中国SFの超大作『三体Ⅲ 死神永生 上・下』(劉慈欣、大森望他訳、早川書房、2020)を年始の3日かけて読了。前2作にも劣らぬ、とてつもない壮大なスケールの、このSF作品に圧倒された。
2年かけて、全部で2000ページ以上におよぶ『三体・三部作』を読み終えたが、なんと言ったらいいのか、「ものすごく遠くから眺めているような感覚」というか、「いま自分がどこにいるのかわからないような感覚」を覚えている。
『三体Ⅱ 黒暗森林 上・下』を読了して1年たつので、どんな内容だったか忘れていた。あたかも作中の登場人物のように、「人工冬眠」によって1世紀のあいだ眠っていたかのような気分である。読み進めていくうちに、ようやく意識と記憶が解凍し始めるのを覚えた。
前作の『三体Ⅱ 黒暗森林』は、いまから4世紀後の世界だが、『三体Ⅲ 死神永生』は、そんな半端な未来ではない。太陽系から出て宇宙の果てまで、そして宇宙の終わりまで、はてしなく連れて行かれるのだ。人間の感覚にとっては長期に感じられる「4世紀」という時間も、宇宙全体の歴史からみたら、ごくごく短いタイムスパンに思えてしまう。
この三部作のベースにある物理学については、もちろんすべてが理解の範囲内ではないが、それでも最後まで読ませる作家としての力量がすばらしい。作者の劉慈欣は1963年生まれのエンジニア、わたしとは同世代だ。 原書出版は2010年なので、すでに10年たっているが全世界で評価は高まる一方だ。
それにしても、すごい才能である。構想もすごいが、書き上げるエネルギーもすごい。そして、こんな作品を日本語訳したこともすごい。もちろん、読むのも多大な体力を要したことは言うまでもない。
これ以上、余計なコメントは差し控えることにしよう。
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