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2011年1月6日木曜日

アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみよう





 今年(2011年)の正月は、連続テレビドラマ『フリーター、家を買う。』(2010年放送)にすっかりはまってしまった。

 昨年の本放送は見てなかったので初めて見たことになるが、正月2日と3日の二日にわたって全11回が再放送されたので、ぶっつづけで見てしまった。 

 2010年には二年連続でもっとも売れたジャニーズ系のグループ「嵐」、そのメンバーの一人である二宮和也が主演を演じた社会派ホームドラマである。

 何をやってもうまくいかないし長続きしない、自分の居場所を見つけることのできないという、どこにでもいそうな自信をもてない若者を好演した二宮和也。
 世間体ばかり気にする、不器用で口べたな経理部長の父親を竹中直人、ウツ病に苦しむ専業主婦の母親役に浅野温子とベテラン俳優で固めただけでなく、医者と結婚して嫁姑問題に苦労する姉をグラビアアイドル出身の井川遥、アルバイト先に出向で来ている同僚の女性社員をモデル出身の香里奈、と豪華キャストで固めた作品だ。

 原作は読んでないが、このドラマはすごくできがよい。

 登場人物の多くに共感し、感情移入させるものがあるのは、若者も中年も経験している私の年齢もあるだろうが、それだけでなく、現代日本が抱えている問題がすべてといっていいほど、この家族に集約的にあらわれているからだろう。

 ドラマに登場するこの家族は、けっして例外的な存在ではないのだ。

 もちろん、「嵐」が歌う主題歌「果てない空」も実にすばらしい。歌詞の内容と曲がココロに響く。YouTube にアップされている(・・ちょっと音声が大きすぎるので注意)。


アルバイト先で経営者から声をかけられて正社員になるということは、実質的に「インターンシップ」期間を過ごしたことに等しい

 新卒入社でせっかく入った会社を三ヶ月で止めてしまった主人公の若者。

 ウツ病に苦しむ母親を救うための引っ越し費用として、100万円ためる目的で選んだ肉体労働だったが、結果として長く続いたアルバイト先の小さな土建会社に、社長から声をかけられて正社員として入社することを決断する。

 アルバイトが、実質的に長めのインターンシップとなったわけだ。

 カラダを使う仕事をアルバイト先に選んだのがよかったのかもしれない。OA化がほとんど進んでいない職場では人間疎外などいっさい存在せず、社長以下すべてが仲間である。

 比較的小さな職場は「目の届く範囲」なのである。もちろん、小さな職場にもメリットとデメリットの双方がある。この若者にとっては、それがプラスに働いたのである。

 学校から職場へスムーズに移行することができず回り道になったが、アルバイトを続けていくことで、人生において働くことに意味を体感した若者が、やっと社会に自分の居場所を見つけて生きていくことができるようになる。実にリアリティがあるドラマである。

 このドラマは主に若者の目から描いたものだったが、経営者の立場からアルバイトから正社員を採用する会社もある。

 アパレルのGAP(ギャップ)やヴィレッジヴァンガードなどの企業である。ゲーム業界もプログラマーをアルバイトとして使い、そのまま居残って正社員になる者もでてくる。アルバイトであろうが正社員であろうが、労働形態にはほとんど違いがない。

 要は、実際に働いている姿を見ないと、経営者側からみたらその人がもっているポテンシャルなんてわかるはずはないからだ。きわめて現実的な考えであるといえよう。
 
 現在日本でも拡がり始めた「インターンシップ」だが、大半の企業ではたかだか2週間程度で、とてもインターンシップ本来の趣旨とはほど遠いのが現実だ。会社説明程度で2週間などあっという間に終わってしまう。

 だったら、そんなキレイごとのインターンシップではなく、戦力として働いてもらわなければ困ると考えるのは、経営者とくに中小企業の経営者なら当然だろう。


「インターンシップ」とは、本来は「試用期間」のことなのだ

 「インターンシップ」(internship)の「インターン」(intern)とは、医者の世界では研修医のことだ。だから、見習いのことである。

 弁護士の世界では見習いのことを「アプレンティス」(apprentice)という。西洋の職人の世界では親方をドイツ語でマイスター(・・英語ではマスター)というが、見習いのことをアプレンティスといってきた名残りである。

 「インターンシップ」というとカタカナ語でなんだか響きはいいが、人事労務用語でいう「試用期間」と本質的には同じといってもいいかもしれない。

 どこの会社でも「就業規則」があれば、労働基準法コンプライアンスで「試用期間は3ヶ月から半年のあいだ」で設定している。
 法律的には試用期間中に解雇しても問題はないはずだが、そのむかしの「グルーミー判決」などの労働判例があって、実際にはそう簡単に本採用を拒否して解雇することは難しい。ブラック企業扱いされたのでは、企業の評判にかかわってくるからだ。

 それなら、アルバイトやパート社員、あるいは派遣社員として働いて貰ってから、適性を見極めたうえで正社員に転籍してもらうというのが実際的だ。

 事務職員は、まず派遣会社に依頼して派遣してもらい、その後働きがよければ転籍して社員になってもらうことも、中小企業ではよくやっていることだ。
 これも実質的に「試用期間」といっていいだろう。嘱託も同じである。
 
 経営者だって、社長含みで役員として入社ということもよくある。しかし、約束が実行されないことも多々ある。従業員ではないので、雇用契約ではないので解雇は容易だからだ。

 要は、経営者の側から見れば、実際の働きをみて正社員として適性があるかどか判断したいわけだ。働く側からみても、けっして悪い話ではないと思う。結果を出すということは、実社会ではきわめて重要なことだ。
 
 企業文化や組織文化というものは千差万別で、実際にそのなかに入って働いて体感しないとわからないことがきわめて多い。

 難しくいえば、外部観察者には見えないものが、内部観察者にはよく見えるということだ。それがかなり主観的なものであったとしても。


士官以上と下士官以下のギャップを埋める方法-イスラエル国防軍のケースを考えてみる

 人材採用にかんする参考としては、イスラエル国防軍(IDF)のケースが参考になるかもしれない。イスラエル国防軍はきわめて例外的な存在であるので、まず一般的な軍隊システムについて見ておこう。

 一般にどこの国でも軍隊は階級制度で運用されている。士官以上は少尉から始まって大将まで(・・元帥はめったに出ない)。下士官以下は、伍長以下二等兵まで。

 これは実際の運用において、下士官以下の兵が徴兵であるか志願兵であるかにかかわらず、士官以上はすべて志願制で、指揮をとるリーダーとして別体系で教育されることになっている。これはそのほうが効率がいいからだ。
 
 だが、実際問題として、古参の下士官よりも若い士官が指揮をとることが多い。これはむかしから戦争文学や戦争映画ではおなじみのテーマであるが、階級が上である新任将校と、若造の言うことには面従腹背という下士官との軋轢が、戦時には悲劇を生みがちなことは、マンガ家水木しげるの戦記物にはよくでてくる。

 この軍隊システムは、シビリアンの世界でも、とくに役人の世界では上級職と中級職以下という形で、俗にいうキャリア組とノンキャリ組みとのあいだの相互依存関係と心理的ギャップに端的に現れている。

 民間企業でも歴史のある大企業では、生産現場と事務方とは完全に別体系になっている。人件費と労務費というのは経理上の費用項目の違いだけでなく、人事労務管理の体系において別扱いになっていることも多いのだ。

 イスラエル国防軍に話を戻すと、イスラエルでは、大抵の国で行われている、下士官以下の兵と将校以上とはまったく異なる教育システムによって養成するという方法をとっていない。

 国民皆兵の国であるイスラエルでは、一部の例外を除いて、徴兵によって兵役期間満了まで勤め上げることが国民の義務であるが、優秀な兵士のなかでこれはと目星をつけた者に、兵役満了後に軍に残って将校になる道を選択させる形で、将校のリクルーティングを行っている。

 つまりイスラエル国防軍においては、将校はすべて兵から上がってきた者だけなのである。
 このような軍隊においては、将校以上と下士官以下のギャップはきわめて小さいだろう。

 さらにいつ国がなくなってもおかしくないような小国イスラエルでは、その他の国と比べて国防意識がきわめて高いこともあげられるだろう。国の規模がもつ意味である。

 イスラエルという国のレゾンデートル(存在意義)と国防軍のミッションは合致しているということだ。


「現場」重視は抽象論ではダメ-いかに「現場」と本部のギャップをミニマムにするか

 たとえば映画製作の世界では、なによりも現場体験が重要であろう。

 もちろん映画製作のためのコースを設置している大学もあるし、大学でプラクティカルな授業を学ぶことの意味は大きい。しかしそうはいっても、学校と現場は似て非なるものだ。

 巨匠スピルバーグ監督も、高卒後アルバイトからキャリアを始めている。

 ヨシギュウの愛称で知られる牛丼の吉野屋でも、現在の社長はアルバイト出身である。高卒でミュージッシャンになる夢を抱いて上京した若者は、吉野屋でアルバイトとして働いていた。働きぶりを買われて正社員になり、そしてミュージシャンの道は断念したが社長になった。

 こういう社長は現場を熟知しているので、末端のアルバイト社員との意識のギャップは限りなく小さいだろう。

 「現場」体験は重要だが、もちろんすべての社長がアルバイト出身でなければならないなどと言うつもりはまったくない。多くの会社で、新卒はまず現場で研修をすることが多いから、結果としては同じである。 

 また、「現場」は重要だが、「現場」特有の狭い視野に陥ってしまっては、かえって逆効果のこともある。


 従業員の立場からみたインターンシップとしての「現場」でのアルバイト、経営者の立場からみた「現場」。

 意味するところはイコールではないが、アルバイトをちょっと長めの「インターンシップ期間」と捉えてみることは、従業員と職場のミスマッチを防ぐ意味で、働く側にとっても、雇う側にとっても、ハッピーな結果をもたらす可能性が高いといっていいのではないかと思う。

 一つの方法論として、考えておきたいものだ。

 なにごとも実際に体験してみないことには、ほんとうのことはわからないのではないだろうか。イマジネーションも実際の体験があってこそ、自由に働くようになるのである。





<関連ウェブサイト>

ドラマ『フリーター、家を買う。』
(フジテレビのオフィシャルサイト)

10年後、「無業」に陥らないため今すべきこと城繁幸と西田亮介、「若者と仕事」を語る(後編) (東洋経済オンライン編集部、2014年9月24日)
・・「西田: 実際、無業状態から回復していく人の行き先としては、中堅、中小企業が多いといわれています。日本では中堅・中小企業の社会的地位が低すぎるのだと思いますね。そもそもその存在があまり知られていません。それから、市民社会と企業社会の距離も遠すぎる。うまく地域社会に根ざしたNPOなどが間に入って、企業と働く人とのコミュニケーションを取り持っていけるようになればよいですね。・・(後略)・・」

(2014年9月24日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

働くということの意味

コンラッド『闇の奥』(Heart of Darkness)より、「仕事」について・・・そして「地獄の黙示録」、旧「ベルギー領コンゴ」(ザイール)
・・・「なにも僕が仕事好きだというわけじゃない。・・(中略)・・ただ僕にはね、仕事のなかにあるもの--つまり、自分というものを発見するチャンスだな、それが好きなんだよ。ほんとうの自分、--他人のためじゃなくて、自分のための自分、--いいかえれば、他人にはついにわかりっこないほんとうの自分だね。世間が見るのは外面(うわべ)だけ、しかもそれさえ本当の意味は、決してわかりゃしないのだ (中野好夫訳、岩波文庫、1958 引用は P.58-59)
書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・

(2014年8月29日 情報追加)


(2012年7月3日発売の拙著です)









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