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2013年10月12日土曜日

書評『「大学町」出現 ー 近代都市計画の錬金術』(木方十根、河出ブックス、2010) ー1920年代以降に大都市郊外に形成された「大学町」とは?


「城下町」や「門前町」が前近代社会、すなわち土地を基本単位にした地方分権制であった近世封建制の時代に形成されてきたものであれば、「大学町」や「企業城下町」は近代の産物である。


大学町とは、東京や京阪、名古屋などの大都市郊外に形成された、大学を中核(コア)にして開発された市街地のことである。都心部でまとまった土地が確保できなくなった大学が、郊外に土地を求めて土地交換等によって確保し、移転したことによって誕生したものだ。

そのさきがけとして、大学町のプロトタイプとなったのが東京西郊の「くにたち大学町」(東京都国立市)である。国立と書いて「くにたち」と読むのだが、それは両隣の国分寺と立川に挟まれた未開発の雑木林であったためである。

「くにたち大学町」の中核となるのが一橋大学である。当時は東京商科大学という名称であったが、1923年の関東大震災で都心部のキャンパスが被災したため、震災復興とキャンパス移転を同時に実現すべく移転が実行された。大学町そのものとしては理路整然としているが、キャンパス内の建物の配置がかならすしもそうではないのは、「復興事業的色彩が濃厚」なためだったと著者は指摘している。

このように大学町形成の背景にあったのは1923年(大正12年)の関東大震災があったのだが、それだけではなく、1920年代の「大学昇格運動」があったことも重要である。むしろ後者の流れのなかで、大震災がまったなしの状況として拍車をかけたというべきだろう。

1918年(大正7年)の「大学令」で、東京商科大学、東京工業大学など官立単科大学が誕生1920年には慶應義塾大学、早稲田大学を皮切りに私立大学がぞくぞくと誕生している。1920年は大正時代のまっただなかであるが、普通選挙や労働運動など大衆時代の幕開けであり、高等教育へのニーズがひじょうに高まった時期でもある。

面白いのは、大都市とはいっても東京と大阪、そして名古屋では大学町形成の主体とプロセスが異なることだ。

東京は、民間デベロッパーのビジネスとして宅地分譲と一体型の開発が行われたのに対し、阪神では鉄道会社がミッションスクールを誘致して大学を育成しながら大学町のブランディングを重視した姿勢、大阪は大阪商大(現在の大阪市立大学)が大阪市の都市計画の一環として計画されたのだと著者は整理している。

大学町は学園都市ともいうが、東京の東急沿線に形成された大学町は学園都市というべきかもしれない。田園都市との類比を想起するからだ。

わたし自身、アメリカでもヨーロッパでも、大学都市は多く歩き回ってみたが、大学という制度が誕生したヨーロッパでは、大学はキャンパスに集中しておらず、大学町に分散しているのが当たり前だ。その意味では日本の大学キャンパスはアメリカ型のキャンパスを小規模に再現したといえるかもしれないという感想をもつ。

著者によれば、図書館のタワーの前に広場がある一橋大学や関西学院大学はアメリカ的な意味でのキャンパスの正統だという(P.119)。慶應の日吉キャンパスのように並木道があるのは日本型なのだと。

本書が出版されたのは2010年であり、東日本大震災(2011年3月11日)の前である。大震災の復興事業の一環として大学キャンパスの郊外移転が実行されたことは、「3-11」後の現時点では興味深く感じる。

博士論文をベースにしたものだけに、記述は精緻なものとなっており、やや読みにくいのは否めないが、郊外キャンパスから大学と都市開発を考える視点が面白いので一読の価値はあると言っておこう。




目 次

はじめに
序章 「大学町」の成立背景
第1章 「国立大学町」はいかにつくられたか
第2章 沿線開発と大学町
第3章 大学町の展開とキャンパス・デザイン
第4章 大学をわが村へ-組合による郊外開発と大学町
第5章 近代都市計画の理想とキャンパス
終章 近代都市計画の錬金術
あとがき
参考文献・図版出典

著者プロフィール

木方十根(きかた・じゅんね)
1968年岐阜県生まれ。名古屋大学卒業後、東京藝術大学大学院、名古屋大学助手を経て、鹿児島大学大学院理工学研究科准教授。専門は、建築・都市計画史。2004年度日本都市計画学会論文奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


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城下町と門前町




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