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2022年7月1日金曜日

映画『エルヴィス』(2022年、米国)を日本公開初日に見てきた(2022年7月1日)― エルヴィスは、アメリカそのものだったのだ!

 

映画『エルヴィス』(2022年、米国)を日本公開初日に見てきた。159分がまったく長く感じられなかった。エルヴィスは最高だ!  

それにしても、主演を演じたオースティン・バトラーは、よくここまでエルヴィスを演じきったと思う。ほとんどエルヴィスが憑依したかのようであった。 

それにもまして、マネジャーのカーネル・パーカーを演じたトム・ハンクスの演技もすごい。ほとんど主役を食いかねないほどの怪演としかいいようがない。 

エルヴィスを見いだしたのは興行師としてのパーカーであり、まさにパーカーなくしてエルヴィスなし。エルヴィスなくしてパーカーなしというほどであり、その愛憎に満ちた関係こそ、この映画の中心テーマである。 


南部テネシー州の田舎町でプアホワイトの家庭に生まれ、黒人居住区で黒人たちのなかで育ち、その音楽環境のまっただ中で育ったエルヴィス。この映画は、エルヴィスの音楽的ルーツがどこにあるのか、余すことなく描き切っている。

R&B(=リズム&ブルース)と黒人教会のゴスペルである。この映画を見るまで知らなかったのだが、エルヴィス初期の代表作 Hound Dog もまた、黒人音楽そのものであった。
 
1950年代は、第2次世界大戦に勝利した米国にとっては「黄金時代」であった。だが、南部では、セグレゲーション(=人種隔離政策)が行われていた。よりによって白人が黒人音楽を演じるなどもってのほかと見なされていた時代だった。 




だからこそ、1955年のデビューが衝撃的であったのだ。モノクロでしか残っていない実写フィルムではなく、この経緯をカラーで再現したからこそ、その意味がいやがおうでもダイレクトに伝わってくるのだ。 


■音楽映画であり伝記映画である

基本的に伝記映画なので、時系列にそって展開していく。

前半のハイライトが、衝撃的なデビューから徴兵による兵役までだとすれば、復員後のミュージカル映画の俳優時代を経て、歌手としての原点に戻った1968年のカムバック以降の日々が後半のハイライトになる。

それにしてもカムバック曲の If I Can Dream には泣かされた。 全身全霊で歌うエルヴィス。曲だけでなく、その歌詞の意味するところこそ重要なのだ。1968年という年が、米国社会においていかなる意味をもっていたかを考えてみたらいい。 


(Elvis Presley - If I Can Dream ('68 Comeback Special)


ただし、学生運動が中心となった欧州や日本の1968年とやや違うのは、米国ではキング牧師やロバート・ケネディの暗殺事件が続くなど、人種問題とベトナム戦争がもたらした精神的病理現象が社会全体に充満しつつあったことにある。

個人的には、1973年のハワイからの全世界衛星生中継(・・これはわたしは小学校4年のときのこと。リアルタイムでTVで見ている。つまり当時は日本の小学生でもエルヴィスの存在を知っていたわけだ。それほどのスーパースターだったのである!)を中心に据えて欲しかったが、そこはさらりと扱われるだけなのはちょっと残念。


(Elvis Presley - Aloha From Hawaii, Live in Honolulu, 1973 (Full Concert) 71分)


ワールドツアーでの欧州と日本公演の夢が叶えられなかったエルヴィスだが、その代償として行われたのがハワイ公演なのであった。

スーパースターとして頂点を極めたが、だからこそ抱え続けた内面の孤独。42歳で亡くなったかれだが、それでも、もはや立って歌えなくなってからの、1977年の最後の最後のステージでの熱唱(・・これはエルヴィス本人だ)には、また心打たれるものがある。


(Elvis Presley Unchained Melody + Indianapolis Airport TRIBUTE 1977)


まさに、全身全霊で歌いきり、生き切った人生だからだ。 

書き出せばきりがないが、エルヴィスのファンならもちろん、かならずしもそうではなくても、音楽映画として大いに楽しめるはずだ。 




なるほど、エルヴィスの曲は、いまに至るまでアメリカ人を癒やしつづけているのだ、と。いや、アメリカ人だけでなく、全世界で愛されされ続けている。 映画の最後で、字幕監修が湯川れい子氏であることを知って、大いに納得した。 





<関連サイト>

・・エルヴィスはワールドツアーで日本に来たかった。映画では、なぜその夢が叶えられなかったかについて、その理由の一端が明らかにされる。そのかわりとして行われたのが、1973年のハワイからの世界衛星生中継だった


<ブログ内関連記事>




・・I have a dream で有名な黒人解放運動の指導者キング牧師は1963年にエルヴィスの故郷メンフィスで暗殺。エルヴィスは、公式にキング牧師に哀悼の意を示すことはできなかった。1968年カムバック曲  If I Can Dream を想起せよ!




・・映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)への解説


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2018年11月28日水曜日

映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年、英国・米国)を見てきた(2018年11月28日)-こんなに泣ける映画はひさびさだ


やっと映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年、製作:英国・米国)を見に行ってきた。日本公開日(11月8日)の翌日にいくつもりだったが、忙しくて行くヒマがなかったのだ。 

本日午前9:40の初回で見たのだが、平日にもかかわらず、ほぼ満席に近かった。公開以来この映画の評判はきわめていいし、それだけ日本ではクイーンのファンの裾野が広いということだろう。 

私もふくめて、現在50歳代半ば以上の人にとっては、クイーンはリアルタイムの存在だし、個人的な話だが、やや前歯の出ている私はフレディーには親近感をもっている(笑)。自分も、子どもの頃は傷つきもしたものだ。 

クイーンに出会ったのは中学生の頃。いちばん最初に覚えたのは、残念ながらこの映画にはでてこないが I want to ride my bicycle というフレーズではじまる Bycycle Race という曲だ。中学生でも理解できる英語だったこともあって、なんてヘンな曲だと思ったものだ(笑) 

まあ、そんな個人的な回想はさておき、あらためてフレディー・マーキュリーの人生を振り返るこの人生ドラマを見ていて、なつかしい曲の数々に思わずいっしょに歌いたくなる衝動を抑えていたのだが(・・もちろんカラダは動くのは止められない)、ラストの1985年の「ライブエイド」の再現映像に向けて盛り上がっていくなかで、涙が止まらなくなってきた。 

そう、この映画は基本的に音楽映画なのだが、人生ドラマであり、家族についての映画だからだ。そう思って見ていると、歌詞の内容が彼の人生にオーバーラップしてきて、泣けてくるのだ。そうか、We Are The Champions もこういう聴き方があったのだなか、と。もう涙は流れるままにした。 

クイーンをリアルタイムで知っている世代だけでなく、知らない世代にとっても、すばらしい内容の映画といえのではないだろうか。あまりにもよくできた映画なのだ。

もちろん、ドラマである以上、実際とは違いもあるとはいえ、それはそれである。大いに楽しんで、大いに泣いたらいい。






<ブログ内関連記事>

映画 『最後のマイ・ウェイ』(2011年、フランス)をみてきた-いまここによみがえるフランスの国民歌手クロード・フランソワ
・・スーパースターの成功とその代償としての孤独、父親への反発と和解・・・。『ボヘミアン・ラプソディ』とよく似たテーマは、どこの国でもある

追悼 エルヴィス逝って40年(2017年8月16日)-「ゴスペルを愛してやまなかったエルヴィスの内奥を本当に理解しない限り、エルヴィスをありのまま愛することはできない・・・・」
・・エルビスもまた、クロード・フランソワの代表作「コム・ダビチュード」の英語カバー「マイ・ウェイ」を歌っている

レナード・コーエン(Leonard Cohen)の最新アルバム Old Ideas (2012)を聴き、全作品を聴き直しながら『レナード・コーエン伝』を読む

(2018年12月4日 情報追加)




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