『「旬」がまるごと-マザーフードマガジン』というテーマ雑誌がポプラ社から出版されている。隔月刊のこの雑誌を、わたしは定期購読しているのだが、最新号の2011年9月号(7月発売)は「とうがらし」。まことにもって猛暑にはふさわしい特集だ。
「とうがらし」の副題は「脂肪燃焼、冷え解消」とある。まさに言うことなしの万能薬のような野菜であり、スパイスである。
9年前に自分のウェブサイトに以下のような文章を書いているので再録しておこう。
■「雑学のすすめ」(過去の掲載文)■
<2002年4月3日>
野菜のピーマンはフランス語が起源。ただし piment(ピマン)だけだと、唐辛子のことをさす。日本語のピーマンはフランス語では piment doux(ピマン・ドゥ:甘い唐辛子)になる。もともと同じものなのだから当然だ。なお、パプリカはドイツ語(Paprika)。ちなみにピーマンになくて、唐辛子に含まれる辛味成分をカプサイシンというが、体脂肪を燃やすありがたい存在だ。韓国女性が美しいのはキムチを食べるからだといわれるが、その理由はここにある。ところで、韓国やメキシコの唐辛子はロングサイズでそれほど激辛ではない。細長くて赤いピーマンみたいなものだ。それに対して日本やタイの唐辛子は小さくて本当に辛い!唐辛子は17世紀に日本経由で韓国に伝わったのに、なぜ違いがでてきたのだろう?
これでもうあなたの「頭はピーマン」ではありませんね。ではまた。
http://homepage2.nifty.com/kensatoken/hyoushi.kakono-zatsugaku.htm
ここに書いたように、ピーマンととうがらしは、じつはきわめて近い存在だ。京都府舞鶴市で栽培されている「万願寺甘とう」は京野菜の一つとしてブランド化されているが、「特集とうがらし」によれば、明治時代にカリフォルニア・ワンダー系のピーマンと伏見系のとうがらしが交配してできた種だという。近い存在であるがゆえに、交配も可能だというわけだ。
「特集とうがらし」には、タイの小粒で激辛のとうがらしであるプリッキーヌーの紹介記事もある。
プリッキーヌーとはプリック(とうがらし)+ヌー(ねずみ)の合成語、この記事には書かれていないが、小粒で「ねずみのふん」のような形だからそのように呼ばれるという話を聞いたことがある。日本にも「鹿のふん」というお菓子があるからそれはそれでいいだろう。
ここに掲げた写真は、バンコク市内の下町の風景。日中にとうがらしを干している風景。同じような風景は、韓国の田舎を旅したら目にすることもできる。
この記事に書かれていないが、タイの国民歌手バード(トンチャイ)には、その名も『プリッキーヌー』というコミカルな歌があるので、あらためて紹介しておこう。
◆Prik Khee Nhoo(Re-mix)でどうぞ。 こちらはかなりのアップテンポでノリノリですね。ぜひミュージック・ビデオの内容も一緒に楽しんでください。
東南アジアでは、タイがもっともとうがらしの消費量が多いが、カンボジアでもベトナムでもみなとうがらしは大量消費している。暑さ対策にはとうがらしの辛さが欠かせないということだ。
ここでとうがらしについてえんえんと書き続けるよりも、『「旬」がまるごと』の「特集とうがらし}を読んでいただくか、とうがらし関連の本は日本語でもたくさん出ているので、そちらを参照してもらうのもいいだろう。
ここでは、『とうがらしマニアックス-とうがらし好きのためのとうがらし本-』(とうがらしマニアックス編集部、山と渓谷社、2009)を紹介しておこう。カラフルで楽しい小型本である。
とうがらしには修行目的の使用というものもあることにふれておきたい。
昨年(2010年)9月に「山伏体験修行」でいやというほど体験したのが「南蛮いぶし」。一室に閉じ込められて、とうがらしなどの香辛料ににぬかをまぜた粉を炭火でいぶして、目にも鼻にものどに襲いかかってくる激しい異臭を、呼吸困難ななかで耐え抜く修行である。
こんな用法をしているのは、ほかの民族にあるのかどうかは知らないが、まことにもってとうがらしの用途は広い。用途は食用に限定されないというわけなのだ。
『「旬」がまるごと-マザーフードマガジン』(ポプラ社)
・・公式サイト
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・・ここで「南蛮いぶし」について書いてあります
(2012年7月3日発売の拙著です)
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