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2014年12月14日日曜日

書評『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』(島田昌和、岩波新書、2011)― 事業創出のメカニズムとサステイナブルな社会事業への取り組みから "日本資本主義の父"・渋沢栄一の全体像を描く



『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』(島田昌和、岩波新書、2011)は、「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一を「社会企業家の先駆者」として描いた、一般向けだが中身の濃い一冊である。これ一冊で渋沢栄一の全体像を掴める、無駄のないコンパクトな構成である。

よりよい社会を構築するために、民間ビジネス分野の事業プロデューサー的役割を果たした渋沢栄一。日本社会を近代化し高度化するための基盤構築のために組んだ膨大な営利企業の事業創造、そして資本主義の矛盾を解消するための社会事業創出の取り組み。この両者があってこそ、「日本資本主義の父」という呼称がふさわしいことが実感される。

本書には、渋沢栄一が「官尊民卑」打破というスローガンと、「民」主導の社会理想実現にあたっての困難を乗り越えるうえでのブレない理念、そしてその限界と挫折を乗り越えての現実的な対応の92歳の生涯が描かれている。

古いしきたりと序列を打破してきた新興豪農の家に生まれた若き日の原点から説き起こしているだけでなく、ビジネス界に入ってからの渋沢栄一を詳細に跡づけたことが本書の最大の特徴となっている。この点を押さえておかないと、社会企業家の意味が正確に把握できないからだ。

渋沢栄一にはもちろん限界もあった。理想が完全に実現できたわけではない。現代からみた評価も大事だが、時代のコンテクストのなかで捉えることが重要だ。そのときどきの状況で、いかなる現実的な問題解決を行ってきたか。それが現実主義に立脚した実務家のスタイルであり、その実践に渋沢栄一の思想を見ることも可能なのである。

実践家の思想は、渋沢栄一の場合でいえば、『論語と算盤』などの言行録だけで判断するのは不十分なのである。事にあたっていかなる判断をし、問題解決の意志決定を行ったか。そこに思想がおのずから表現されているのである。、


渋沢栄一の事業創造とマネジメント・スタイル

本書によれば、渋沢栄一が取り組んだ営利事業は以下の二つがもっとも多い。後者のインフラ関係の事業は、民間企業によるものだが公益性が高い。

1. それまでの日本には存在しなかったまったく新しい西欧の知識や技術を導入した事業
2. 近代ビジネスに不可欠な社会基盤構築にかかわる事業

また、営利事業に取り組む際の原則は以下のようなものであった。

1. 基本的に一業種一社
2. 同一業種でも複数の役職につく場合は地域的に重複しないことを基本原則

「一業種一社」の原則は、大手広告代理店や大手コンサルティング会社のクライアント契約方針を想起させるものがある。あるいは、ロサンゼルス・オリンピックを商業的に成功させたピーター・ユベロスのスポンサー設定手法もそうだ。さすが近代ビジネスのプロデューサー渋沢栄一が敷いたレールが、いかに時代に先んじていたかがわかる。

渋沢栄一は第一国立銀行を司令塔にして事業創造を行ったわけだが、基本的にみずからが発起人となって株主を募集して会社を設立し、みずからも出資したうえで事業が軌道に乗れば株式の一部を売却し、そのキャピタルゲインをつぎの事業に投入するという形で、連続的に事業創造を行っていたようだ。現在風にいえばシリアル・アントレプナーのようなものか。

株主として経営参加がその基本形態であった。株式をつうじて小口の資金を集めて大規模な資本金とするモデルがいわゆる「合本主義」であったが、この理想を貫くためには、株主間の複雑な利害対立を調整し、合意形成を図る必要がある。

現在とは異なり、株主資本主義の原則が貫かれていた明治時代においては株主総会がそのメインイベントであったわけだが、それ以外のさまざまな機会をつうじて、渋沢栄一は調停役演じていた。直接人と会って話をするというスタイルでそれを行っていたようだ。

数字をみるだけでなく、直接人にあって報告を受け、相談に応じて指示を出すというスタイルで複数の上場企業を同時並行に経営するためには、分刻みのスケジュールが必要となる。このため第一国立銀行と事務所があった兜町を中心に動ける範囲に事業を集中させていただけでなく、最新の交通手段を駆使し、最新の情報通信手段をフルに活用していたようだ。現代のエクゼクティブ以上の激務を効率的にこなし、かつ社会全体のこともつねに考えていたのである。

渋沢栄一のマネジメント・スタイルとして人の面についてみると、非財閥系の会社モデルを志向していたため、いわゆる腹心の部下(=ナンバー2)をつくらずに、出資パートナーや事業パートナーと組む形でトップマネジメントは押さえ、ミドルマネジメント層は、みずからも設立に関与していた商業学校を人材供給源にし、専門能力をもった人材を適材適所に配置するというスタイルをとっていた。

詳しい内容はぜひ直接本文を読んで確認していただきたい。複数の事業経営を効率的に遂行するための渋沢栄一メソッドが読み取れるはずだ。


■社会事業への取り組み

渋沢栄一は、上記のようなスタイルで膨大なビジネスを生み出していったわけだが、この事業創造とマネジメント・スタイルは、教育やその他の社会事業においても、そのままヨコ展開していたことに注目する必要がある。

社会事業や公共事業も、あくまでも民間ビジネスと同様に、経済的に自立していないと事業としての持続性がない渋沢栄一は、そのための仕組みの構築に注力していたのである。「社会企業家」の先駆者とはそういう意味だ。

資本主義の矛盾解消のための労使協調、ビジネスの倫理性を強調する取り組み、ビジネス支援のための金融経済政策提言などなど。本書では日米関係悪化阻止の取り組みについては扱われていないが(・・『渋沢栄一 日本を創った実業人』『渋沢栄一 上下』を参照)、あくまでも実業家としての立ち位置を守りながら、「民」主導のよりよい社会構築に尽力した姿勢に学ぶべきものは多い。

本書のテーマが「社会企業家(ソーシャル・アントレプルナー)の先駆者」としての渋沢栄一にある以上、経済や経営にかんする知識がある程度まで求められるが、それさえクリアできれば新書本だが充実した読後感をもつことができるだろう。

渋沢栄一を専門に研究してきた経営史の研究者の手になるだけに、実証を踏まえた堅実で手堅い内容で、教えられることも多い歴史に学ぶビジネス倫理のケースとして、ぜひ読むことを薦めたい一冊である。


 (画像をクリック!

目 次

はじめに
第1章 農民の子から幕臣へ-才覚を活かせる場を求めて 
 1. 養蚕・製藍農家の長男として 
 2. 一橋家の家臣になる 
 3. パリ万国博覧会への参加 
 4. 静岡藩・新政府へ出仕 
 5. どのようにキャリアを形成したか
第2章 明治実業界のリーダー-開かれた経済の仕組みづくり 
 1. 第一国立銀行を創設 
 2. 近代産業創出のシステムづくり 
 3. 関わったビジネスの全体像 
 4. 多くの会社設立への尽力 
 5. 株主総会で力を発揮 
 6. 資金面からみた経営術
第3章 渋沢栄一をめぐる人的ネットワーク  
 1. コンパクトなビジネス空間の創出
 2. 多様な人材による経営サポート 
 3. 会社運営チームの派遣 
 4. 竜門社による次世代経営者の育成 
 5. 地縁・血縁者たち 
 6. 新しい渋沢家の創出
第4章 「民」のための政治をめざして-自立のための政策を提言  
 1. 日清戦後の経済政策と経済動向 
 2. 清国賠償金問題 
 3. 金本位制問題をめぐって 
 4. 外資導入問題の是非 
 5. 鉄道国有化問題での葛藤 
 6. 鉄道抵当法問題への積極的な関わり 
 7. 保護主義の是認へ 
 8. 強い「民」への期待と挫折
第5章 社会・公共事業を通じた国づくり    
 1. 実業教育への強い関心 
 2. 私立商業学校の支援 
 3. 社会事業への献身 
 4. 思想統合の試みと挫折 
 5. 協調会と修養団 
 6. 新たな労使関係の模索
おわりにかえて-渋沢の構想した近代社会
あとがき
年譜
参考文献
索引



著者プロフィール
島田昌和(しまだ・まさかず)
1961年東京都生まれ。1993年明治大学大学院経営学研究科博士課程単位取得満期中退。現在、文京学院大学経営学部教授。専攻、経営史、経営学 博士(経営学)。
著書は、『日本経営史3「大企業時代の到来」』(共著、岩波書店、1995)、『ケースブック 日本企業の経営行動4「企業家の群像と時代の息吹き」』(共著、有斐閣、1998)、『日本の企業間競争』(共著、有斐閣、2000)、『失敗と再生の経営史』(共著、有斐閣、2005)、『岩波講座「帝国」日本の学知 第2巻「「帝国」の経営学」』(共著、岩波書店、2006)、『渋沢栄一の企業者活動の研究』(日本経済評論社、2007)、『進化の経営史』(編著、有斐閣、2008)ほか。(出版社サイトより) 
  

<ブログ内関連記事>


渋沢栄一関連

書評 『渋沢栄一 上下』(鹿島茂、文春文庫、2013 初版単行本 2010)-19世紀フランスというキーワードで "日本資本主義の父" 渋沢栄一を読み解いた評伝

書評 『渋沢栄一-日本を創った実業人-』 (東京商工会議所=編、講談社+α文庫、2008)-日本の「近代化」をビジネス面で支えた財界リーダーとしての渋沢栄一と東京商工会議所について知る

日印交流事業:公開シンポジウム(1)「アジア・ルネサンス-渋沢栄一、J.N. タタ、岡倉天心、タゴールに学ぶ」 に参加してきた

『雨夜譚(あまよがたり)-渋沢栄一自伝-』(長幸男校注、岩波文庫、1984)を購入してから30年目に読んでみた-"日本資本主義の父" ・渋沢栄一は現実主義者でありながら本質的に「革命家」であった

『論語と算盤』(渋沢栄一、角川ソフィア文庫、2008 初版単行本 1916)は、タイトルに引きずられずに虚心坦懐に読んでみよう!

書評 『渋沢家三代』(佐野眞一、文春新書、1998)-始まりから完成までの「日本近代化」の歴史を渋沢栄一に始まる三代で描く


■財政史の観点から日本近現代史を考える

書評 『持たざる国への道-あの戦争と大日本帝国の破綻-』(松元 崇、中公文庫、2013)-誤算による日米開戦と国家破綻、そして明治維新以来の近代日本の連続性について「財政史」の観点から考察した好著
・・「第二部 軍部が理解しなかった金本位制」の「第1章 江戸の通貨制度」「第2章 江戸の金銀複本位制から明治の金本位制へ」は渋沢栄一も関与した大蔵省初期の近代化の意味を知る参考になる

高橋是清の盟友となったユダヤ系米国人の投資銀行家ジェイコブ・シフはなぜ日露戦争で日本を助けたのか?-「坂の上の雲」についての所感 (3)


社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)

グンゼ株式会社の創業者・波多野鶴吉について-キリスト教の理念によって創業したソーシャル・ビジネスがその原点にあった!

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)
・・シャーシャルビジネスの事例

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)
・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて

(2014年12月20日、23日 情報追加)


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2010年9月15日水曜日

『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた




 『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた。

 残念ながら「第1部のみ」の参加となった。第1部は、オープニングトークセッション/パネルディスカッションである。
 第2部の「ワールドカフェ」は、定員に達したため残念ながら参加できなかった。もちろん、私は「社会起業家」ではないし、その予備軍の若者ではないので、参加したとしても有意義な議論をできたかどうかはわからない。


「オープニングトークセッション/パネルディスカッション」の内容

 イベント第1部の概要は以下のとおりである。

タイトル:『世界を変える100人になろう』~社会貢献×キャリアデザイン~
●主催:「世界を変える100人になろう」実行委員会
●共催:アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.、株式会社ダイヤモンド社
●日時:2010年9月15日(水)13:00~18:00 (開場12:30~)
●会場:表参道ヒルズ「スペース・オー」(表参道ヒルズ地下3F)


≪第1部≫13:00~15:00

トークセッション「ソーシャルイノベーションの時代」

 新時代を築くために、いま求められるソーシャルイノベーションとは何か。それを実現するための要素について、アカデミックな視点を交えてお話しいただきます。

 米倉倉誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター長/教授)
 ロバート・サイデル(アメリカン・エキスプレス・インターンショナル,Inc [日本] 社長)

パネルディスカッション「社会問題をビジネスの手法で解決する」

社会貢献に関わる4つの側面(行政、企業、NPO/NGO、社会起業家)
から代表者を招き、各々の立場から「社会貢献は仕事になるのか」、
そして具体的なケース解決について語っていただきます。

パネラー(50音順 敬称略)

佐藤大吾(NPO法人チャリティ・プラットフォーム 代表理事)
高山靖子(株式会社資生堂 CSR部長)
藤原 豊(内閣府参事官《産業・雇用担当》)
山本 繁(NPO法人NEWVERY 理事長)

モデレータ
米倉誠一郎(一橋大学イノベーション研究センター長/教授)


 「トークセッション」では、米倉教授はなぜ日本のソーシャル・イノベーションの支援をするのが日本企業ではなくて、外資系企業の日本法人なのか(?)と半ば冗談で、会場の参加者に向けて疑問をもつように促していたが、それはそのとおりだろう。
 米国企業のアメックスが日本で社会貢献のサポートをするのは、日本企業のJCBがフランスで社会貢献しているものという喩えは言い得て妙だ。もちろん、米倉教授もアメックスには協力しているので、そのような冗談がいえる関係ではあるのだが。

 アメックス日本法人社長のキャリアが面白い。

 大学卒業後はテレコム業界に就職、M.B.A.取得後はアメックスに転職、タイ法人の社長としてミャンマーやカンボジアもカバーしていたという。これには親近感を感じた。
 サイデル氏は、タイ法人支社長時代に、米国や日本のような先進国とは異なる発展途上国(・・1993年当時はそのとおりだったろう)の「ワーク・ライフバランス」のスタイルに目を開かれた、と。

 なお、アメックスの社会貢献については、同社のウェブサイトで紹介されている。

 パネルでは、なんといっても実際に実践家として活躍している人たちのナマの発言は面白い。NPO会計については私は知らなかったが、BS(貸借対照表) という概念がないというのはオドロキだ。したがって、資本金という概念がないので、すべて売上げとして計上される PL(収益計算書)しかないのだという、ベンチャー経営者出身の佐藤大吾氏の発言はたいへん示唆に富むものであった。

 ただし、後半のケーススタディ(?)のテーマ選択の意味がイマイチよく理解できなかった。
 なぜ、「少子高齢化」問題をこの場でディスカッションするのか??

 おそらく大学生や20歳台の若者が大半を占めるであろう参加者たちにとって、「少子高齢化」問題は問題として、いったいどこまで認識されているのだろうかと強く疑問に思った。
 私自身、「少子高齢化」を問題にするというセンスがまったく理解できないので、パネルの後半は、正直いって退屈なセッションであった。「少子化」は個人の選択の問題であり、問題にするなら「高齢化」とは切り離して考えるべきだろう。だがそれは行政の問題が大きなウェイトを占めるはずなのだが。

 若者が取り組むべき社会貢献テーマはもっと他にあるはずではないのだろうか?


「社会貢献でメシを食う。」ためのキャリアデザインについての私見


 参加者は全員、『社会貢献でメシを食う。』(竹井善昭、米倉誠一郎=監修、ダイヤモンド社、2010)という新刊書をお土産としていただいた。
 すでに「ダイヤモンドオンライン」で連載中から読んでいたので、本の内容はあらかた知っているのだが、あらためてこの場で簡単に紹介しておこう。

 このタイトルはたいへんよい。これは声を大にしていっておこう。

 とかく理念だけで語られがちな社会貢献だが、このように形而下の表現で語られると観念論ではなく、地に足の着いたものとなるのがいい。
 まあ、ソーシャル・ビジネスと社会貢献的色彩をもった営利事業との境界線はきわめて曖昧なものだから、本を読むよりもまず実践が必要なのではないだろうか・・・
 とはいっても、あまりシビアな話ばかりしていると、若者は怖じ気づいてしまうのかな?

 キャリアデザインという観点からいえば、若者はまず企業に就職して、組織で仕事を動かすということを、肌身をつうじて体験しておいたほうがいいと私は考えている。その間、プロフェッショナルとしての能力を磨きながら、同時にプロボノなどの形で社会貢献の方面で経験を積むのが、身分的にも安定しているし、一石二鳥といえるのではないだろうか。

 ソーシャル・ビジネスに跳び込むのは、それからでも遅くないはずだ。

 「急がば回れ」という知恵を若者に教えてあげるのが、年上の人間の役目だろう。あせるな(!)と。



<ブログ内参考記事>

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)
・・シャーシャルビジネスの事例

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)
・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて

書評 『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)-真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本-

書評 『この世でいちばん大事な「カネ」の話』(西原理恵子著・装画・挿画、理論社、2008)
・・グラミン銀行についても触れている

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家”ヴォーリズ-

書評 『『薔薇族』編集長』(伊藤文学、幻冬舎アウトロー文庫、2006)-「意図せざる社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録-

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日) (4) 間奏曲-過去の断食参籠修行体験者たち
・・幕末当時は発展途上国であった日本で、主力産業であった農業分野における、農業経営に軸を置いた開発コンサルタントの元祖二宮尊徳について

アマルティア・セン教授の講演と緒方貞子さんとの対談 「新たな100年に向けて、人間と世界経済、そして日本の使命を考える。」(日立創業100周年記念講演)にいってきた
・・同じくベンガル生まれの経済学博士のセン教授は、問題意識を共有


<関連サイト>

 bk1の書評サイトに「書評フェア:社会起業家たち」の一冊として、その他の関連本とあわせて紹介されています。



PS
 なお、この投稿で 450本目 となった。
 感想は陳腐ではあるが「継続はチカラなり」。次の目標は 500本目。一歩一歩着実に歩みを進めていきたい。





(2012年7月3日発売の拙著です)









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2010年5月11日火曜日

書評『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)-「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本




「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本。とくにビジネスパーソンには読んでほしい本

 「社会起業家」18人のヒューマン・ストーリーを、著者自身の撮影によるポートレート写真と文章によって紹介した本である。

 いまでこそ「社会起業家」といえば、日本でも若年層を中心に知る人も多い存在となったが、出版された2005年当時はこの概念が生まれた米国はもちろん、日本では一般的な認知度はけっして高くなかった。

 「社会起業家」というコトバを世の中に広めるキッカケとなった本書の意義
はきわめて大きい。

 著者は米国で30年近く過ごしてきた写真家だが、はじめて米国に住み始めた頃、ある米国人から米国人と比較したときの日本人の特性として、日本人には「コンパッションが欠如しているのではないか」という痛切な指摘を受けた体験を「あとがき」に記している。

 コンパッション(compassion)とは、著者の表現を使えば「単なる同情を越えて他人の気持ちを思いやり苦しみも喜びも分かち合う」という意味だ。

 米国ではキリスト教をつうじて社会全体に当たり前のように定着している。コンパッションは仏教でいえば「慈悲の心」、ダライラマ14世が英語の説法でよく使用するコトバでもあるが、仏教国であるはずの現代日本人にコンパッションが欠けていると米国人の眼にうつるというのは、私自身もつらいものを感じる。

 「無償奉仕は、日本人には体質的気になじみにくいだろう、でもビジネスにつながるソーシャル・アントレプレナーシップ(=社会起業)ならば受け入れやすいのではないだろうか?」。このような問題意識が本書執筆の大きな動機になったと著者は書いている。日本に里帰りするたびに強まっていた違和感から出発した著者の問題意識は、いまでは多くの人たちに共有されつつある。


 本書に取り上げられているのは、「国境なき医師団」や「国境なき記者団」といった国際的に著名なNPOだけでなく、社会問題の解決のために奔走する団体の代表者18人である。いずれも明確なミッション(=使命感)と熱いパッション(=情熱)の持ち主ばかりである。著者が撮影したポートレートを見ていると、その人のもつ内面のパワーに引き込まれるのを覚える。

 ビジネスマンである私にとってもっとも関心が強いのは、なんといっても「アショカ財団」のビル・ドレイトン、「エンデヴァー」のリンダ・ロッテンバーグ、「アキュメン・ファンド」のジャクリーン・ノヴォグラッツの3人である。

 社会問題の解決のために、ビジネスの手法を持ち込んで成功してきた先駆者たちである。いずれも本来は米国のビジネス世界でのトップエリートといってよい人たちが、あえて社会問題解決のために身を投じ、しかも金銭(カネ)という万国共通のモチベーションをうまく善用して問題解決に取り組んできた。この点が、従来の国際援助とはまったく異なるアプローチであり、日本人も大いに学ぶべき先例であるといえるだろう。

 ビジネスと社会問題解決は、そもそも出発点は異なり、アプローチの方法も異なるが、「社会起業」という形で一つの方向へとコンバージェンス(=収斂)していくのではないだろうか。とくにリーマショック以降は市場原理主義に対する違和感が多くの人のあいだいに拡がり、社会性を意識しない企業経営は長期的に成り立ち得ない状況となりつつある。


 本書の続編である『社会起業家という仕事-チェンジメーカー2-』(日経BP社、2007)とあわせて、とくにビジネスパーソンには読んでほしい本である。社会的な問題解決は、自らが社会起業家にならなくても、自らが従事する仕事をつうじて実現することは不可能ではない。

 もちろん、社会問題解決にはビジネスのアプローチ以外のものも多く存在する。社会変革のために、自分がどういう形の貢献ができるのか、それぞれの立場で考え、たとえ小さなものであっても取り組んでいきたい。

 そういう気持ちをもつすべての人に読むことをすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本。とくにビジネスパーソンには読んでほしい本」投稿掲載(2010年4月27日)



<書評への付記>

 「チェンジメーカー」と自ら名乗り、著書のタイトルにもして、あたかも専売特許のように思わせている「経済評論家」がいるが、日本でこのコトバを初めて使用したのは本書の著者である渡邊奈々であり、いまから5年前のことである。
 くれぐれも勘違いしないように。

 compassion(慈悲) については、ツイッターでダライラマ14世(His Hpliness Dalai Lama)の発言をみるとよいだろう。ダライラマのオフィシャル・ツイッターは http://twitter.com/DalaiLama


 内容については書評に書いた内容に尽きるのだが、私がとくに取り上げた3人の米国人の「社会起業家」がそれぞれ率いる団体名称とそのミッション、ウェブサイトを紹介しておこう。

アショカ財団(Ashoka Foudation)
 ミッション:生産的でグローバルな市民のための事業モデルを作り、世界中に社会起業家の精神(ソーシャル・アントレプレナーシップ)を育てる
 www.ashoka.org

エンデヴァー(Eendeavor)
 ミッション:新興市場で優良な中小企業を発掘し、支持することで地域の経済や文化を促進させる。
 www.endeavor.org

アキュメン・ファンド(Acumen Fund)
ミッション:起業的アプローチを使って地球規模の貧困を解決し、貧困層の生活を改善する
 www.acumenfund.org


 アショカ財団のビル・ドレイトンのインタビュー(日本語)がある。

 チェンジメーカーは「釣り」を教え、社会起業家は「漁業」を変える 「社会起業の父」ビル・ドレイトン氏が語る(上)

会社も学校も家庭もチェンジメーカーの舞台「社会起業の父」ビル・ドレイトン氏が語る(下)

日本の社会起業家を支援する!(1)アショカが日本に上陸する理由


 本書『チェンジメーカー』の著者・渡邊奈々については、

「チェンジメーカー」渡邊奈々の軌跡アショカとの出会いが、価値観・生き方を変えた



 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005) でインタビュー対象となった「チェンジメーカー」の名前を列挙しておこう。

●ソーシャル・アントレプレナーの父:「アショカ財団」 ビル・ドレイトン
●新興市場国を元気づける“中小企業診断士”:「エンデヴァー」 リンダ・ロッテンバーグ
●ソーシャル・ベンチャーのインキュベーター:「アキュメン・ファンド」 ジャクリーン・ノヴォグラッツ
●日本版社会責任投資の伝道者:「インテグレックス」 秋山をね
●ホームレス専門の敏腕・住宅再生デベロッパー:「コモン・グラウンド・コミュニティ」 ロザンヌ・ハガティ
●難民住宅問題の解決策を募る建築展主宰者:「アーキテクチャー・フォー・ヒューマニティ」 キャメロン・シンクレア
●貧者を救う格安医療事業プランナー:「プロジェクト・インパクト」 デビッド・グリーン
●紛争・危険地帯の赤ひげ先生たち:「国境なき医師団」 アン・フシャール
●市民のためのメディア仕掛人:「インターニューズ」 アネット・マキノ
●報道を規制する国々の見張り番:「国境なき記者団」 ロベール・メナール
●どん底のエイズ患者を支えるアートセラピスト:「ハウジング・ワークス」 原田真樹子
●世界最大のフェアトレード認証機関のマーケター:「マックスハベラー」 ブレヒア・ヴェルマン
●紛争国家を和解に導くシナリオライター:「暫定司法国際センター」 アレックス・ボレイン
●敵対民族の子供を集めた交流キャンプのディレクター:「シーズ・オブ・ピース」 エヴァ・ゴードン
●世界中の人権侵害を暴くメディアプロデューサー:「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」 サマン・ジアザルフィ
●子供たちの転落を防ぐ人権派弁護士:「青少年のための法律センター」 ニナ・チャーノフ
●小児病院に笑いと希望を運ぶピエロたち:「ソッコルソ・クラウン」 ユリ・オルシャンスキー、ジョバンナ・ペッズーロ
●不登校児向け単位認定型フリースクール校長:「スマイルファクトリー」 白井智子





 『社会起業家という仕事-チェンジメーカー2-』(日経BP社、2007)に所収されているインタビューは以下のとおり。

●赤ん坊に「共感力」を学ぶ奇跡の教育提唱者:「ルーツ・オブ・エンパシー」 メリー・ゴードン
●途上国を救う人道テキスタイルメーカー社長:「ベスタガード・フランドセン」 ミケル・ベスタガード・フランドセン
●社会問題を解決する究極の IT ベンチャー:「ベネテック」 ジム・フルクタマン
●人権無視国への正義の伝導師:「インターナショナル・ブリッジス・トゥ・ジャスティス」 カレン・チェ
●忘れられた小国のための外交戦略立案家:「インディペンデント・ディプロマット」 カーン・ロス
●世界が認めた日本生まれの人道支援 NGO:「ピースウィンズ・ジャパン」 大西健丞
●貧民の声を届ける地域ビデオジャーナリスト集団:「ビデオ・ボランティア」 ジェシカ・メイベリー
●病児を預かる在宅保育事業のパイオニア:「フローレンス」 駒崎弘樹
●イスラムに残る悪しき因習被害者の救世主:「シュルジール」J
●老朽社宅転用型老人ホームの発案者:「伸こう福祉会」 片山ます江
●買春被害者救済の国際ネットワーク:「ポラリス・プロジェクト」 キャサリン・チョン
●フリーターのための短期滞在施設運営:「エム・クルー」 前橋靖
●教育起業家専門ベンチャーキャピタリスト:「ニュー・スクール・ベンチャー・ファンド」 キム・スミス
●貧困子弟向け芸術・職業訓練センター主宰者:「マンチェスター・ビッドウェル・コーポレーション」 ビル・ストリックランド
●愛情に飢えた子供たちへの里親プログラム:「パラン・パルミル」 カトリーヌ・オンジョレ
●社会企業投資ファンドマネジャー:「カルバート社会責任投資財団」 ティモシー・フルンドリッヒ
●日本人が生んだ出稼ぎ移民向け少額融資銀行:「マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション」 枋迫篤昌






PS 読みやすくするために改行を増やした。写真を大判に変えた。 (2014年4月8日 記す)。


<関連サイト>

 bk1の書評サイトに「書評フェア:社会起業家たち」の一冊として、その他の関連本とあわせて紹介されています。(2010年5月28日)

社会変革者を探し続ける男 アショカ創立メンバー、ビル・カーター氏(前編) (加藤祐子、日経ビジネスオンライン、2014年7月8日)

社会起業に自己犠牲? 必要ありません アショカ創立メンバー、ビル・カーター氏(後編)(加藤祐子、日経ビジネスオンライン、2014年7月15日)

(2014年7月8日、15日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

書評 『国をつくるという仕事』(西水美恵子、英治出版、2009)-真のリーダーシップとは何かを教えてくれる本-

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)-社会投資ファンドというコンセプトにたどりつくまでの「社会起業家」のオディッセイ

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家”ヴォーリズ-

書評 『『薔薇族』編集長』(伊藤文学、幻冬舎アウトロー文庫、2006)-「意図せざる社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録-

『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた

(2014年4月8日 情報追加)


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2010年2月15日月曜日

書評『『薔薇族』編集長』(伊藤文学、幻冬舎アウトロー文庫、2006)ー 意図せざる「社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録




著者である伊藤文学氏が39歳のときに創刊した雑誌『薔薇族』

 『『薔薇族』編集長』は、1971年に誕生したこの雑誌の編集長であり、出版元の経営者であった著者が、二度の廃刊を挟んだこの雑誌の歴史と、読者とともに歩んだ35年間を振り返った回想録的なノンフィクションである。

 初版の単行本は2001年の出版、著者は妻も子もあるノンケ(=ゲイではない人をさすゲイの世界の隠語)だという。

 私自身はゲイではないので、その世界には詳しくないのだが、はるか以前の大学時代、友人から聞いて、はじめてこの『薔薇族』という雑誌が存在することを知った。本屋の店頭で初めて手にとって見たときは、本当に驚いたものだった。世の中にはこんな雑誌があるのか、こんな世界が存在するのか、と。『薔薇族』はゲイ(・・・当時はホモといっていた)を対象とした月刊誌であった。

 だから、失礼ながら興味半分で眺めた、といっても間違いではない。

 ところで、私はこの本をビジネス書として読むことを、ひとつの読み方として提案したい。

 『薔薇族』は、いわば「ライフスタイル・ビジネス」でもある。個人の性的ライフスタイルを軸にして市場をセグメントし、娯楽を中心とした情報発信と啓蒙活動だけでなく、読者どうしの交流活動の「場」を誌面で提供した。

 現在では、こういった性格のビジネスは、媒体を活字メディアである雑誌からインターネットに移行しているが、読者(=お客様)と一緒につくりあげてゆくビジネスの本質には変わりはないといえる。

 著者は、偶然のきっかけから、性の悩みのなかでも特殊な分野であったホモセクシュアルの世界を知り、ニッチマーケットであった処女地(・・・なんだかこの文脈で使うのはへんな感じだが)を発見した。悩みに対するソリューションを提供するという形で市場を発見し、創造したのである。
 
 そして、試行錯誤を続けて手探りで模索しながら、読者とのインターラクションをつうじて、というより読者とともに、ゲイ(=ホモ)を日陰の存在から、日のあたる明るい世界へと解放する手助けをし、「市場拡大」に多大な貢献をしたことになったのである。

 伊藤氏の推定では、100人に6~7人の割合で、ホモセクシュアルの性向の持ち主がいるということだ。

 最初から意図したわけではないだろうが、月刊誌発行を続けてゆくうちに「ソーシャル・ビジネス」としての性格が増大し、ある意味では「社会起業家」のような仕事をしてきたといえるだろう。たとえ、そもそもの初発の動機が金儲けであったとしても。

 だから、ネット時代となった現在でも、温故知新の意味で読んで損はないのだ。消費者を一般大衆して一括りにして考えることが、もはや不可能となって久しい。細分化されたセグメントごとに、ターゲットを絞り込むことが当たり前となった現代において、この書を「市場発見」と「市場創造」のケーススタディとして読むことも可能である。

 もちろん、どんな読み方も可能であり、私の読み方はあくまでも一例に過ぎない。本というのは多様な読み方があっていいものなのだから。


<初出情報>

■bk1書評「意図せざる「社会起業家」による「市場発見」と「市場創造」の回想録」投稿掲載(2010年2月9日)





<書評への付記>

「社会起業家」と「ソーシャル・ビジネス」、そして「意図せざる結果」

 社会起業家(social entrepreneur)というのは、近年は日本でも市民権をえてきたコトバだが、日本人は少し狭く考えすぎているように思われる。純粋ということが大好きな日本人はクソマジメすぎるのではないかな? 社会起業家がみんな聖人君子である必要はない。

 社会起業家は、社会という冠コトバがついているが基本的に起業家であり、企業経営者としての経営感覚がないとつとまらないことに注意を促したい。

 創業動機については、京セラ創業者の稲盛会長がよくクチにする「動機善なりや?」というコトバが有名だが、いわゆる「貧困ビジネス」のような、善意を装っているが明らかに動機不善な事業は論外として、それほど深刻に捉えることはないだろう。

 本書の著者・伊藤文学氏(1932-)のように、まず事業家の直感で採算が取れると踏んだうえで、金儲け目的で始めた人の方が事業として成功する可能性は高いし、結果としてゲイ(=ホモセクシュアル)の人たちの社会的地位の向上に大きく貢献することになったのである。これを社会起業家といわずして何というのだろうか。

 私自身も仕事柄いろんな経営者を見てきたが、成功理由や動機は後付けでもいいと思う。重要なのは、事業を軌道にのせることと、顧客を裏切らずに事業経営を続けることである。

 ニッチ市場を発見し、その市場を大きく拡大させた著者は、本質において実に志の高い人であったことがわかる。この意味で、あえて「社会起業家」による「ソーシャル・ビジネス」の事例(ケース・スタディ)として紹介する理由である。

 伊藤文学氏のコトバをいくつか拾っておこう。いずれも著者の伊藤文学氏が、自らの体験のなかから生まれてきたコトバであるだけに、血の通ったホンモノのコトバだ。いくつか紹介しておきたい。

 社会的には歯牙(しが)にもかけられぬエロ本のおかげで会社の経営が安定し、出版社としての健全性を取り戻すことにもつながったのは何とも皮肉な話だ。ぼくにしてみればエロ出版によって品性を疑われようとも、ビジネスで人間性を疑われるようなことだけはしたくなかった。
 ぼくに出版理念があるとしたら、これに尽きるのである。(P.18)

 親父が口癖のようにぼくに言っていたことがある。
「出版の仕事は、机がひとつ、電話が一本あればできるのだから、絶対に事務所なんか借りるな。社員を使うな。ひとりでやれ。社員を使えば人のために仕事をするようになる」(P.15)


 なお、ゲイ(=ホモセクシュアル)関連の市場規模がいかに巨大なものとなっているかについては、『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』(入江敦彦、洋泉社新書y、2008)を紹介しておこう。なんと英国のゲイ関連市場は18兆円!規模というのだからオドロキだ。「バークレイズ銀行やIBMといった巨大企業が注目し、閣僚やメディアの仕掛け人も生まれはじめた」と出版社による紹介文にある。

 「京都人の秘密もの」のエッセイで有名な京都・西陣出身の著者は、自らゲイであることをこの本のなかでカミングアウトしており、英国人のパートナーとのツーショット写真を公開している。

 ビジネスパーソンであれば、偏見で目を曇らせることなく、ゲイ市場についてもありのままとして捉えてみるべきだろう。

 "経営の神さま"松下幸之助翁ではないが、「素直な心」でもってね。「素直な心」は虚心坦懐に、ということだが、とはいっても、まあしかし、これが難しいんだなあ~。

 幸之助翁はかつて「従業員の雇用を作りだし、納税することが最大の社会貢献」というような内容のコトバを発言しているが、まさにその通りだろう。大企業経営者としては素晴らしい倫理観の表明である。社会生態学者と自称していたピーター・ドラッカーも「企業にとっての利益追求は、自動的に社会的責任の遂行を意味する」と述べていることを付け加えておく。

 動機が善なりといえども、結果として事業活動をつうじて不善をなしてしまう者がいる。一方、動機が善ならざるものであもあっても、結果として事業活動をつうじて善をなす者がいる。

 何よりも事業は軌道に乗せることが社会貢献の第一歩であり、たとえ崇高な理念をもって出発しても事業を破綻させて従業員を路頭にまよわせるようでは社会貢献どころではない。

 事業経営につきものの「行為の意図せざる結果」についても、じっくりと考察を深めたいものだ。
   




PS 読みやすくするために改行を増やした。また<ブログ内関連記事>を新設した。(2014年4月8日)。


<関連サイト>

月刊 『薔薇族』編集長 伊藤文學の談話室 祭
 
     
<ブログ内関連記事>

書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)-「社会起業家」というコトバを日本に紹介した原典となる本

書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010) ・・"Patient Capital" というソーシャルファンドについて

『世界を変える100人になろう』(社会貢献×キャリアデザイン)に参加してきた

松下幸之助の 「理念経営」 の原点- 「使命」を知った日のこと

「かなまら祭」にいってきた(2010年4月4日)-これまた JAPANs(複数形の日本)の一つである

タイのあれこれ (19) カトゥーイ(=トランスジェンダー)の存在感
・・「かなまら祭」におけるゲイの存在感は大きい

(2014年4月8日 項目新設)


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