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先週木曜日(12月10日)、ソフト・ブレーン社の経営者向け講演会「原点回帰と変革の経営」に参加してきた。
参加資格は経営者のみ、私はいちおう取締役という名刺で動いているので参加してきた。
ソフトブレーン社はこのブログでも以前触れたことがあるが、中国人の起業家・宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏が創業者として日本で立ち上げた会社である、宋文洲氏は現在は若いのに第一線を退いて、現在は活動の中心を北京にシフトしているらしい。
私は以前から宋文洲さんのメルマガを愛読している。『ここがへんだよ日本の課長?』などのタイトルで次々と刺激的な発言を続けており、異なる視点からモノを見ることの重要性を身を以て示している、日本では希有な存在だ。
以前からこのブログでも何回も触れているが、日本語人の世界では「世間」と「空気」の存在によって、自由な発言をしにくいのは否定できないからだ。
今回の講演会の講師は、①松田公太氏(タリーズ・インターナショナル・ファウンダー)と、②ゾマホンさん(ベナン共和国顧問)の二人である。
いずれも、異なる視点でモノを見ることができる人たちである。
松田氏は、1968年生まれ、人生の前半をセネガルと米国で過ごしてきた、いわゆる"帰国子女"である。
ゾマホンさんはいうまでもなくアフリカ人、このブログでも「ゾマホンさん(="2代目そのまんま東")の語るアフリカの本当の姿 (情報)」と題した記事を書いている。
ゾマホンさんの話は、私がブログで引用した、彼が書いていたメルマガの文章にもでてくる話であるので、今回はタリーズコーヒーの松田公太氏の話を聞いて思ったことを書いておこうと思う。
松田公太氏は、現在シンガポールに拠点を移し、タリーズ・インターナショナル・ファウンダーなど数社の経営にかかわっている。
今回の講演会のテーマは、まさに松田氏のポリシーでして起業以来ずっとこだわってきたものだという。
講演後、私は松田氏の著書『すべては一杯のコーヒーから』(新潮文庫、2005)を会場で購入し、著者にサインをもらった際、名刺交換をし、少し会話をさせていただいた。
「原点回帰」(Back to Basics)と「日々の変革」(・・松田氏はPDCAをもじってPDCIとしている。I は Improvement)は、起業以前から苦労してタリーズコーヒーを日本で定着させていく軌跡とあわせて、本のなかであますことなく具体的に語られており、手に取るように理解することができた。
現在はシンガポールを拠点に、日本初のサービスを世界に向けて展開していこうという姿勢、これは本人が主に英語圏で成長して英語に堪能こともあろうが、実にすぐれた戦略であるといえる。
私も実は同じようなことを考えていて、シンガポールかバンコクか悩んだすえにバンコクを選択したのだが、これは機械部品産業という性格からタイのほうが市場として大きいという積極的な理由と、シンガポールのビジネスコストが高いので回避したというで消去法的な理由による選択であった。
飲食業を中心としたサービス業では、シンガポールを選択したのはベストチョイスといってよい。松田氏も最終的に香港にするかシンガポールにするか悩んだといっていたが、中国市場へのゲイトウェイである香港を選ばず、インドも含めた東南アジアのライフスタイルのモデルとなっているシンガポールを選んでいる。
世界的な投資家であるジム・ロジャーズは米国を捨て、現在はシンガポールに拠点を移し、娘には中国語を学ばせている。中国市場へのアクセスを考えるとシンガポールはセカンド・ベストではあるが、先進的なサービス業のショーケースとしては、シンガポールは地の利に恵まれているというべきだろう。金融業以外でもシンガポールの優位性はある。ただし、ビジネスコストの高さを最初から考慮に入れておく必要がある。
製造業であれば今後もしばらくはタイが有望であるが、ライフスタイル・ビジネスであればシンガポールに拠点を置き、シンガポールでテストマーケティングを行うのは考慮すべきであろう。
シンガポールは人口は484万人と500万人に満たず(2008年度)、国内市場が小さいのでという制約をもつ。
しかし、一人あたりGDP(per capita GDP)は2007年以来、日本を上回っている。IMF統計によれば、2008年度は、米ドル換算でシンガポールは USD38,972(2008年度)と、日本の USD38,457 を上回って世界第22位である。2007年に超えられて以来、日本とシンガポールは逆転していない。
もちろん総需要では日本のほうがjはるかに大きいが、シンガポールがインド・東南アジア世界への橋頭堡としてもつ意味合いは比較にならない。
日本は文字どおり極東(Far East)であり、あまりにも遠すぎるのだ。
日本人も市場として中国の上海をみるだけでなく、東南アジア・インド・中近東世界へのゲイトウェイであるシンガポール(・・ないしはバンコクに)目を向けるべきであろう。
◆松田公太氏のウェブサイトはこちら。
(注)一人あたりGDPの国際比較データは「国の国内総生産順リスト (一人当り為替レート)」を参照。 英語版 List of countries by GDP (nominal) per capita のほうが情報量は多い。
(2012年7月3日発売の拙著です)
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