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2019年3月21日木曜日

『奇想の系譜展 ー 江戸絵画ミラクルワールド』(東京都立美術館・上野)に行ってきた(2019年3月21日)ー「奇想」の絵師たちの作品がここに大集結!



奇想の系譜展-江戸絵画ミラクルワールド-』(東京都立美術館・上野に行ってきた(2019年3月21日)。『新・北斎展』と対の美術展で、セットのチケットをネットで購入したまま、なかなか行く暇がなかった。会期が4月7日と迫ってきているので休日を利用して行くことにしたのだ。 

「奇想の系譜展-江戸絵画ミラクルワールド」という、このタイトルそのものがそそるではないか! 美術史家の辻惟雄が発掘し、紹介してきた江戸の奇想画の集大成である。個々のアーチストの展示はすくなからず開催されているが、まとまった形での贅沢な美術展は滅多にない。 

本日(3月21日)は春分の日で祝日ということもあって、想定外に(?)朝からすごい人だった。個人的には、来館者が少ない方がゆっくり鑑賞できるのでありがたいのだが、こういう美術展の入場者が多いということはいいことだ。日本人の趣味も、やっと江戸時代中期以降の成熟さを取り戻しつつあるということになるから。「近代」通過後の日本人による日本再発見。 「後近代」は江戸に通ず。 




それぞれの短評による紹介が、また見る人の気持ちをそそるのだ。 

「幻想の博物誌 伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう)」、「醒めたグロテスク 曽我蕭白(そが・しょうはく)」、「京のエンターテイナー 長沢芦雪(ながさわ・ろせつ)」、「執念のドラマ 岩佐又兵衛(いわさ・またべえ)」、「狩野派きっての知性派 狩野山雪(かのう・さんせつ)」、「奇想の起爆剤 白隠慧鶴(はくいん・けいかく)」、「江戸琳派の鬼才 鈴木其一(すずき・きいつ)」、「幕末浮世絵七変化 歌川国芳(うたがわ・くによし)」

ただし、この並べ方は時系列ではない。それなりの考えあってのことだろう。それは、実際に足を運んでみてのお楽しみということだろう。

 浮世絵師の歌川国芳以外は、浮世絵版画の作品ではないので、サイズの関係からいって鑑賞しやすいのも特徴だ。フェルメールの絵画もそうだが、サイズが小さい浮世絵は美術館での鑑賞には難がある。江戸時代初期の岩佐又兵衛は、まだ肉筆浮世絵の時代であり、出展されているのは彩色の絵巻物だ。春画ではないので念のため。 

それにしても、インパクトがあったのは、入場するといきなり目に飛び込んでくる伊藤若冲の「象と鯨図屏風」。六曲一双の屏風。墨の濃淡だけで表現したものだが、右手の白像と左手黒鯨のコントラストが鮮やか。北陸の旧家に伝わったもので、2008年夏に存在が知られたばかりなのだそうだ。


(伊藤若冲の「象と鯨屏風図」 実際はでかい!)

このほか、有名な「虎図」(こちらは彩色 マグネットあり)は米国のプライス・コレクション所蔵のものであり、日本にあったら間違いなく国宝級の作品だろう。プライス氏ならずとも、あらためて伊藤若冲には心を奪われるのだ。 

インパクトの大きさといえば、臨済宗僧侶の白隠巨大な両目を開いた「達磨図」は、実物を見るに限る。とにかくでかいのだ、サイズが。実物のもつ圧倒的な存在感。濃い容貌のインド人。このほか「布袋図」には、渦巻きによって動きと時間が表現されており、マンガっぽい表情には、思わずニヤリとさせられるおかしみがある。座禅や禅問答はすこし脇に置いて、作品そのものを 大いに楽しみたいのが白隠。


(白隠の達磨図 サイズは身長なみででかい!)

歌川国芳は、「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」などの奇想画などのアルチンボルド風の奇想画が面白いだけでなく、作品のほぼすべてが浮世絵版画が中心なので、インパクトという点ではサイズの関係で劣っているのだが、今回は浅草寺に奉納された額絵の「一ツ家」と成田山に奉納された「火消千組の図」が展示されており、こういう作品を目線の高さで、しかも間近で見ることができるのはじつによい。 とくに後者は、一人一人の火消しのディテールに注目したい。

このほか、長沢芦雪の子犬がかわいい「白像黒牛図屏風」は、伊藤若冲の「象と鯨図屏風」に匹敵するが、黒牛の横に描かれた子犬がかわいいのだ。構図はおなじでも、アクセントをつけて視線をいったんはずす効果がある。これは若冲との違いだ。そして、「降雪狗児図」の子犬もかわいい。これがほんとに江戸時代の作品?と思いたくなる。 


(長沢芦雪の「降雪狗児図」 こちらはこじんまり)

奇想といえば、なんといっても曽我蕭白だろう。だが、今回はワン・ノブ・ゼムの扱いなのが、ちょっと残念。題材を現代の日本人にはあまりなじみのない中国の説話にとっているだけでなく、ちょっとぶっ飛び過ぎているので、曽我蕭白がポピュラリティを得るまでには、さすがに現代日本でもまだ時間がかかるのではないかな、という気もする。 

まあ、いろいろと書いてみたが、ぐだぐだ言わずに「奇想」を楽しむ美術展だといっていいだろう。童心に返って楽しむのが、ただしい見方なのかな、と。 




なお、マグネット3点を購入(写真)。右から白隠の「達磨図」、若冲の「虎図」、芦雪の「白象黒牛図屏風」の一部。今回の美術展では、マグネットは充実している。







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『酒井抱一と江戸琳派の全貌』(千葉市美術館)の初日にいってきた-没後最大規模のこの回顧展は絶対に見逃してはいけない!

書評 『かわいい琳派』(三戸信恵、東京美術、2014)-「かわいい」という切り口でみた「琳派入門」のビジュアル本

「特別展 雪村-奇想の誕生-」(東京藝術大学大学美術館) にいってきた(2017年5月18日)-なるほど、ここから「奇想」が始まったのか!
・・江戸時代の前の「奇想」の原点的存在


■西洋の「奇想の系譜」

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