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2013年10月6日日曜日

マンガ『アル中病棟(失踪日記2)』(吾妻ひでお、イーストプレス、2013)は、図らずもアル中病棟で参与観察型のフィールドワークを行うことになったマンガ家によるノンフィクション



前作の『失踪日記』が出版されたのは2005年、すっかり忘れていた頃、次作が『アル中病棟』という形で出版されることを知った。もう8年もたっていたのか。昨日ゲットして本日読了。

『失踪日記』は、締め切りを落として(=締め切りを守れなくて)逃げたマンガ家が、その後につづく波乱万丈の日々を描いたマンガ。自殺未遂、突然の失踪、路上生活、肉体労働、そしてアル中病棟。

吾妻ひでおというとロリコン作品で有名なマンガ家だが(・・わたしは別にファンではないが、わたしと同じ世代なら、SF作家の新井素子の小説のカバーイラストなど目にしたことがあるはずだ)、『失踪日記』を読むまで、まさかそこに描かれたような体験をしていたとは知らなかった。

『失踪日記』の反響は大きくベストセラーになったが、そもそもギャグマンガ家は、ギャグの創作に行き詰まってうつ病になって失踪したり、最悪の場合は自殺してしまう人いるという因果な商売だ。

『消えたマンガ家』(大泉実成、太田出版、1996)というノンフィクションがあるくらいで、とくにギャグマンガを続けるのはストーリーマンガのなかでは最難関で過酷な道のなようだ。最後まで現役のギャグマンガ家としてまっとうしたのは、もしかすると遊びも派手にやっていた故・赤塚不二夫先生くらいかもしれない。

『失踪日記』はいまでも処分せずに所有している。それくらいインパクトがあり、小説にもマンガにも描かれることのないテーマだからだ。『失踪日記』は、実際に体験した本人がその生活から足を洗ってマンガ家に復活してから回想しながら描かれたものである。


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『失踪日記』は、「夜を歩く」、「街を歩く」、「アル中病棟」の3編で構成されているが、その『アル中病棟』が単行本で300ページを超える作品として拡充されたのが『アル中病棟-失踪日記2-』だ。

内容は読むのが一番だが、登場人物の性格がより明確になり、ディテールが詳細に描かれ、これは体験した本人にしか描けないなと思いつつ、さらに患者として体験した自分が語り手でありながら、キャラ化された主人公として描かれていることに感心しながら読んでいるわけである。この手法は、フィールドワークでいう「参与観察法」である。

300ページを超える大作だが一気に読めてしまう内容、読み終えてしまうのが残念に思うくらい最後の最後までネタがつきることなく続く。だんだんと、患者たちが退院していき、最後は主人公である作者も退院してしまうのが残念とまで感じてしまう。

自ら希望したわけではなく、しびれを切らした家族によって「アル中病棟」に入院させられることになった著者だが、3カ月にわたるアルコール依存症の入院治療と、病棟内の人間模様を中心にした生態をフィールドワークし、それを作品化したことで入院生活のもとを取ったといえようか。

それにしても作者による具体的なモノやコトにかんするディテールの観察が細かいのは、マンガ家としてのプロ意識のなせるわざだろうか。

ただし、治療そのものはあくまでも患者の同意を得てのことであることは、このマンガのなかで何度も明記されている。病気というものは医者が直すのではなく、患者本人がよくなりたいという気持ちをもたない限りだめだということも、読めば納得される内容だ。アルコール依存症というのは、メンタル面のウェイトが高い病気である。

アルコールを一滴でも飲めば、ふたたびアル中病棟戻りとなる以上、もはやアルコールは飲めない著者にとっては、自らを主人公として登場させる作品を描くことじたいが自己治癒のプロセスでもあったようだ。

内容は読んでみてのお楽しみ。それにしても登場人物たちのキャラの濃いこと!


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著者プロフィール  

吾妻ひでお(あづま・ひでお)
1950年2月6日、北海道生まれ。 上京後就職するもほどなく退社。漫画家板井れんたろう氏のアシスタントを務め69年にデビュー後、『ふたりと5人』『やけくそ天使』などのギャグ、『パラレル狂室』『メチル・メタフィジーク』『不条理日記』(=79年、第10回日本SF大会星雲賞コミック部門受賞)などの不条理・SF、『陽射し』『海から来た機械』などのエロティックな美少女ものなど様々な作風で各方面から絶大な支持を得る。『ななこSOS』『オリンポスのポロン』はアニメ化された(両作品とも05年に早川文庫で復刊)。89年に突然失踪、その顛末は05年『失踪日記』として発表され、第34回日本漫画家協会賞大賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第37回日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門を受賞。近作に『うつうつひでお日記』、『ぶらぶらひでお絵日記』、『逃亡日記』、『地を這う魚』、『実録! あるこーる白書』(西原理恵子と共著)、Azuma Hideo Best Selectionシリーズ等。


<関連サイト>

『失踪日記2 アル中病棟』を語る(吾妻ひでお × とり・みき対談  Matogrosso)


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in vino veritas (酒に真理あり)-酒にまつわるブログ記事 <総集編>

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日)体験記 (総目次)
・・病棟ではないが、境内の外には出られないのが成田山の断食修行についてわたし自身の参与観察による体験記

書評 『治癒神イエスの誕生』(山形孝夫、ちくま学芸文庫、2010 単行本初版 1981)-イエスとその教団の活動は精神疾患の「病気直し」集団のマーケティング活動
・・キリスト教と病気治し

書評 『村から工場へ-東南アジア女性の近代化経験-』(平井京之介、NTT出版、2011)-タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い ・・参与観察法による日系企業のタイ現地法人におけるフィールドワークをもとにした研究

書評 『ヤシガラ椀の外へ』(ベネディクト・アンダーセン、加藤剛訳、NTT出版、2009)-日本限定の自叙伝で名著 『想像の共同体』が生まれた背景を知る ・・フィールドワークの意味について

「今和次郎 採集講義展」(パナソニック電工 汐留ミュージアム)にいってきた-「路上観察」の原型としての「考現学」誕生プロセスを知る
・・フィールドワークによる観察

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)-本質論をズバリ語った「梅棹忠夫による梅棹忠夫入門」
・・人類学者の観察とはどういうものか

アリの巣をみる-自然観察がすべての出発点!

猛暑の夏の自然観察 (1) セミの生態 (2010年8月の記録)

猛暑の夏の自然観察 (2) ノラネコの生態 (2010年8月の記録)

猛暑の夏の自然観察 (3) 身近な生物を観察する動物行動学-ユクスキュルの「環世界」(Umwelt)


* 「観察」の方法については拙著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)第2章「「引き出し」の増やし方②-徹底的に観察する」にくわしく書いておいたので参照していただければ幸いです。

(2014年9月1日 情報追加)


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