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2013年2月23日土曜日

「植物学者 牧野富太郎の足跡と今(日本の科学者技術者シリーズ第10回)」(国立科学博物館 東京・上野)にいってきた


つい先日(2013年2月15日)のこと、ロシアに落下した巨大隕石のニュースを知って以来、隕石の実物が見たいので、じつにひさびさに上野の国立科学博物館に行ってみたのだが、なんと小学校時代のあこがれの人であった牧野富太郎博士の特別展示があることを知った! 

昨年(2012年)が生誕150年ということで企画されたようだ。この特別展示をまったく知らなかったので、偶然の結果として見ることができたのは大いなる喜びであり、また隕石の導き(?)かもしれないとも思うのであった。

小学校時代からの理科少年で、とくに自然観察に没頭していたわたしは、植物、動物、魚介類その他もろもろが大好きで、毎日のように自然観察と図鑑に読みふけることを交互に繰り返していたのだが、植物の世界では牧野富太郎博士、魚介類の世界では昭和天皇(・・当時はまだ今上天皇であった)を尊敬していた。とくに牧野富太郎博士は「あこがれの存在」であったような気がする。

『牧野日本植物図鑑』といえば、それほど有名なものはないといえるほど重要な図鑑、小学生には絵よりも字のほうが多くて、しかもきわめて高価であった『牧野日本植物図鑑』は手の届かないものであったが、その存在は現在にいたるまで脳裏に刻み込まれた存在である。

牧野富太郎は、その全生涯をかけて日本の植物を徹底的に収集、観察し、じつにうつくしいアートともいえるような精密な植物画を作成し、植物研究者として後世に名を残したのである。ゆえに日本の「植物の父」とたたえられているのである。


その牧野富太郎博士の特別企画展である。昨日は金曜日で入館時間が20時までというのも幸いした。入館料は600円で特別料金をとられないというのもありがたい。その前を通っても、ひさしく入館していなかった科学博物館に入ってみる。

なによりもまず「植物学者 牧野富太郎の足跡と今」の会場に向かい、展示品をひととおり見て回った。

年譜に記載された、「14歳で小学校を自主退学」という一行がじつにインパクトがあるものだ。牧野博士は65歳で理学博士となったのであるが、小学校すら退学しているので「最終学歴はなし」ということになるのだろうか。

しかし、これは勉強ができないからでなく、学校に飽き足らず「自主退学」したということであろう。この点は、高知(土佐)の牧野富太郎博士(1862~1957)だけでなく、おなじく四国は徳島の世界的民族学者・鳥居龍蔵 博士(1870~1953)も同じだ。ほぼ同時代を生きた鳥居龍蔵 博士も、学校の勉強には飽き足りないので小学校を中退している。

学力がないとか、学費がないという理由ではない。学校という制度がイヤだから行きたくないという意向がそのまま通った時代なのであった。明治時代はまだそんな時代だったのだ。というのも、近代的な義務教育制度とはまったっく異なる、寺子屋という学習機関の影響が濃厚に残っていた明治初めであればのことだろう。

わたくしごとだが、徳島生まれの祖父もまた、「学校は面白くないからイヤだ」と親にいったら、「ああ、そうかい」ということで尋常小学校卒業で終わっている。師範学校の校長を歴任したような親ですら、そういう態度を子どもに対して示しているというのが面白い。

その頃にくらべると、現在はなんと窮屈でイヤな時代になったものだと思うのである。純粋に知りたい、学びたいという欲求に、いまの学校制度はどこまで対応できているのであろうか?



ところで、先に名を出した昭和天皇もまた生物学全般にかんする多大な興味から植物についても研究をしておられたことは有名だが、昭和23年(1948年)には「ご進講」という形で牧野富太郎との対面が実現している。昭和天皇はその機会を心待ちにしておられたという。

かつての自然観察少年少女はもちろん、自然観察とはなにかを感じ取りたい人、日本の民間学の水準の高さと裾野の広さを知りたい人だけでなく、ひろく日本人一般に、「純粋に知的探求を行う精神」とはなにかを知ってほしい。

そのためにも、この巨大な先人の軌跡をぜひ見てほしいと思うのである。人間の本質は学びにあるからだ。

なお、この企画展の解説を記した小冊子が会場にて無料で入手できることを付け加えておこう。








<関連サイト>

植物学者 牧野富太郎の足跡と今(日本の科学者技術者シリーズ第10回)(国立科学博物館)

国立科学博物館 アクセス・利用案内


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