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2023年1月17日火曜日

「稽古・修養・養生」― 教育人間学を専門にしている西平直氏の三部作で江戸時代までの日本人が生み出した豊かな思想について考える

 

 教育人間学を専門にしている西平直氏の三部作を読了。出版順に『稽古の思想』(2019年)、『修養の思想』(2020年)、『養生の思想』(2021年)となる。いずれも出版社は春秋社。 

最初に読んだのは『修養の思想』で、つづけて『養生の思想』を読んだ。昨年末のことだ。


「修養」という古めかしい響きのことばだが、明治時代以降に主流となった「修養」とは違う。江戸時代のさまざまな思想家や実践家が、「修行」や「養生」など、さまざまな形で表現しうようとした思想を、ひとつひとつ読みほどいていく。  




「養生」もまた、「修養」と同様に、江戸時代が生み出した豊かな思想の産物である。江戸時代前期の思想家・貝原益軒の『養生訓』は、現代でも読まれている名著である。

明治時代以降の近代医学の導入でことばも概念も消滅したかに見えた「養生」だが、ホリスティック医学や自然治癒力との関連で現代によみがえりつつある。  



最後に『稽古の思想』(2019年)。「修養」と「養生」が「養う」という概念を共有しているのに対し、「稽古」には直接的な共通点はないように見える。だから、後回しにしていた。

この本は、先日読んだが、基本的に世阿弥の演技理論を中心に解読を行っている。  

芸道や武道ではおなじみのことばであり概念であるが、分析的なアプローチで迫ってみるのも面白い。

「稽古」は、近代の教育制度からは抜け落ちているが、きわめて重要なものである。 だが、「学校外」の世界では現在なお生きている。



この三部作に一貫しているのは、「心身相関」よりも深い「心身一如」の考えである。「こころ」と「からだ」を不可分で一体のものとしてとらえる思考と実践。デカルトのような心身二元論の伝統をもたない日本人には、意識しなくても身についている(はずの)思考方法である。 

とはいっても、現代日本人の多くの人にとっては、もはやなじみのあるものではないかもしれない。だが、かつて日本人が実践してきたことであり、意識はしていなくても日常生活のすみずみに浸透していることも、また確かなことだ。 

「稽古」も「修養」も「養生」は、江戸時代までに日本人が考え実践してきた、豊かな蓄積である。これらについて考えることは、日本と日本人の再生について考えるためのヒントをくみ取ることができるかもしれない。 

さまざまな「補助線」を引いて、ことばと概念をひとつひとつ解きほぐして近似値を求めていくような、著者のアプローチはまどろっこしく見えるが、記述そのものは平易であり、読んでいてなかなか面白いものがある。今後も折に触れ、読み返してみたい。 

明治時代より江戸時代のほうが重要だ。 すでに「近代」が終わっている現在、つくづくそう思う。

 



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・・白隠といえば、座禅につきまとう「禅病」、すなわち強度のノイローゼ対策としてのイメージ療法である「内観法」で有名


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2019年3月23日土曜日

イチロー選手の引退に思う-「重心」の作り方に注目せよ!世界で成功するための秘訣がそこにある

(第1次マリナーズ時代のイチロー選手 Wikipediaより)

45歳のイチロー選手が現役生活28年を終えた(2019年3月21日)。このニュースが何度も何度も取り上げられている。 TVでインタビューを見ていたが、イチロー選手のコトバの選び方のセンスには、あらためて感嘆する。


たしかにイチロー選手の活躍は「平成時代」にそっくりそのまま重なるし、
大リーグで記録を塗り替え続けた偉業には素直に感服する。その点にかんしては、私も皆さんとおなじだ。 


ただ、私がイチロー選手に関心があったのは、その身体能力についてだ。「重心」の作り方が、アメリカ人を含めた白人や黒人とはまったく違うという点。 


ウォーミングアップ時の「腰割り」(下の写真)に、その秘密があったことに注目していた人は、どれだけいるのだろうか。 相撲取りにとって必須の基礎である腰割り。これをストレッチとして行っている野球選手は、見たことがない。「重心」をつくるために必須のスキルである。



(腰割りのストレッチングを行うイチロー選手 pinterestより)

そう、「重心」とは言い換えれば「臍下丹田」(せいかたんでん)、すなわち「臍下三寸」のことだ。この「中心」ができあがってこそ、「回転運動」がスムーズにいくのである。スポーツは、すべて「軸を中心にした回転運動」であるといって過言ではない。 


この「重心」が明確に意識されているからこそ、イチロー選手はベースボール以外の局面においても「ブレ」がなく、首尾一貫した(野球)人生を送ることができるのだ。 


個人的な体験だが、その昔、在米中にアメリカ人に合気道(AIKIDO)を指導していたことがある。そのときにこのことに気がついた。白人や黒人は、たとえ身体能力が高い人であっても、「重心」の作り方が、あまりうまくないように思われた。端的にいえば、脚が長いために「重心」が高すぎるのだ。 


日本人であるからこそ、日本人としての優位性を徹底的に極め尽くすこと。これが世界で活躍し、成功するための秘訣となる。ただ、この点に気がついている人は、あまりいないような気がするのが残念だ。


日本人であることに甘えることなく、強みを認識して鍛え抜いて欲しいものである。そのためのヒントがイチロー選手にあるのだが、ただ単に偉業に感動するだけでなく、身体そのものに着目してほしい。


自信はいうものは、軸となる中心がしっかりしていれば、おのずから生まれてくるものなのだ。それが「心身一如」というものだ。「心身二元論」ではない。形から、カラダからココロをつくるのである。メンタルの強さは、カラダを鍛えることによって作られる。








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カラダで覚えるということ-「型」の習得は創造プロセスの第一フェーズである




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2011年11月23日水曜日

『図説 中村天風』(中村天風財団=編、海鳥社、2005)― 天風もまた頭山満の人脈に連なる一人であった


 中村天風(なかむら・てんぷう:1876~1968)は、日本版のポジティブシンキング(=積極精神)の元祖のような人と言ってよいだろう。一般人もさることながら、現在でも政財界に根強い人気を保っている。

 その前半生は波瀾万丈そのものである。どこまで本当なのかはわからないが。

 若い頃は手の着けられない暴れん坊で、日露戦争にはみずから志願して軍事探偵(・・つまるところスパイ)として大陸に渡り、生きて帰ってきたものの健康も精神も疲弊し、しかも当時は不治の病であった結核にかかって、出口のない煩悶に陥る。

 手当たり次第に本を読み、人に会い意見を求めるが安心立命の境地にはいっこうにたどりつかない。ついに密航に近いかたちで米国に渡り、その後は欧州にわたって、思想家やセレブなどと交遊することになる。

 フランスからの帰国船で、たまたま寄港先のエジプトのカイロで知り合ったインド人から誘われてインドの山奥にいった中村天風は、自然のなかのヨーガ修行によって、ついに開眼することになる。このインド人は、カリアッパ師というヨーガ行者であったのだ。

 「私は力だ」という詩に、そのときの覚醒が記録されている。

私は力だ 力の結晶だ
何ものにも打ち克つ力の結晶だ
だから何ものにも負けないのだ
病にも運命にも・・・・
否あらゆるすべてのものに打ち克つ力だ
そうだ、強い強い力の結晶だ


 日本に帰国後は実業家として縦横に活動していたが、ある日このままでいいのかと思い来たって、スッパリとビジネス界から足を洗い、辻説法を始めたという。

 その後は「心身統一法」を実践する人生の教師として、多くの人たちに指導を行った。現在でも、熱烈なファンが多いのは冒頭に書いたとおりだ。

 中村天風が説いた、まずは「心から」というのは、日本ではほとんどすべての行(ぎょう)では実践してきたことである。山岳宗教である修験道でも、座禅でも、古神道の行法のいずれも同じである。

 中村天風の特色は、この東洋ではあたりまえの「心身一如」の教えを、みずからのヨーガ体験をベースに、誰にでも実践しやすいものにしたことにあるといったらいいだろう。

 中村天風の名前を知ったのはずいぶん昔のことだが、人生前半のエピソードがあまりにも波瀾万丈なので、長いあいだ眉唾ものではないかと疑っていた。

 たまたま文庫化されていた女流作家・宇野千代の『天風先生座談』(広済堂文庫、1987)を本屋の店頭で見かけて購入して読んだのは 1995年のことだが、それ以来、中村天風を素直に受け取れるようになった。

 なんせ、宇野千代と言えば、これまた日本を代表するポジティブシンカーの一人、『生きてゆくわたし』という著書もあり、晩年には「わたしは死なないような気がする」とか言っていたくらいだ。

 日本経営合理化協会からでている一万円もするような本はさすがに手は出さないが、同じ日本経営合理化協会から出ている『君に成功を贈る』(中村天風、2001)は、1,890円(税込み)と比較的廉価なので、購入して読んでみた。なるほど天風の言うとおりだと思ったものである。誰だって失敗者よりも成功者になりたいものだ。成功の定義は人によってまちまちだろうが。

 波瀾万丈の前半生だが、本書に豊富に収録された写真を見ると、さらに具体的なイメージをもつことができるようになる。なんといってもビジュアル資料は、文字資料とは比較にならない情報量とイメージ喚起力をもっているからだ。

 本書は、福岡の地方出版社から出版されたものだが、中村天風はじつは福岡出身のみならず、玄洋社の頭山満とも密接な関係をもっていた人なのだった。前半生の軍事探偵としてのキャリアや、アメリカ渡航には頭山満のチカラが働いていたことを知ると、中村天風という人物をさらに大きなパースペクティブでとらえることができるようになる。

 天風ファンはもちろん、天風についてよく知らない人には「天風入門書」にもなる一冊である。


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<ブログ内関連記事>

『大アジア燃ゆるまなざし 頭山満と玄洋社』 (読売新聞西部本社編、海鳥社、2001) で、オルタナティブな日本近現代史を知るべし!
・・玄洋社につらなる人たちの肖像写真は、この写真集でとくとご覧いただきたい

書評 『霊園から見た近代日本』(浦辺登、弦書房、2011)-「近代日本」の裏面史がそこにある
・・玄洋社につらなる人たちを東京の墓地にさぐる旅

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋・・紀州出身の植芝盛平は南方熊楠や、大本教の出口王仁三郎の人脈に連なる人。また海軍や満洲にも大きなかかわりをもった

『鉄人を創る肥田式強健術 (ムー・スーパー・ミステリー・ブックス)』(高木一行、学研、1986)-カラダを鍛えればココロもアタマも強くなる!
・・山梨出身の肥田春充(ひだ・はるみち)は日本型キリスト教の人脈に連なる人

「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に (総目次)
・・山伏は修験道


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