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2017年8月11日金曜日

書評『ビジネスパーソンのための世界情勢を読み解く10の視点 ― ベルリンの壁からメキシコの壁へ』(森千春、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)-「冷戦後」の世界情勢を「現場」で読み抜いてきた国際報道記者の視点



『ビジネスパーソンのための世界情勢を読み解く10の視点-ベルリンの壁からメキシコの壁へ-』(森千春、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)は、 「冷戦崩壊後」の四半世紀を海外報道記者としてつぶさにみてきた著者による解説書。著者からいただいて一気読みしたが、それだけの面白さのある内容だ。

現在は読売新聞論説委員の著者は、海外報道30年で欧州総局長を歴任、ベルリン駐在中に1989年の「ベルリンの壁」崩壊を取材、その経験を踏まえたうえでソウル特派員として南北分断のつづく朝鮮半島を取材するなど、豊富な「現場」経験をもつ国際報道記者

「冷戦崩壊後」の四半世紀の世界情勢は、2016年の英米による「グローバル化への逆流」で大きな転換期を迎えたわけだが、面白いのは「冷戦後」の世界のなかで登場したメルケル首相と、「大転換」を引き起こした当の本人であるトランプ大統領との根本的な違い

著者は、そんな重要な指摘を何気ない一言で触れているが、見過ごすことのできない重要な気づきのひとつだ。このほかにも、本書のいたるところに、著者の30年に及ぶ経験からにじみ出た、重要な指摘が多くちりばめられている

さすがに「ベルリンの壁」の崩壊と朝鮮半島情勢の分析は詳しいが、特派員としてベルリンに駐在していた若き日の失敗体験は、若手ビジネスパーソンには他山の石として教訓になることだろう。

著者が強調しているのは、「先見性」の重要性、そして「理念」にこだわりすぎると足元をすくわれること。これは世界各国の政治リーダーを観察してきた著者ならではの教訓だ。これもまた、ビジネスパーソンにとっては教訓となることだろう。

ぜひ一読してほしい一冊である。





目 次  

はじめに
視点その1 グローバル化の時代だからこそ国家の役割は重みを増す-ネーションの復権が起こす世界各地の大変動
視点その2 政治指導者は先見性が問われる-「ベルリンの壁」崩壊とドイツ統一 「ベルリンの壁」ができた経緯
視点その3 激動期にこそ各国の性格が現れる-イギリスのEU離脱とトランプ当選
視点その4 理念へのこだわりはつまずきにつながる-実務家メルケル首相の難民政策での失敗
視点その5 民族の性格が危機を招く-韓国の苦悩 韓国の経済発展
視点その6 グローバル化した世界でも、核兵器は格別の強みとなる-北朝鮮の核開発
視点その7 宗教を知れば世界が見える-アラブの春から「イスラム国」へ
視点その8 民主主義は後退する局面にある-プーチン大統領のロシア
視点その9 帝国が復活している-南シナ海を巡る中国とアメリカの対立
視点その10 生き残りのためには強みを生かす必要がある-日本の厳しい安全保障環境
あとがき

著者プロフィール

森千春(もり・ちはる)
1958年、石川県金沢市生まれ。東京大学教養学部ドイツ学科卒。1982年、読売新聞社入社。1989~1993年、ベルリン特派員。「ベルリンの壁」崩壊と東西ドイツ統一を取材。1997~2001年、ソウウル特派員。2005~72009年、欧州総局長。現在、論説委員。著書に『「壁」が崩壊して-統一ドイツは何を裁いたか』(丸善ブックス)、『朝鮮半島は統一できるのか-韓国の試練』(中公新書ラクレ)がある。(本書奥付より)



PS あわせて読んで欲しい関連書籍

(『世界情勢を読み解く10の視点』に掲載の書籍案内)


ことし5月19日に出版した拙著 『ビジネスパーソンのための近現代史の読み方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017)は、「近現代史」の240年間を扱っているので、「冷戦後」の25年間の扱いはどうしても小さなものとなってしまった

その意味では、『世界情勢を読み解く10の視点』とあわせ読むことで、世界情勢を立体的に捉えることができるのではないかと思う。ディスカヴァー・トゥエンティワン者から出版された、『ビジネスパーソンのための・・・』というタイトルで始まる「姉妹本」と考えていただいてよいかな、と。

その際、ぜひ副読本として手元に置いて欲しいのが、『増補改訂版 最新世界情勢地図』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016)。フランス人研究者2人の共同執筆による、豊富な地図で図解した地政学の入門書だ。じつによくできたカラー図版満載のビジュアル本。複眼的な視点をもつにはもってこいの好著である。





<関連サイト>

『ビジネスパーソンのための世界情勢を読み解く10の視点』 出版社サイト



<ブログ内関連記事>

ベルリンの壁が崩壊した四半世紀前の1989年を振り返る-それは日本においては「昭和時代」から「平成時代」への転換点でもあった

ベルリンの壁崩壊から20年-ドイツにとってこの20年は何であったのか? (2009年ににアップ)

ドイツ再統一から20年 映画 『グッバイ、レーニン!』(2002) はノスタルジーについての映画?

書評 『なぜメルケルは「転向」したのか-ドイツ原子力40年戦争の真実-』(熊谷 徹、日経BP社、2012)-なぜドイツは「挙国一致」で「脱原発」になだれ込んだのか?

書評 『ドイツリスク-「夢見る政治」が引き起こす混乱-』(三好範英、光文社新書、2015)-ドイツの国民性であるロマン派的傾向がもたらす問題を日本人の視点で深堀りする

『ソビエト帝国の崩壊』の登場から30年、1991年のソ連崩壊から20年目の本日、この場を借りて今年逝去された小室直樹氏の死をあらためて悼む

書評 『ろくでなしのロシア-プーチンとロシア正教-』(中村逸郎、講談社、2013)-「聖なるロシア」と「ろくでなしのロシア」は表裏一体の存在である

書評 『朝鮮半島201Z年』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2010)-朝鮮半島問題とはつまるところ中国問題なのである!この近未来シミュレーション小説はファクトベースの「思考実験」

「現代史」を軽視してきた「歴史教育」のツケをどう克服するか?-歴史教育の現場で「逆回し」の実践を!


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2015年3月17日火曜日

書評『新 脱亜論』(渡辺利夫、文春新書、2008)― 福澤諭吉の「脱亜論」から130年、いま東アジア情勢は「先祖返り」している



福澤諭吉の『脱亜論』(1885年=明治18年3月16日)が発表されてから130年になる。東アジアの国際環境が厳しさを増すなか『脱亜論』が甦ってきたというべきだろう。
   
すでに7年前の出版であるが、『新 脱亜論』(渡辺利夫、文春新書、2008)という本が出版されているので、この機会にあらためて本書を紹介しておきたい。

著者の渡辺利夫氏は、韓国 ― ヴェンチャー・キャピタリズム』(講談社現代新書、1986)『社会主義市場経済の中国』(講談社現代新書、1994)などをつうじて、アジア経済にかかわるビジネスパーソンなら少なくとも名前くらいは知っているはずだし、開発経済学でこの人の名を知らなかったらモグリともいうべきパイオニア的存在の人だ。

厳しい言論統制を敷いていたシンガポールや、かつて戒厳令下にあった韓国や台湾などアジア諸国において、急速な経済発展をもたらした「開発独裁」というコンセプトを世に知らしめた功績は強調してもし過ぎることはない。

そんな渡辺利夫氏が拓殖大学学長に就任し、しかもこのような内容の本を書かれるとは思いもしなかったというのが、2008年に本書が出版されたときの感想である。

だがよくよく考えてみれば、拓殖大学は台湾統治を成功させた後藤新平以来の伝統をもつ大学だし、渡辺氏自身も福澤諭吉が設立した慶應義塾の出身であり、東南アジアも東アジアも経済を軸に熟知しているからこそ、『新 脱亜論』なるタイトルの本を発表するに至ったのだと深く納得した次第である。つよい危機感が背景にあるのだ。

たんに経済についてのみ語っていては済まない時代にわれわれは生きているのである。政治と経済は不可分の関係にある。「政治経済学」として捉えなくてはならないのだ。

内容は、福澤諭吉の時代からの日本近現代史を、著者なりに振り返って「再編集」したもの。書かれている歴史的事実そのものはべつに目新しいものではないが、『新 脱亜論』というタイトルによって「再編集」された、著者の一貫した史観にもとづく歴史叙述こそ読むべき内容となっているのである。

まずは目次をご覧になっていただきたい。日本は中国やロシアのような「大陸国家」ではなく、島国の「海洋国家」であるという地政学の認識が最重要であることが強調されている。そしてこれは、明治の先人たちのリアリズムに基づいた認識でもあったのだ。
      

第1章 先祖返りする極東アジア地政学
第2章 陸奥宗光の日清戦争-機略と豪気
第3章 朝鮮近代化最後の挑戦-金玉均と福澤諭吉
第4章 東アジア勢力確執の現実-果てしなきロシアの野望
第5章 日露戦争と日英同盟-海洋国家同盟成立の意味
第6章 韓国併合への道程-併合は避けられたか
第7章 台湾割譲と近代化-日本の統治がもたらしたもの
第8章 第一次世界大戦とワシントン体制-追い込まれる日本
第9章 中国とはいかなる存在であったか-分裂と挑発
第10章 海洋国家同盟か大陸国家提携か-日本の選択
第11章 「東アジア共同体」という錯誤-中国の地域覇権主義を見据えよ
第12章 日米海洋国家同盟を守る-自衛権とは何か
おわりに 


著者の思いは以下の一文に集約されている。

    
近代日本の先人たちは極東アジアの国際環境をいかに観察して行動して、日本の独立自尊を守ったのか。このことを日本の若者にどうしても伝えておきたい。


日本の地政学上のポジションは「海洋国家」。中国のような「大陸国家」でも韓国・朝鮮のような「半島国家」でもない。「海洋国家」としていかに厳しい国際環境のなかを生き抜いていくか。そのために学ぶべき先人たちのリアリズムに立脚した認識と意志決定を若者向けに描き下ろした内容である。
    
なぜ、福澤諭吉は『脱亜論』を書かなければならなかったのかについては、この本のとくに「第3章 朝鮮近代化最後の挑戦-金玉均と福澤諭吉」を読むと手に取るように理解できると思う。韓国併合による韓国近代化についての著者の筆致は、開発経済学者らしく冷静である。

厳しい国際情勢のなかでの「近代日本」の成功と手痛い失敗について本当のことを知りたい若者だけでなく、若者ではなくてもぜひ一読して、若者たちに薦めていただきたい本である。  


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目 次 (詳細)

第1章 先祖返りする極東アジア地政学 
ポストモダニズムの落とし穴
 「先祖返り」する極東地政学
 生存リアリズムの欠如-北朝鮮
 反米、反日、親北の制度化-韓国
 「侮日政策」の在処(ありか)-中国
 「ペトロステート」-ロシア
第2章 陸奥宗光の日清戦争-機略と豪気
 激怒する福澤諭吉
 華夷秩序への挑戦、日本の自衛
 尊皇攘夷と衛正斥邪
 清韓宗属関係の破壊を狙う陸奥
 天津条約-「李鴻章対日政策の一大錯誤」
 陸奥、開戦への決意
 帝国主義にめざめた清国の「東征論」
第3章 朝鮮近代化最後の挑戦-金玉均と福澤諭吉 
 「独立自尊」
 外国人からみた李氏朝鮮
 清韓宗属関係とは何か
 金玉均の登場
 朝鮮の独立自尊、福澤の政治的課題
 金玉均、福澤との邂逅
 壬午事変
 借款交渉進展せず
 国王高宗と金玉均
 甲申事変
 李朝近代化のラストチャンス
 日本滞在十年
 金玉均暗殺
 高まる反清感情
第4章 東アジア勢力確執の現実-果てしなきロシアの野望 
 ロシアに傾斜する朝鮮
 東学党の乱
 機先を制する日本
 日清戦争勝利
 三国干渉
 「他策なかりしを信ぜんと欲す」
 内閣弾劾上奏案
 閔妃暗殺
 ウィッテと李鴻章
 露清密約
第5章 日露戦争と日英同盟-海洋国家同盟成立の意味 
 ロシアの対清圧力
 小村、露清協約の廃棄への努力
 義和団事変と日本
 在清公使館付武官 柴五郎
 第一次小村意見書
 日英同盟成立
 ロシア、満洲から撤兵せず
 第二次小村意見書
 小村の開戦外交
 開戦へ
 戦費調達
 ポーツマスへの道
第6章 韓国併合への道程-併合は避けられたか 
 ポーツマス条約と韓国「自由処分」
 韓国の「保護国化」
 ハーグ密使事件
 韓国併合へ
 反日義兵闘争
 併合に対する韓国内の支持
 韓国併合と発展基盤の形成
第7章 台湾割譲と近代化-日本の統治がもたらしたもの 
 化外の地、化外の民
 牡丹社事件と台湾出兵
 洋務派官僚による台湾開発
 日清戦争と台湾割譲
 後藤新平
 米糖経済
 教育制度の拡充
 日本統治の終焉
第8章 第一次世界大戦とワシントン体制-追い込まれる日本 
 交流から凋落へ
 「黄禍」日本
 日本人移民排斥運動、ハリマンの満鉄買収計画
 ノックス満鉄中立化提議
 第一次世界大戦根の参戦
 対支二十一ヵ条は愚策だったか
 五・四運動と対中国世論強化
 ワシントン体制と日本の孤立化
第9章 中国とはいかなる存在であったか-分裂と挑発  
 四分五裂
 シベリア出兵に意義はなかったか
 なおつづく四分五裂
 「対支政策綱領」
 済南事件
 満洲事変へ
 満洲国建国から国際連盟脱退へ
 通州事件
 南京事件
 暴支膺懲
第10章 海洋国家同盟か大陸国家提携か-日本の選択 
 中国茫々
 佐藤鉄太郎の海洋国家思想
 日英同盟廃棄の慚愧
 「文明の生態史観」とアジア経済学
 文明の生態史観と現代
第11章 「東アジア共同体」という錯誤-中国の地域覇権主義を見据えよ 
 東アジア経済統合の時代
 共同体とは何か
 東アジア共同体は可能か
 中国の地域覇権主義をどうみるか
第12章 日米海洋国家同盟を守る-自衛権とは何か 
 集団自衛権-保有するが行使できない?
 個別的自衛権-これこそが問題である
 触らぬ神に祟りなし-非核三原則
おわりに 


著者プロフィール
渡辺利夫(わたなべ・としお)

拓殖大学学長。1939年山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。同大学院博士課程修了。経済学博士。筑波大学教授、東京工業大学教授を経て現職。おもな著書に『成長のアジア 停滞のアジア』(吉野作造賞)『西太平洋の時代』(アジア・太平洋賞大賞)『開発経済学の時代』(大平正芳記念賞)『神経症の時代』(開高健賞・正賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




 <関連サイト>

中国、外国教材の実態調査に着手-「西洋的価値観」排除へ(ウォールストリートジャーナル日本版、2015年3月17日)
・・おろかな対応をとる中国共産党

新・脱亜論 「内なる中国」と闘え(平野聡・東京大学大学院教授、文藝春秋 SPECIAL 2015秋、2015年09月09)
・・「日本が近代国家として台頭したこと自体が、国際社会における権力と知識の偏在に風穴を開け、非西洋世界にも多種多様な言論を巻き起こし、独立と自由を鼓舞したことも事実である・・(中略)・・戦前の日本は、外交秩序と文明観の両面において、中国的な「神政府」の発想=価値の独占を否定しようとして、その実いつの間にか、自らの成功物語に基づく新たな「天下」志向、明治体制に組み込まれた価値の独占志向=日本国体論にとらわれ、かつての中国文明と全く同じ陥穽に陥ったものと考える。戦後の日本の平和で自由な国家としての歩みが、そのような「内なる中国」を自省して距離を置くものであったと信じたい。」(平野聡) 

(2015年9月9日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

「脱亜論」(福澤諭吉)が発表から130年(2015年3月16日)-東アジアの国際環境の厳しさが「脱亜論」を甦らせた

「海洋国家・日本」は大陸国家でも半島国家でもない

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!
・・『新 脱亜論』(渡辺利夫、文春新書、2008)には以下の記述がある。
「アジア太平洋問題に関する首相の私的懇談会が設置され、私も委員の一人に指名された。第一回の懇談会のゲストスピーカーとして梅棹忠夫氏が出席した。「日本が大陸アジアと付き合ってろくなことはない、というのが私の今日の話の結論です」と話を切り出して、委員全員が呆気に取られるというシチュエーションを私は鮮明に記憶している」(P.272)
「ユーラシア問題に深入りするな!」というのは、海洋国家日本にとって国是とすべきなのである。これが、日本近代史から引き出すべき最大の教訓の一つである。

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ


書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?
・・社会科学の分野では小室直樹と双璧をなすと、わたしが勝手に考えている湯浅赳男氏。この本は日本人必読書であると考えているが、文庫化されることがないのはじつに残念なことだ

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である

書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!
・・ライプツィヒ大学では歴史学者ランプレヒトの弟子であったウィットフォーゲル。上原専禄の師匠であった三浦新七はランプレヒトの高弟で助手をつとめていた。いろんなことが見えないところでつながっている


戦後日本を支配してきた悪しき思想風潮

書評 『革新幻想の戦後史』(竹内洋、中央公論新社、2011)-教育社会学者が「自分史」として語る「革新幻想」時代の「戦後日本」論
・・戦後日本を支配した「空気」がいかなるものであったか


東アジアの国際情勢

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態
・・「国家資本主義」の中国。資本主義と民主主義がイコールだという「近代」の常識を裏切るのが中国という「東洋的専制国家」

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論 

書評 『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2013)-「離米従中」する韓国という認識を日本国民は一日も早くもたねばならない

書評 『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(古田博司、WAC、2014)-フツーの日本人が感じている「実感」を韓国研究40年の著者が明快に裏付ける


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2015年3月16日月曜日

「脱亜論」(福澤諭吉)が発表から130年(2015年3月16日)-東アジアの国際環境の厳しさが「脱亜論」を甦らせた



明治時代初期の大ベストセラーでロングセラーであった『学問のすゝめ』の著者であり、慶應義塾の創設者である福澤諭吉は、戦後日本では基本的に「啓蒙思想家」として高く評価されてきた存在だが、一点だけ評価が真っ二つにわかれている論がある。それが「脱亜論」だ。
  
130年前の本日(=明治18年3月16日)、みずからが創設し主宰していた新聞の『時事新報』で発表された社説だ。内容は読んで字のごとく「脱亜」を説いたものである。脱亜とはアジアを脱するということ。より正確にいえば、「日本よ、東アジアの悪友とは縁を切れ!」という内容だ。
   
原文はカタカナまじりの漢文体でとっつきにくいが、内容はきわめてロジカルだ。以下に一部を抜粋しておこう。
   
    
「我日本ノ國土ハ亞細亞ノ東邊ニ在リト雖ドモ
其國民ノ精神ハ既ニ亞細亞ノ固陋ヲ脫シテ西洋ノ文明ニ移リタリ
然ルニ爰ニ不幸ナルハ近隣ニ國アリ
一ヲ支那ト云ヒ一ヲ朝鮮ト云フ」

(現代語私訳)
わが日本は、アジアの極東にあるといえども、その国民の精神はすでにアジアの古くて頑迷なものを脱して西洋文明に移っている。しかし不幸なのは近隣の二国である。そのひとつを支那(=中国)といい、もうひとつを朝鮮という)。
・・(中略)・・
惡友ヲ親シム者ハ共ニ惡名ヲ免カル可ラズ 我レハ心ニ於テ
亞細亞東方ノ惡友ヲ謝絶スルモノナリ
(現代語私訳)
わたしは心のなかで、東アジアの悪友を謝絶するのである)

「脱亜論」発表からすでに130年、日本は1970年前後には「西欧近代化」を完了、「先進国」のひとつとして長く国際社会に貢献してきた。しかし、隣国の二ヶ国は「近代化」には中途で失敗、中国など西欧の価値観の流入を拒否せよなどという始末である。中国も韓国(北朝鮮を含む)も、ともに「価値観を共有する」関係とは言い難い

もちろんわたしは、「脱亜論」に全面的に賛成である。なぜなら、日本は地理的にはアジアに位置しているが、本質的にアジアではないからだ。梅棹忠夫の『文明の生態史観』しかし、ドイツのウィットフォーゲルの『東洋的専制論』しかり、「大陸国家」の中国と島国の「海洋国家」の日本は異なるカテゴリーの文明だとしている。
      
実利にもとづく商売の点はさておき、国家間の関係については、まさに130年前に福澤諭吉が主張したことがそのままそくりあてはまるのではないかと、尖閣問題や慰安婦問題をはじめとする、中国と韓国の反日姿勢を考えれば、ここ数年の流れのなかでつよく思わざるをえないのである。 

ただし、重要なことは東アジアの範囲についてだ。地理的概念の東アジアの範囲に入るのは大陸国家の中国と半島国家の韓国・北朝鮮、そして日本である。それ以外の東南アジア諸国は、狭い意味の東アジアには含まれないことを強調しておく。
   
「脱亜論」発表から130年、あらためて福澤諭吉の先見の明に感心するばかりではないか。あるいは、東アジアの国際環境の厳しさが「脱亜論」を甦らせたというべきか。

厳しい国際環境のなか、日本も日本人も「独立自尊」の精神で生き抜いていかねばならない。


************

参考 『脱亜論』原文の一部

・・(前略)・・

我日本ノ國土ハ
亞細亞ノ東邊ニ在リト雖ドモ
其國民ノ精神ハ
既ニ亞細亞ノ固陋ヲ脫シテ
西洋ノ文明ニ移リタリ

然ルニ爰ニ不幸ナルハ
近隣ニ國アリ
一ヲ支那ト云ヒ
一ヲ朝鮮ト云フ

此二國ノ人民モ古來亞細亞流ノ政敎風俗ニ養ハルヽヿ(=こと)
我日本國ニ異ナラズト雖ドモ
其人種ノ由來ヲ殊ニスルカ
但シハ同樣ノ政敎風俗中ニ居ナガラモ
遺傳教育ノ旨ニ同シカラザル所ノモノアル歟、
日支韓三國相對シ
支ト韓ト相似ルノ狀ハ
支韓ノ日ニ於ケルヨリモ近クシテ
此二國ノ者共ハ
一身ニ就キ
又一國ニ關シテ
改進ノ道ヲ知ラズ

・・(中略)・・

我日本國ノ一大不幸ト云フ可シ
左レバ今日ノ謀ヲ爲スニ
我國ハ隣國ノ開明ヲ待テ共ニ亞細亞ヲ興スノ猶豫アル可ラズ
寧ロ其伍ヲ脫シテ
西洋ノ文明國ト進退ヲ共ニシ
其支那朝鮮ニ接スルノ法モ隣國ナルガ故ニトテ特別ノ會釋ニ及バズ
正ニ西洋人ガ之ニ接スルノ風ニ從テ
處分ス可キノミ
惡友ヲ親シム者ハ共ニ惡名ヲ免カル可ラズ
我レハ心ニ於テ
亞細亞東方ノ惡友ヲ
謝絶スルモノナリ

明治18年(1885年)3月16日


初出:『時事新報』明治18年(1885年)3月16日
底本:『時事新報』明治18年(1885年)3月16日
所蔵:国立国会図書館新聞資料室

原文の全体は、http://ja.wikisource.org/wiki/%E8%84%B1%E4%BA%9C%E8%AB%96 で閲覧可能。



<関連サイト>

新・脱亜論 「内なる中国」と闘え(平野聡・東京大学大学院教授、文藝春秋 SPECIAL 2015秋、2015年09月09)
・・「日本が近代国家として台頭したこと自体が、国際社会における権力と知識の偏在に風穴を開け、非西洋世界にも多種多様な言論を巻き起こし、独立と自由を鼓舞したことも事実である・・(中略)・・戦前の日本は、外交秩序と文明観の両面において、中国的な「神政府」の発想=価値の独占を否定しようとして、その実いつの間にか、自らの成功物語に基づく新たな「天下」志向、明治体制に組み込まれた価値の独占志向=日本国体論にとらわれ、かつての中国文明と全く同じ陥穽に陥ったものと考える。戦後の日本の平和で自由な国家としての歩みが、そのような「内なる中国」を自省して距離を置くものであったと信じたい。」(平野聡)

(2015年9月9日 項目新設)


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書評 『新 脱亜論』(渡辺利夫、文春新書、2008)-福澤諭吉の「脱亜論」から130年、いま東アジア情勢は「先祖返り」している


福澤諭吉の『学問のすゝめ』は、いまから140年前に出版された「自己啓発書」の大ベストセラーだ!

福澤諭吉の『文明論之概略』は、現代語訳でもいいから読むべき日本初の「文明論」だ


日清戦争が勃発してから120年(2014年7月25日)-「忘れられた戦争」についてはファクトベースの「情報武装」を!
・・『脱亜論』は日清戦争勃発の9年前に発表されている

梅棹忠夫の『文明の生態史観』は日本人必読の現代の古典である!

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?
・・社会科学の分野では小室直樹と双璧をなすと、わたしが勝手に考えている湯浅赳男氏。この本は日本人必読書であると考えているが、文庫化されることがないのはじつに残念なことだ

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である

(2018年2月2日 情報追加)


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