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2015年5月27日水曜日

書評『チャイニーズ・ドリーム ― 大衆資本主義が世界を変える』(丸川知雄、ちくま新書、2013)― 無数の「大衆資本家」たちの存在が中国の「国家資本主義」体制の地盤を堀崩す


「チャイニーズ・ドリーム」(=中国夢)というと、どうしても習近平によって大国化を目指して打ち出された政治的スローガンを想起してしまう。

だが、本書のタイトルになっている「チャイニーズ・ドリーム」は、政治的なものではない。経済をつうじて実現したいと願っている一般大衆の「夢」のことである。それが著者のいう「大衆資本主義」というものを支えている「夢」である。アメリカンドリームと同様に、ビジネスをつうじての成功という「夢」である。

中国経済は、かってほどの比率ではないものの、いまでも依然として国有企業のプレゼンスの大きな経済である。中国共産党が推進したい「社会主義資本経済」の主要な担い手が、石油や鉄鋼など主要産業を押さえている国有企業なのである。国内外の株式市場で上場している企業の大半は国有企業グループである。

1989年の「天安門事件」以後、政治的な自由を抑えつける代償として、経済的な自由を開放する政策が行われている中国だが、一般大衆にも経済的に成功するチャンスが与えられている。そこに開花したのが著者のいう「大衆資本主義」だ。

儲かるチャンスがあればそこに殺到する「大衆資本家」たち。規制のスキマを発見したらそこに殺到する「大衆資本家」たち。中国ビジネスというと、不動産や株式投資ばかりが日本のマスコミ報道では取り上げられているが、製造業の分野で事業を立ち上げる「大衆資本家」が存在することを本書は教えてくれる。

中国ではそれをさして山塞(さんさい)型というらしい。山塞とは、山賊の要塞のこと。山塞型とは、つまりゲリラ的な参入のことである。著者が前著の『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(中公新書、2008)でも取り上げていた携帯電話、太陽電池といった事業分野が、まさにその典型的な実例である。特定の分野に専門特化して一点集中突破を図る戦略である。

「垂直統合」の産業構造が解体して、パーツやモジュール単位で「垂直分裂」した結果、分業化が進んで参入障壁が低くなると、小さな資本でも事業を立ち上げることが可能となったのである。いわゆるモジュール型の製造分野では、市場で購入したパーツやモジュールを組み立てれば、製造の敷居がきわめて低くなる。そして低価格での販売も可能となる。

著者は、こういった「大衆資本家」たちの取り組みを「キャッチ・ダウン型」と命名している。先行技術に「キャッチ・アップ」するのではなく、スペックの要求水準を下げることによって低価格というアドバンテージを手に入れる戦略である。

このほか、規制の網をかいくぐって急成長したのが電動自転車なども、じつに興味深い事例だ。

だが、「大衆資本主義」はときに大暴走することもある。その典型的な例がレアアース採掘である。

供給不足に狼狽した日本側の動きを知って、レアアースが日本揺さぶりの武器になると勘違いした中国政府の対応は、WTO加盟の先進諸国の猛烈な批判を招く結果で終わったが、「大衆資本家」たちが暴走すると規制当局も手をこまねくばかりであることが如実に示された事例としてじつに興味深い。WTO加盟に際して「市場経済国」と認められていない中国である。猛烈なレアアース採掘が環境破壊につながっている点も看過できないことである。 

「大衆資本家」社会の実現には、経営者の共産党参加への道を開いた江沢民の政策の意味も大きい。企業内に共産党員がいるのが中国企業のガバナンスの実情だが、経営者の共産党参加が実現したことにより、民間企業内の二重権力が解消したことがメリットであった。一方では、中国の救いがたい汚職と腐敗体質を招く結果となったのではあるが・・・。

このように、現実の動きに押されて現状追認する傾向にあるのが規制当局の反応であり、国有企業中心の中国経済に風穴を開けているのが実態である。無数の「大衆資本家」たちの動きは、いわゆる「国家資本主義」をくつがえす可能性があるのではないかと著者は指摘している。

そう考えれば、中国共産党以後の中国のカギを握るのは、起業家マインドに満ちた「大衆資本家」たちがその担い手の一部となるのかもしれない。

 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)の続編ともいうべき内容。前著同様、というより前著以上に面白い。知的刺激に満ちた一冊である。





目 次

はじめに
第1章 草の根資本家のゆりかご・温州
第2章 ゲリラたちの作る携帯電話
第3章 太陽電池産業で中国が日本を追い抜いたわけ
第4章 大衆資本主義がもたらす創造と破壊
第5章 中国経済と大衆資本主義
おわりに-「中国夢」に日本は何を学べるか?
あとがき
参考文献

著者プロフィール


丸川知雄(まるかわ・ともお)
1964年東京都生まれ。1987年、東京大学経済学部卒業。同年アジア経済研究所入所。2001年4月より東京大学社会科学研究所助教授、2007年4月より同教授。著者に『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)ほか。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの追加)。



*「山塞企業」モデルについて解説されている


<ブログ内関連記事>

製造業ビジネスモデルの変化

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどうかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明
・・米国製造業のアウトソーシング先としての、中国における台湾のEMS企業

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために


中国の科学技術

書評 『「科学技術大国」中国の真実』(伊佐進一、講談社現代新書、2010)-中国の科学技術を国家レベルと企業レベルで概観する好レポート
・・「学問研究や科学的探求に不可欠な自由闊達な意見表明を行いにくい中国共産党統治下の政治風土にまで踏み込んで言及しているのは、著者が外国人であることのメリットだろう。科学(サイエンス)と技術(テクノロジーおよび工学 エンジニアリング)の違いがそこにはある。 現在の中国では「創新」が強調されているが、世界を変えるようなほんとうの意味でのイノベーションは不可能である。なぜなら、体制の安定を揺るがすような価値観変容をもたらす「恐れ」があるから、どうしても委縮しがちだ。しかも、不正監視機能の弱さという問題も存在する」

書評 『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダン・セノール & シャウル・シンゲル、宮本喜一訳、ダイヤモンド社、2012)-イノベーションが生み出される風土とは?
・・一党独裁の共産主義中国とは対極の独創性の宝庫イスラエル


「一党独裁」を支えるチャイナマネー

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態
・・中国経済の中心は国営企業。ロシアと同様、「国家資本主義」(=新・重商主義)で経済を政治の手段として使用する中国共産党

中国経済の将来

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論

「稲盛哲学」 は 「拝金社会主義中国」を変えることができるか?

(2016年7月24日 情報追加)


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2012年12月22日土曜日

書評『日本式モノづくりの敗戦 ー なぜ米中企業に勝てなくなったのか』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)ー 産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために


耳触りの悪い発言は聞きたくないという人は、この本は読むのをやめたほうがいい。しかし、なぜ日本が不調なのかその理由を理解したうえで、これからの方向を考えたい人には読むことを勧めたい本だ。


従来型のものづくりがなぜダメになったのか?

本書では、日本企業と日本経済にかんする、さまざまな「常識」がひとつひとつ解体されていく。

副題にある「なぜ米中企業に勝てなくなったのか」に注目していただきたいのは、経済体制の異なる米国と中国ではあるが、これから10年後、20年後を考えると、米中は世界経済の二強になるだけでなく、産業特性からみても、じつは親和性が高いということに着目する必要があるからだ。

つまり、日本企業がこれまでしがみついてきた「すりあわせ」、「顧客囲い込み」、あるいは「垂直統合」といった成功モデルが、あきらかに敗退しつつあるのに、敗者になったことも認めようとせず、敗因を直視しようとしないことが問題なのである。ガラパゴス化とはまさにそのことを指している。

海外にいかなければ気がつくことさえない携帯電話やスマートフォンの SIMロックの存在など、ガラパゴスの最たるものだ。もちろん、わたしは海外でも使用するために SIMロックは解除してもらい、現地の通信会社が提供する低価格の通信を利用している。

アップルの iPhone というスマートフォンや iPad というタブレットなどの「革新的製品」に人気が集まり、その結果、世界的な高収益をあげているのは当然なのである。国境を越えた世界製品として消費者に受け入れられているわけだ。

そのアップルとその主要な製造委託先である台湾のフォックスコン(ホンハイ)が採用しているオープンシステムのほうが優勢性がある。これが「米中企業」の端的な事例である。

製造機能をもたないアップルはいわゆるファブレスメーカー受託製造に特化しているフォックスコンはEMSと呼ばれるビジネスモデルである。アップルに限らず、すでに欧米の製造業は、製造機能を新興国の製造業に依託して協調し、日本の製造業を追いつめる方向に向かっているのである。

野口氏は、『クラウド「超」仕事法-スマートフォンを制する者が、未来を制する-』(野口悠紀雄、講談社、2011)のような「知的生産の方法」でも一家言を有している人だから、さすがに情報機器については細かいことまでかなり詳しい。

自動車産業においては「すりあわせ型」のものづくりと、垂直統合型の産業構造が適しているという側面はあるが、電気自動車においては「モジュール型」のオープンシステムで動いているのも実態である。

競争条件が変わったことに対して、あまりにも鈍すぎるのが本部の判断。つよい「現場」と裏腹の関係にあるのがよわい「本部」だが、日本にも内部昇格者だけでなくプロの経営者が必要だという野口氏の意見には賛成だ。日本に限らず、内部の人間は抜本的改革は実行しにくい。


産業転換を迫られている日本はどうすべきかなのか?

日本の製造業の現状をさして、「農業化」という表現がされている。

雇用調整補助金などで過剰雇用を支え、競争力を失いながらも生き延びている姿は、国際競争力のない農業と変わらない。なるほどと納得させられるものがある。

産業転換期にはセーフティネットも必要だが、企業倒産によって他産業に人材が流出していくのは、わたしもその一人だが、かならずしもネガティブな話ではないと思う。

その意味では、先日の総選挙で政権交代がふたたび行われていたが、あたらしい政権が採用する予定の経済政策は、産業構造転換を促進する方向のものではないと言わざるを得ない。

重要なことは海外資産の蓄積が所得収支の増大をもたらしているという点だ。すでに所得収支のほうが貿易収支を上回っているのが日本の現状である。これについては、書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012) も参照。だから、個別企業の合理的選択である製造業の海外移転そのものは問題ではないのである。

ただし、新興国市場にかんしては、現地の安い生産コストを利用した製造業と、実質的には低所得者層がマジョリティである現地市場での販売は区分して考えたほうがいいことは言うまでもない。低価格戦略を採用して現地市場でシェアを取るかどうかは、個別企業によって戦略は異なるだろう。

問題は日本国内である。製造業の雇用削減で失われた雇用を、いかに成長分野で吸収していくかという課題だが、これについては、ないものねだりはやめるべきだろう。日本からは、グーグルもアップルも生まれてくるとは考えにくい。すくなくとも経済政策のなかからはうmれてこない

また金融についても、米国のような直接投資タイプの金融業が育つとは考えにくい日本が「金融立国」となるのは見果てぬ夢で終わることだろう。

といっても、ではどうすべきかという議論は、なかなか立てにくい。なぜなら現実の動きのほうが激しいからだ。

ビジネスパーソンとしては、あくまでも個別企業の観点にたって、当事者としての意思決定の精度を高めることに注力すべきである。


新興国の知識人材の活用は不可欠だ

本書の中国経済にかんする分析も面白い。大学教授という視点から、知識経済の担い手にかんする分析は読ませるものがある。

中国の大卒者を知識労働者として活用せよという提言は賛成だ。これは中国ビジネスとは切り離して考える必要がある。つまり中国ビジネスの担当者として中国人の知識人材を採用するのではなく、基幹となる人材として活用するのである。

本書では視野にないようだが、日本語の習得の早いミャンマー人も同様だろう。その動きはIT業界ではすでに活発化している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本書の特徴は、コトバによる誤解や錯覚に陥らないように注意を促している点だ。たとえば、中国のGDPは日本を抜いたが、一人当たりGDPでは現時点では日本の・・・・・にしかすぎないこと、新興国における中間層は所得レベルでいえば日本の低所得者層に該当することなど、だ。

「週刊東洋経済」の連載を単行本としてまとめたものなので、執筆時点と出版時点でのタイムラグがあるのはやむを得ない。現時点とはややそぐわない面もなくはないが、本書で展開されているロジックはしっかりとつかんでほしいと思う。

日本が生き延びるためには、産業転換は避けて通れない課題であるからだ。量産型のものづくりが海外に移転したあと、どうやって食っていくかが問われているのである。





目 次

はじめに
第1部 新しい潮流
-第1章 アップルは製造業のビジネスモデルを変えた-スマイルカーブとファブレス企業
-第2章 日の丸エレクトロニクス敗退の原因-円高でなく垂直統合が問題
-第3章 巨大EMSというバケモノ-重要なのは低賃金でなく、社会の生産体制
-第4章 若い企業と新世代が中国を変える-質の高い企業と人材が中国に誕生
第2部 旧体制の強固な岩盤
-第5章 垂直統合・系列・蛸壷社会-縦割り蛸壷が並存する日本社会
-第6章 系列解体後に中小・零細企業はどうなる?-グローバル水平分業の一員となれるか
-第7章 旧体制が支配する中国の金融-権力と既得権益の巣
-第8章 金持ちなのに弱い日本の金融力-直接金融と投資銀行業務での日米格差
第3部 未来への戦略
-第9章 新興国とどう向きあうか-価格競争は間違い。ブランドを使え
-第10章 改革の推進主体は、政府でなく経営者-市場が改革方向を示す
-第11章 人材開国で日本を活性化-高度専門人材を受け入れよう
図表一覧
人名索引
事項索引


著者プロフィール

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年東京生まれ。1963年東京大学工学部卒業。1964年大蔵省入省。1972年エール大学 PhD.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主要著書『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経・経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年、東京海上各務財団優秀図書賞、日本不動産学会賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<ブログ内関連記事>

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『ものつくり敗戦-「匠の呪縛」が日本を衰退させる-』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)-日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」。問題は製造業だけではない!

書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『チャイニーズ・ドリーム-大衆資本主義が世界を変える-』(丸川知雄、ちくま新書、2013)-無数の「大衆資本家」たちの存在が中国の「国家資本主義」体制の地盤を堀崩す
・・依然として国営企業のウェイトの高い中国経済だが、下からの起業家の動きにも注目する必要がある

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

ドイツが官民一体で強力に推進する「インダストリー4.0」という「第4次産業革命」は、ビジネスパーソンだけでなく消費者としてのあり方にも変化をもたらす

(2014年8月18日、2016年7月24日 情報追加)


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2011年2月4日金曜日

書評『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ




日本側スタッフによって再編集された日本語版は単なる翻訳でなく付加価値が高い

 「リーマンショック」後、製造業の世界でいえば「トヨタショック」後(・・といっても、米国で発生した品質問題ではなく、その前に顕在化した販売数量の激減を指す)、製造業をめぐる環境も激変した。一言でいったら、全世界的に可処分所得の減少によって、モノに対する需要が激減したのだ。

 こういった状況のなか、新興国、とくに中国とインドの製造業の急速な台頭は、欧米や日本など先進国の製造業にとっての真の問題となりつつある。
 その心は、国内市場がまだまだ小さい新興国の製造業によってもたらされている、全世界的な供給過剰問題とそれにともなう市場価格低下傾向なのである。

 ある意味では、かつて日本企業が欧米企業に対してチャレンジした内容が、はるかに大規模に新興国によって日本企業に対して行われているということでもあり、「禍福はあざなえる縄の如し」という感想を抱く。
 それととともに、本書の欧米企業にかんする記述を読んでいると、日本の製造業はすでに衰退している欧米の製造業の後追いをしているのかという、いやな予感さえ感じるのである。
 日本の製造業にとって、真のライバルは欧米の製造業よりも、新興国の製造業なのである。

 とくに、第3章「日本型製造観-なぜ戦略がなかったのか」における問題分析は読む価値がある。この章では、日本の製造業(・・もちろん対象は外資系コンサルのブーズ・アレンがクライアントと想定している大企業だが)が、なぜ戦略なしでこれまで成功してきたかについてきちんと整理しているからだ。現在の状況下においては、過去の成功要因がことごとく失敗要因に変化しており、いわゆる「成功のワナ」というヤツに捕らわれているのが日本企業の現状だ。正確な問題分析を抜きに処方箋は書くことができないので、この章だけでも読む意味はある。

 第5章「日本メーカーへの処方箋」は、第3章における問題分析を踏まえての処方箋だが、もはや「リーマショック」以前の「円安バブル」再来が期待できない以上、「ものづくり神話」にこだわるのをやめ、構造的な低収益体制から脱却するための方策として、不採算の製品(群)や事業からの撤退とモジュール化による製造アウトソーシングの活用、それと同時に長期的に儲かる事業分野にシフトし、製造機能以外の強みを活かして付加サービス機能での収益力を強化することなどが提言されている。

 個別企業の状況を踏まえた提言ではないので、きわめて一般的なものにとどまっているが、「増築や改築を重ねた温泉旅館」のような日本企業だから本館と別館を切り離すのが困難だ、といったいい訳に逃げることなく、撤退と新規分野進出を同時にすすめ、新興国市場攻略と新興市場企業との競争と協調を徹底的に考えて実行することが必要になっていることは、否定できる人は多くないだろう。

 すでに欧米の製造業は、製造機能を新興国の製造業に依託して協調し、日本の製造業を追いつめる方向に向かっている。

 いまや日本の製造業は、欧米製造業を他山の石としつつ、自ら戦略をたてて運命を切り開く状況にあるのだ。外資系コンサルによるものだからと敬遠せず、製造業関係者だけでなく、日本の未来について考える人は、一度はざっと目を通すことを奨めたい。

 2008年に米国で出版された原著を詳しく見ていないので確かなことはいえないが、この日本語版は日本のスタッフによって加筆されて再編集されており、日本の製造業関係者にとっては付加価値の高い一冊になっているといえよう。


<初出情報>

■bk1書評「日本スタッフによって再編集された日本語版は単なる翻訳でなく付加価値が高い」投稿掲載(2010年10月16日)
■amazon書評「日本スタッフによって再編集された日本語版は単なる翻訳でなく付加価値が高い」投稿掲載(2010年10月16日)

*再録にあたって、字句の修正を行った。




目 次

第1章 日本型製造観と欧米型製造観―どちらが勝つのか
第2章 欧米型製造観-なぜ弱体化が進行したのか
第3章 日本型製造観-なぜ戦略がなかったのか
第4章 欧米メーカーへの処方箋
第5章 日本メーカーへの処方箋


著者プロフィール

カジ・グリジニック(kaj Grichnik)

ブーズ・アンド・カンパニー ヴァイス・プレジデント。製造業改革を得意とする。製薬、食品、自動車、航空機産業などの製造業を主な対象とし、過去10年間で350以上の工場を訪問してきた。ブーズ・アンド・カンパニー参画前は製薬業界のサプライヤーCRL勤務。MITスローンスクール経営学修士課程修了(MBA)、地質学とミクロ経済学の修士号も有する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

コンラッド・ウィンクラー(Conrad Winkler)

ブーズ・アンド・カンパニー ヴァイス・プレジデント。製造業の戦略、改革、サプライチェーンマネジメントなどを専門とする。ブーズ・アンド・カンパニー参画前は米国海軍原子力潜水艦員を務める。MIT機械工学科卒、ノースウエスタン大学製造業プログラム(ケロッグ経営大学院とマコーミック工学/応用科学大学院の共同プログラム)修士課程修了(MBA)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

ジェフリー・ロスフェダー(Jeffrey Rothfeder)

ブーズ・アンド・カンパニー ビジネス誌『strategy+business』編集主幹。ビジネス誌記者・編集者として豊富な経験を有する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 英語版タイトルの Make or Break は、「のるかそるか」という意味のようだが、これは会計学でいうMake or Buy の意志決定も踏まえた表現であろう。

 Make or Buy とは、「自社で内製化して作る」か、あるいは「外注先にアウトソーシングして購入する」かという二者択一の意志決定のことを指している。

 その意味では、Make or Break とは、製造機能を自社内に持ち続けて製造を続けるか、それとも破壊か、という意味である。


<関連サイト>

ブーズ・アンド・カンパニー
・・2008年にブーズ・アレン・アンド・ハミルトンから民間コンサルティング部門をカーブアウトさせ独立。ブーズ・アレンはテクノロジー系企業のコンサルティング・ファームとして世界的に有名。米国防省(DOD)からの受託案件が多かったので民間部門は分離させた。



<ブログ内関連記事>

「円安バブル崩壊」(2009年5月4日)
・・このブログでいちばん最初に投稿した記事で、野口悠紀雄の『世界経済危機-日本の罪と罰-』 ( ダイヤモンド社、2009)を踏まえた所感を述べている

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明
・・まさにアップルこそ、この事例

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには
・・「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。(自動車は垂直統合型ゆえクローズドになりやすいが電気自動車はモジュール型)

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『中国絶望工場の若者たち-「ポスト女工哀史」世代の夢と現実-』(福島香織、PHP研究所、2013)-「第二代農民工」の実態に迫るルポと考察

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ

(2014年8月18日 情報追加)

   


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2010年2月9日火曜日

書評『現代中国の産業 ー 勃興する中国企業の強さと脆さ』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには




「垂直分裂」というキーワードでみた中国企業の強さと弱さ

 実に知的刺激に富んだ中国産業の分析書であり、知見に富んだ経営書でもある。

 「世界の工場」となった中国製造業の特徴が最もよく現れているのが家電産業、IT関連産業、自動車産業であるが、著者はこの3つの産業について、設計と製造の観点から詳細な事例分析を行い、中国製造業の強さと弱みを明確に整理して示してみせた。

 著者が駆使するキーワードはずばり「垂直分裂」だ。正直いって聞き慣れないコトバである。「垂直統合」なら、ビジネス関係者であれば昔から比較的聞き慣れてきただろうが、「垂直分裂」とはいったい何か?

 垂直分裂とは、垂直統合のまったく反対の概念である。

 製造プロセスをモジュールごとにバラバラに分解し、こういったモジュールや基幹部品ごとに特化した専業企業が、市場で激しい競争を行っている状態を指している。消費財メーカーは、完成品としてのモジュールを外部から調達し組み立てた上で、自社ブランドをつけて消費者向けに市場で流通させるわけだ。

 これにより消費財メーカーは、製品企画、全体設計、モジュール調達に特化し、徹底的なコストダウンが可能になる。勝敗を決めるのは消費市場でのマーケティング力である。これは、テレビでも、携帯電話でも、PCでも同じだ。

 中国で主流になっているのは、こういった「モジュール型」製造業であり、これをフルに活用した消費財メーカーである。日本のお家芸であった「すりあわせ型」(インテグラル型)製造業ではない。最近では、電気自動車(EV)では、すでに中国メーカーが世界市場に名乗りをあげているが、背景にはこういった状況があるのだ。

 日本のメーカーの多くが中国で苦戦している理由の一端がこれで説明される。しかしながら、キーデバイスの分野では「黒衣」に徹し、中国企業に伍して成功している日本企業もあるようだ。インテル・インサイドのような存在になれれば、日本企業にも生き残る道もある、ということなのだ。

 消費財分野では目に見えにくい、産業財分野でのこうした動きをしっておくことは、これからの事業戦略を考える者にとって不可欠の基礎知識となっているといってよい。出版から2年近くたっているが、分析のフレームワークそのものはきわめて有効である。

 事例がふんだんに示されており、印象と違って比較的読みやすい新書本である。この本をよむと、間違いなく少し賢くなったような気持ちになるはずだ。

 必読の経営書である。


<初出情報>

■bk1書評「「垂直分裂」というキーワードでみた中国企業の強さと弱さ」投稿掲載(2010年2月5日)





<書評への付記>

「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには


 「垂直分裂」というコトバが定着したものかどかはわからないが、きわめて重要な概念である。この考え方が成り立つには、「ものつくり」において、設計上の「オープン・アーキテクチャー」という考え方が前提となる。
 「オープン・アーキテクチャー」(Open Architecture)とは、「クローズドな製品アーキテクチャー」の反対概念で、外部に開かれた設計構造のことであり、代表的な例が PC である。
 PC を一番最初に開発した IBM は、設計情報を公開し、CPU はインテルから、OS は MS(マイクロソフト)から購入していた。CPU も OS も外販されているにで、誰でも入手できることから IBM-compatible(コンパチ)という形で、互換性のある部品を使用した類似製品が大量に出回るようになり、ついには PC はどこのメーーの製品であってもたいした違いがないという状態、すなわち「コモディティ」と化してしまったのである。いわゆるウィンテル(Wintel=Windows + Intel)化現象である。

 このように、部品を外部調達して組み立てれば製品ができあがるわけであり、似たような製品が、異なるブランドをつけて市場に出回ることになる。極端な話、差異はただ単にブランド名だけであり、価格競争に巻き込まれて、一気に競争力を失ってしまうという弱点がある。これは完成品メーカーの抱える大きな問題であり、かつてよくいわれたように、「パソコンも ソフトがなければただのハコ」である。
 製品差別化は、外観のデザインや内部にインストールされたソフトウェアによってのみ可能であり、ここで付加価値をつけることによって、消費者に訴求することができる。この段階でモノをいうのは、製品ブランド力を含んだ、広義のマーケティング力であり、製品の性能そのものではなくなっている。
 そして製品そのものの性能を左右するのは、インテルのようなキーデバイスである。インテル・インサイド(Intel inside)というプロモーションが象徴的に示しているように、カギを握っているのは完成品メーカーではなく、キーデバイスやモジュールを生産している、見えないところでモノをいうメーカーなのだ。主導権はすでに完成品メーカーにはないのである。
 ちなみにインテル・インサイドは、そもそもインテル日本法人が世界にさきがけて始めたキャンペーンで、昔は「インテル、入ってる」という韻を踏んだフレーズの CM を流していた。これはよい、ということになって全世界で採用されるに至ったのである。

 最近、よく話題になる電気自動車(EV:Electric Vehicle)は、こうした「オープン・アーキテクチャー」型製品の最たるものである。男の子であれば、かつて小学校の夏休みの工作で、電気自動車の模型など何度もつくったことがあるはずだ。極端な話、バッテリーとモーター、ギアと車輪さえあればクルマになる。内燃機関とは桁違いの単純な構造であり、しかも部品は外部から出来合いのものを買ってくればよい。電気自動車にとってカギを握るのは、バッテリー(蓄電池)である。これをいかに小型化し、軽量化するかがモノをいう。
 電気自動車は米国のベンチャーだけでなく、なんと無名の中国メーカーも試作品を製作しているが、実はカギとなるバッテリーの分野では、圧倒的に日本メーカーが強いのである。パナソニック、三洋電機、ユアサ・・・などなど。最終製品にブランド名が登場しなくても、目に見えないところで強みを発すればいい。これが賢い生き方だ。名をとるよりも実を取れ。

 そもそも家電や PC の世界では、メーカー間で、部品を融通したり部品の共通化がかなり進んでおり、ある意味では「競争と協調」(compete and cooperate)は当たり前となっている。私が以前使っていた、パナソニックの Let's Note が故障したので、HDD をみたところ、Made in the Philippines の Toshiba 製だった! なんてことはよくあることなのだ。こういった事情については、すでにこのブログでも「台湾メーカーのミニノート購入」という記事のなかに書いた。

 消費者としての一般人は、消費財(consumer goods)としての最終製品しか見る機会がないだろうが、産業財(industrial goods)である部品やモジュールという世界は実に奥が深い。
 たまには、故障して使用不能となった家電製品やパソコンを自分で解体してみるとよい。設計の世界では、こうした行為を「リバース・エンジニアリング」(reverse engineering)といって、競合他社製品の分析を行う際にどこの会社でも行っていることだ。

 常識にとらわれていては、見えるものも見えてこないという実例である。まあどんな業界でも、インサイダーであれば知っている話ではあるが。



<追記> (2010年5月10日)

 <書評への付記>のなかで、電気自動車の蓄電池(バッテリー)に関しては、日本企業に優位性があると書いているが、ここのところ米中接近によって、急速に業界地図が書き換わる可能性がなくはない。

 「NHKスペシャル|自動車革命 次世代カー 電池をめぐる闘い」が「自動車革命」シリーズの一つとして放送された(5月9日21時)が、このなかで中国の電池メーカーと米国企業がアライアンスを組んで動いていることが取材されていた。
 この番組にかんする感想をツイッターに投稿したので、ここに再録しておく。

  
「NHKスペシャル自動車革命 次世代カー 電池をめぐる闘い」。太陽光発電と電気自動車とバッテリーでアフリカ市場を制覇しようという壮大なビジョン、中国人は考えるスケールがでかい。これでいいのかニッポン!!
                  
「NHKスペシャル自動車革命 次世代カー 電池をめぐる闘い」。米中がタッグを組ん電気自動車のバッテリー覇権を確立する戦略、高品質にこだわる日本メーカーは再び半導体の轍を踏む危険ありか?ローエンド市場から参入して市場を制覇、その後に日本企業を買収して時間を買うのではという懸念・・・

最近の中国企業がやっていることは、日本企業が1980年代までやったことの忠実なTTP(パクリ)なのではないかと思われて仕方がない。ローエンドから市場参入して既存のプレイヤーを市場から駆逐、そしてミドルエンドからハイエンドに上昇していく戦略だ。やばいぞニッポン!!


 ツイッターに投稿した上記の懸念が実現しないことを祈るばかりだ。

 (2010年5月10日記す)


<ブログ内関連記事>

書評 『チャイニーズ・ドリーム-大衆資本主義が世界を変える-』(丸川知雄、ちくま新書、2013)-無数の「大衆資本家」たちの存在が中国の「国家資本主義」体制の地盤を堀崩す
・・『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』の著者の新著


■世界の製造業ビジネスモデルの変化

「円安バブル崩壊」(2009年5月4日)
・・このブログでいちばん最初に投稿した記事で、野口悠紀雄の『世界経済危機-日本の罪と罰-』 ( ダイヤモンド社、2009)を踏まえた所感を述べている

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『中国絶望工場の若者たち-「ポスト女工哀史」世代の夢と現実-』(福島香織、PHP研究所、2013)-「第二代農民工」の実態に迫るルポと考察

(2014年8月18日、2016年7月24日 情報追加)



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