランスの啓蒙思想家ヴォルテールは言った-『カンディード』 を読む

書評 『大英帝国の異端児たち(日経プレミアシリーズ)』(越智道雄、日本経済新聞出版社、2009)-文化多元主義の多民族国家・英国のダイナミズムのカギは何か?


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2013年3月20日水曜日

映画『偽りなき者』(2012、デンマーク)を 渋谷の Bunkamura ル・シネマ)で見てきた ー 映画にみるデンマークの「空気」と「世間」



伝統的な狭い共同体のなかで生きるとはどういうことか。

伝統的な狭い共同体とは、日本語でいえば「世間」そのものである。デンマークのような北欧世界でも「世間」は存在するということなのだろう。それに該当するコトバがあるのかどうかは知らないが。

この映画の舞台が具体的にデンマークのどこにあるのかはわからないが、自然豊かな土地にある小さな共同体である。時代背景はすでに21世紀であるようだ。この共同体のなかには大型スーパーマーケットもあるし、携帯電話で会話がなされる。

わかるのは、父祖以来の土地に住む者はたいがいが顔見知りで、男たちは集まってはバイキングのように酒盛りをして騒ぐ。そして、鹿を猟銃で仕留める狩猟こそが男の象徴とされつづけてきたようだ。正式にライフルを所持して射撃ができるようになることは、少年が正式に大人の男として認められること。前近代の日本でいえば元服のようなものだろう。

そんな古くて狭い共同体(コミュニティ)のなかで生きる主人公の42歳の男性は元高校教師である。離婚して職を失った結果、幼稚園の職員となった。元高校教師というインテリがつくのが適当な職なのだろうかという印象をもっているのは、主人公のまわりの人々もそうであるようだ。

そして離婚した妻は別の町に住んでおり、携帯電話の会話をとおしてのみその存在がわかる。つまり共同体外の存在なのである。



この主人公が親友の娘で幼稚園児がなにげなくついたウソによって幼児虐待、しかも性的虐待という濡れ衣をかぶせらることから人生が暗転する。思い込みは固定観念と化し、あたかも汚れたものを避けるかのように周囲の人たちからは避けられ、親友からも絶交され、共同体のなかで孤立していく姿は痛々しい。まさに日本の「村八分」そのものである。「空気」が出来上がり伝染していく。

地方においては共同体はキリスト教の教会を中心に形成されており、教会に参列する人はほとんどみなが顔見知りである。狭い共同体のなかでは、いやがおうでも顔を合わせざるを得ない。内村鑑三の名著『デンマルク国の話』というタイトルにもあるように、デンマークはプロテスタント国だ。

変態野郎とののしられ、さまざまないやがらせを陰に陽に受けながら孤立していく主人公は、まるでデンマークを代表する思想家キエルケゴールそのもののようだ。いまでこそ世界的な思想家の一人として認識されているキエルケゴールも、生前はデンマークでは徹底的に嫌われ孤立していたのであった。

人間の尊厳を最後まで失わずに頑張り続ける主人公。共同体から逃げずに踏みとどまる主人公。「世間」のなかで生きるということはどういうことか、まさに目の前につきつけられているような気にさせられる。はたして日本人ならその状況に耐えらるだろうか、と。

ハッピーエンドで終わるかに見えたが、それはラストシーンではなかった。このラストシーンは、見たあとも心のなかで何度も反芻(はんすう)している。人間の心の奥深くに存在し続ける闇について慄然とした思いを抱くことになる。

デンマーク映画といえば、『バベットの晩餐会』(1987年)という名作を思い出すが、興行的にはハリウッド映画には及ばない北欧映画にも、このようなクオリティの高いすぐれた作品があるのだ。





<関連サイト>

『偽りなき者』 公式サイト

Bunkamura ル・シネマ 『偽りなき者』


<映画の概要>

タイトル: 偽りなき者 Jagten
監督: トマス・ヴィンターベア
主演: マッツ・ミケルセン
上映時間 106分
製作:  デンマーク

即断即決!デンマークの超「結果主義」新人でもベテランでも、アウトプットがすべて!(東洋経済オンライン 2013年7月18日)

「幸福大国デンマークのデザイン思考」(ダイヤモンドオンライン連載中)
・・「世界で最も刺激的なビジネススクールとして注目されるデンマークの「The Kaospilots」に、初の日本人留学生として受け入れられた大本綾さん。彼女が世界のデザインスクール最前線での学びをリアルタイムで書き記す「留学ルポ」連載」



<ブログ内関連記事>


新装刊の月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年7月号を読む-今月号の特集は「アップルが、世界を変える」
・・「■北欧-その光と影 世界が羨む「理想社会」■  内村鑑三の『デンマルク国の話』以来、日本でも理想社会として讃えられてきたデンマーク。フランス人ジャーナリストが描いた幸福度ランキングNo.1のデンマークのレポートを実に興味深く読むことができました。 デンマークの現状は、記事を読む限り、かつての日本のようでもありますが、現在の日本とはほど遠い、なんだかユートピアの話を聞いているような錯覚にも陥ります・・」。

書評 『「空気」と「世間」』(鴻上尚史、講談社現代新書、2009)-日本人を無意識のうちに支配する「見えざる2つのチカラ」。日本人は 「空気」 と 「世間」 にどう対応して生きるべきか?
・・日本発の概念に「甘え」というものがあったが、「世間」もまた西欧語には該当するコトバがなくても現象そのものは存在するといっていいのではないかと思われる


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