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2022年7月14日木曜日

書評『現代ロシアの軍事戦略』(小泉悠、ちくま新書、2021)― ロシアの軍事戦略を理解することは、日本人にとってきわめて重要だ

 

 昨年5月に出版されたが、読む機会を失したままになっていた『現代ロシアの軍事戦略』(小泉悠、ちくま新書、2021)をようやく読了。 先月終わりのことだ。

本というものは、読むタイミングも重要であるが、ロシアが無謀な戦争に突入して、ロシア軍が抱える問題が明るみになった現時点で読んでも、価値が失われていないことを確認した。

2022年2月24日に、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから、本書はベストセラーになっている。各種のメディアで引っ張りだことなっている著者によるものだからだろう。 

TV や YouTube などでの冷静な語り口と同様、本書もまた理路整然とした筆致が読んでいて心地よい扱っている対象が対象だけに、バランスのとれた冷静な姿勢はきわめて重要だ。 


そのスイッチを押したのは、言うまでもなくロシアであるが、小泉氏の前著『「帝国」ロシアの地政学-「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019)で指摘されているように、ロシアはウクライナをみずからの「勢力圏」とみなす主観的な「世界観」をもっている。  

NATOがついに「勢力圏」であるウクライナに手を突っ込んできたと見なしたプーチンにとって、軍事侵攻は、ある意味では当然のリアクションだったのかもしれない。 

だが、第三者的に見たら、中国がベトナムを膺懲(ようちょう)するとして開始した、1979年の「中越戦争」を想起してしまう。手痛い失敗に終わったこの戦争で、人民解放軍の弱さが世界中にさらされる結果となった(・・ただし、この失敗を契機に鄧小平は軍制改革に踏み切った)。 


■ロシアの軍事戦略は古典的なクラウゼヴィッツ型+非クラウゼヴィッツ型

さて、『現代ロシアの軍事戦略』に話を戻すが、第1章から第3章までは、2014年の「クリミア侵攻」にはじまった「ハイブリッド戦争」について論じている。 

その鮮やかな占領ぶりは世界中をあっと言わせたのであり、「ハイブリッド戦争」こそロシアのあたらしい軍事戦略と見なされるようになったのだが、はたしてこれがロシアの軍事戦略のあたらしい方向なのかどうか、について検証している。 

「ウクライナ戦争」は、ロシアの軍事ドクトリンにおいては「地域戦争」と位置づけられるもののようだが、ロシアは第2次世界大戦以後は独ソ戦のような大規模戦争を戦っていない。 この事実はきわめて重要だ。

もし仮に「ウクライナ戦争」が「地域戦争」から拡大して大規模化した場合、ロシアは「大規模戦争」をどう戦うことになるのか? 

著者は2008年以降のロシア軍の「軍事演習」を分析することで、いかなる軍事戦略をとるのかを推測している。この第4章は、いろんな意味で読んでいて興味深い。 

ロシアの軍事戦略は、基本的にクラウゼヴィッツ的な古典的な通常戦を中核としながら、非クラウゼヴィッツ的なハイブリッド戦争的要素をあくまでも補助機能として用いている。これが、本書における著者の結論だ。 

ウクライナ戦争において、ロシアが古典的ともいえる通常戦を遂行していることで、この結論は実証されたことになる。 とはいえ、ロシアは通常戦の展開で大失態をさらすことになってしまった。この事実をどう解釈するか、これは今後の課題となる。 

NATOを中核とする西側諸国に対しては、経済的にも軍事的にも劣勢に立ち、核攻撃能力など一部の分野を除けば、軍事的な優位性をもたない現在のロシアではあるが、ウクライナ戦争の推移を見てロシアは弱いときめつけるのは時期尚早だろう。 

「ロシアは見かけほど強くはないが、見かけほどは弱くない」というビスマルクのことばを想起しなくてはならない。 

「権威主義国家」のロシアは、「西側」からの脅威につねにさらされているとして、その主観的認識においては「永続戦争」を戦いつづけているのである。通常戦に発展しないまでも、サイバー戦も含めたハイブリッド戦争が、今後も継続されると覚悟するべきだろう。 

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を機に、「西側」に属する国家としての位置づけを明確にした日本は、したがってロシアからみたら「敵国」と位置づけられることになった。 敵を知り己を知らば百戦殆(あや)うからず。ロシアについては、今後も正確な情勢把握が必要であることは言うまでもない。 

ロシアの軍事戦略を、軍事オタクとしての狭くて深い知識と、軍事研究者としての幅広い視野で分析をつづけている小泉氏は、じつにユニークな存在だ。今後も時の政治情勢に忖度することなく、精緻な分析と的確な発言を期待したい。 

軍事マターにおいて重要なのは、リアリズムとプラグマティズムである。 
  
  
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目 次
はじめに ー 不確実性の時代におけるロシアの軍事戦略
第1章 ウクライナ危機と「ハイブリッド戦争」
第2章 現代ロシアの軍事思想ー「ハイブリッド戦争」論を再検討する
第3章 ロシアの介入と軍事力の役割
第4章 ロシアが備える未来の戦争
第5章 「弱い」ロシアの大規模戦争戦略
おわりに ー 2020年代を見通す
あとがき ー オタクと研究者の間で
参考文献


著者プロフィール
小泉悠(こいずみ・ゆう)
1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)特任助教。専門はロシアの軍事・安全保障。著書に『「帝国」ロシアの地政学―「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版、2019年、サントリー学芸賞受賞)等。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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2021年4月16日金曜日

書評『プーチンの国家戦略 ― 岐路に立つ「強国」ロシア』(小泉悠、東京堂出版、2016)― 「見かけほど強くはないが、見かけほどは弱くない」等身大のロシアを軍事という側面から把握する

 

 「ロシアは見かけほど強くはないが、見かけほどは弱くない」。ドイツ帝国の鉄血宰相ビスマルクがそう言っていたらしい。なるほど、言い得て妙とはこのことだろう。 

ロシアは、帝国時代から2回の革命(・・ソ連の誕生と崩壊)を経て現在に至っているわけだが、ソ連崩壊から30年近くが経った現在、ふたたび「強国」イメージを確立することに成功したようだ。だが、イメージと実体にはすくなからぬズレがあることもまた事実である。 

そんなロシアを理解するには、さまざまなアプローチがあるが、「強国」イメージをつくりあげているのは、なんといっても軍事的側面である。

かならずしもハードの軍事力そのものではない「ハイブリッド戦争」が中心となっている現在のロシアであるが、「強国」イメージを増強するのに大いに貢献していることは言うまでもない。 

ロシアの軍事研究の数少ない若手研究家が小泉悠氏である。TVなどさまざまな媒体で活発な発言をしており、その知見には学ぶことが多いが、今回はじめてその著書を読んでみた。 


この2冊のタイトルを見ると、重要な概念が盛り込まれていることに気づくはずだ。 

「強国」と「帝国」がイメージであるとすれば、「地政学」と「勢力圏」は、「ユーラシア」にまたがる広大なロシアを統治するための基本的フレームワークにかんする発想であるといっていい。 

ヨーロッパでもありアジアでもある「ユーラシア国家」としての「大陸国家」ロシアは、日本のような「島国」の住人には感覚的に理解しがたいのは当然だ。 

広大な領土に散在する「多民族・多宗教国家」ロシア。そこではどうしても「遠心力」がはたらきがちであり、統一国家として維持しつづけるためには強力な「求心力」が必要となる。でないと、あっという間にバラバラになってしまう危険がある。 

だから、どうしても、広大な土地を統治するのは、ある程度まで権威主義的な指導者が必要である。カリスマ的な指導者と、目に見える軍事力が必要なのである。

経済規模からみたらけっして「大国」ではない現在のロシアに、固有のロジックにもとづく戦略が存在し、ロシアがロシアとしてきわめて合理的な振る舞いをしていることを知れば、けっして過大視することも、過小視することもなくなるだろう。 

等身大のロシアを把握するために、この2冊はきわめて有用だ。


***********
  


目次
序章 プーチンの目から見た世界
第1章 プーチンの対NATO政策- ロシアの「非対称」戦略とは
第2章 ウクライナ紛争とロシア?「ハイブリッド戦争」の実際
第3章 「核大国」ロシア
第4章 旧ソ連諸国との容易ならざる関係
第5章 ロシアのアジア・太平洋戦略
第6章 ロシアの安全保障と宗教
第7章 軍事とクレムリン
第8章 岐路に立つ「宇宙大国」ロシア
結び


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目次
はじめに-交錯するロシアの東西
第1章 「ロシア」とはどこまでか-ソ連崩壊後のロシアをめぐる地政学
第2章 「主権」と「勢力圏」-ロシアの秩序観
第3章 「占領」の風景 - グルジアとバルト三国
第4章 ロシアの「勢力圏」とウクライナ危機
第5章 砂漠の赤い星 - 中東におけるロシアの復活
第6章 北方領土をめぐる日米中露の四角形
第7章 新たな地政的正面 北極
おわりに ー 巨人の見る夢


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2016年7月14日木曜日

書評『中国4.0 ― 暴発する中華帝国』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2016)― 中国は「リーマンショック」後の2009年に「3つの間違い」を犯した



一昨日(2016年7月12日)、国際仲裁裁判から「中国の南シナ海領有に法的根拠なし」という審判が下された。

たいへん結構なことである。 だが、中国はそもそもなぜ、そのような無法なことをゴリ押ししてきたのか?

その理由を知りたければ、『中国4.0-暴発する中華帝国-』(エドワード・ルトワック、奥山真司訳、文春新書、2016)を読むとその事情がよくわかる。

著者は、在野の軍事戦略の大家。軍歴もある実践派である。本書は、その立場から中国の動きを独自の視線で分析したものだ。「中国4.0」とは、中国の対外戦略の推移を4段階で読み解いたものである。

「中国1.0」で「平和的台頭」を行ってきた中国は、そのままその路線を続けていれば経済大国として世界中から歓迎されたはずだった。だが、暴走を初めてしまったのだ。「中国2.0-対外強硬路線」、さらには「中国3.0-選択的攻撃」へと、わずが15年のあいだに3度も対外方針を変更している。15年間で3度も方針を変更していては、外側からみたらあまりにも不安定に映るのは当然だ。しかも、その糸について疑惑さえ招きかねない。

どうやら、中国は「リーマンショック」(2008年)の翌年に大きな勘違いをしてしまったようなのだ。世界金融危機にまで至りかねない状況のなか、米国は経済的に「衰退」し、リーマンショック後に財政出動によって世界経済を「牽引」したのが中国であった。問題は、その際に中国は、「中国の時代」が前倒しに実現可能になったと勘違いし、舞い上がってしまったのである。「米中G2論」などという褒め殺しにも気がつかなかったのだ。

著者が指摘する「中国の戦略的誤り」は次の3点だ。①カネとチカラの混同、②線的(リニア)な予測の錯誤、③二国間関係の錯誤。以下、わたし流に解説しておこう。

①は、小国を「札束で引っぱたいて言うことを聞かせる」ということ。露骨だが効果的な方法である。中国が、とくにアフリカで独裁者をカネで買収してきたことは周知のとおりだ。かつて英国も米国も行ってきたことではある。だが、経済力と影響力はイコールではない経済力が縮小しながらも、いまだ英国は影響力をもっている。このような例は歴史的に多数ある。いまの中国はカネがあるが魅力はない。

②は、右肩上がりで成長し続けるという幻想のこと。バブル期とその後にわたって日本人も致命的な間違いを犯したことを想起すべきだろう。中国もその同じワナに捕らわれてしまったのだ。バブル期を知っているわたしのような人間からみれば、中国の勘違いによる傲慢さはじつに甚だしく、しかもじつに危うい。

①と②はわかりやすいが、③の「二国間関係の錯誤」は、ややわかりにくいかもしれない。著者独自の「逆説的論理」(paradoxical logic:パラドクシカル・ロジック)が適用されるものだ。「ある国が大きくなって、しかもそれが「平和的台頭」でなければ、台頭して強くなったおかげでかえって立場が弱くなること」を意味している。実際の世界には多数の国があり、二国間だけの純粋な関係というものは存在しないのである。合従連衡が発生するのがつねである。これはビジネス世界との大きな違いだ。

ある国が大国化すると周辺諸国に脅威を感じさせることになり、劣勢にある国を支援しようとする動きが必ず発生する。それが軍事同盟である。日露戦争前の日本もそうであった。当時の「小国」日本は日英同盟と米国の支援のおかげでロシアとの戦争に辛くも勝利できたのであった。だが、1930年代には「大国」化への途上にあった日本は大きな間違いを犯してしまう。英米を敵に回してしまったのだ。

南シナ海を「核心的利益」とする現在の中国共産党は、満蒙(=満洲+蒙古)を「帝国の生命線」とした大日本帝国と酷似している。「大陸国家の海洋進出」と、「海洋国家の大陸進出」は真逆の関係にあるが、身の程知らずという点において共通している。前者は中国、後者は日本のことである。2010年現在の中国は、1930年代の日本と同じ失敗をする可能性が高い。

このほか、本書には、ルトワック戦略論のエッセンスがふんだんにちりばめられている。たとえば「潜伏的効果」(latent effect)。民主主義国の米国が米国として存在しているが故に、民主主義政体をとらない中国には破壊的工作を行っているに等しいという。ルトワックは、戦略論の世界では意外なほど効果を発揮していると説くが、これはジョゼフ・ナイのいう「ソフトパワー」のことでもあろう。

中国人は、たとえどんな僻地に住んでいようが、米国大統領選のことを知っている。それに対して、政治的リ-ダーは自分たちが選んだわけではない。そこが、同じく強権政治を行っていながらも中国の習近平とロシアのプーチンとの大きな違いである。まがりなりにも、プーチンは自分たちが選んだリーダーだという意識がロシア人にはある。ソ連時代とは根本的に異なるのだ。その意味では、共産党独裁体制の中国は、いまだソ連段階なのである。

そして、「海洋パワー」(maritime power)と「シーパワー」(sea power)の違い。地政学でいう「シーパワー」は「ランドパワー」と対になる概念で、軍事力というハードパワーを想定している。これに対して、ルトワックのいう「海洋パワー」とは、「シーパワー」の上位概念で、自国以外の関係性で生まれるという。これもまた、「ソフトパワー」を含んだ概念であろう。「海洋パワー」は米国にはあるが、中国にはない。そう短時日に形成できるものではないからだ。

軍事戦略は、経営戦略とはイコールではないが、この本はじつに面白い。日本語版オリジナルの語り下ろしなので読みやすい。アタマの整理のために、ぜひ読むことを薦めたい。





目 次

日本の読者へ
序章 中国1.0-平和的台頭
第1章 中国2.0-対外強硬路線
第2章 中国3.0-選択的攻撃
第3章 なぜ国家は戦略を誤るのか?-G2論の破綻
第4章 独裁者、習近平の真実-パラメータと変数
第5章 中国軍が尖閣に上陸したら?-封じ込め政策
第6章 ルトワック戦略論のキーワード(奥山真司)


著者プロフィール

エドワード・ルトワック(Edward N. Lutwak)
ワシントンにある大手シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問。戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー。1942年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方のアラド生まれのユダヤ系。イタリアやイギリス(英軍)で教育を受け、ロンドン大学(LSE)で経済学で学位を取った後、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学で1975年に博士号を取得。同年国防省長官府に任用される。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論。国防省の官僚や軍のアドバイザー、ホワイトハウスの国家安全保障会議のメンバーも歴任。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)

訳者プロフィール

奥山真司(おくやま・しんじ)
1972年生まれ。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学卒業。英国レディング大学大学院博士課程修了。戦略学博士(Ph.D)。国際地政学研究所上席研究員。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


<関連サイト>

「世界的戦略家が“大国中国”を斬る」-著者は語る(週刊文春WEB 2016.05.18)



<ブログ内関連記事>

書評 『パックス・チャイナ-中華帝国の野望-』(近藤大介、講談社現代新書、2016)-2012年に始まった「習近平時代」を時系列で振り返るとクリアに見えてくるもの

朗報! 国際仲裁裁判所が「中国の南シナ海支配にNO」の審判を下した(2016年7月12日)

「連盟よさらば! 我が代表堂々退場す」(1933年)-いかなる「離脱」も戦争の引き金とならないことを願う

「意図せざる結果」という認識をつねに考慮に入れておくことが必要だ
・・どうも中国は、自分の行為がいかなる結果を引き起こすかについての想像力を著しく欠いているようだ

書評 『それでも戦争できない中国-中国共産党が恐れているもの-』(鳥居民、草思社、2013)-中国共産党はとにかく「穏定圧倒一切」。戦争をすれば・・・
・・「戦争になったら、間違いなく中国共産党は滅びる。中国共産党=中華人民共和国である以上、「亡党亡国」となるのは必定なのである。」

書評 『語られざる中国の結末』(宮家邦彦、PHP新書、2013)-実務家出身の論客が考え抜いた悲観論でも希望的観測でもない複眼的な「ものの見方」
・・この記事に掲載した各種資料を参照

書評 『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか-中華秩序の本質を知れば「歴史の法則」がわかる-』(石平、PHP新書、2015)-首尾一貫した論旨を理路整然と明快に説く
・・「中華秩序」を破壊したのが近代日本であったという事実。これはしっかりとアタマのなかに入れておかねばならない。琉球処分と日清戦争における日本の勝利によって、「中華秩序」は破壊された。だからこそ、中国の指導者は絶対に日本を許せないのである。」

書評 『中国外交の大失敗-来るべき「第二ラウンド」に日本は備えよ-』(中西輝政、PHP新書、2015)-日本が東アジア世界で生き残るためには嫌中でも媚中でもない冷徹なリアリズムが必要だ

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則

書評 『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂聰、新潮社、2009)-「平成の林子平」による警世の書
・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・海は日本の生命線!

(2016年7月20日・21日・24日・25日 情報追加)


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2012年9月23日日曜日

書評『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)-軍事戦略の観点から尖閣問題を考える



尖閣諸島は日本固有の領土であり、日本が実効支配を続けてきました。

これは否定しようのない「事実」であり、これに異を唱える中国の主張は、日本サイドからすれば「不当な言いがかり」以外の何物でもありません。

しかし、いろんな疑問がわいてきますよね。たとえば、こんな疑問の数々です。

●なぜ中国は尖閣諸島にこだわっているのか?
●それはただ単に資源開発のためなのか?
●それとも、ほかに理由があるのか? 
●中国海軍の実力は海上自衛隊と比較してどの程度のものか?
●仮にもし戦争になった場合、どのような展開になるか?

『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力-自衛隊はいかに立ち向かうか-』(川村純彦 小学館101新書、2012)を読むと、ある程度の答えを得ることができます。

担当編集者によれば、「著者の川村純彦さんは昭和35年防大卒後海上自衛隊に入隊し、対潜哨戒機のパイロット、在米日本大使館駐在武官、第5、第4航空群司令を務め、かつての陸・海軍大学校に相当する統幕学校副校長として高級幹部教育に従事しました。退官後も岡崎久彦研究所の副理事長を務めるなどし、海軍戦略、中国海軍分析のエキスパートです。何度か訪中し、中国軍幹部とも激論を交わしたこともあるという、この部門の著者に最適な方です」、とのこと。

報告書をそのまま新書本にしたような感じで、やや読みにくい感じもなくはありませんが、尖閣問題について、軍事戦略の観点から明快な議論を行っており、たいへん参考になる一冊です。

尖閣は「点」にしか過ぎませんが、尖閣を足がかりにして台湾を押さえ、東シナ海全体を「面」として考えている中国共産党と中国海軍。きわめて戦略的な思考ですね。これはすでに南シナ海で実行済みの戦略です。詳細は本で確認していただきたく。

中国の国家としての意図を正確に理解することは、これからも超長期的につづく日中の対立と友好の関係を生きていくうえで最低限の知識としなければならないでしょう。

カギとなるのは、潜水艦と対潜哨戒機の能力(ケイパビリティ)海上自衛隊の能力はあなどれませんよ! 原子力潜水艦をもたない日本ですが、著者によれば、その能力はアメリカ海軍も舌を巻くほどだとか。

何といっても「備えあれば憂いなし」ですね。いったん占領されたら竹島のようになっていまい、奪い返すのは多大な犠牲の血が流れることになります。尖閣を占領させない、ということが大事なのです。つまり戦争抑止ですね。

戦争を抑止するためにも、日本人は自信をもつべきですし、自衛隊を全面的に応援すべきなのです。

そして、軍事にかんする最低限の知識をもっておくことも必要なのです。







目 次

はじめに
序章 緊迫する尖閣諸島海域
第1章 増強著しい中国海軍
第2章 中国海軍の狙い
第3章 中国の「南シナ海聖域化」戦略
第4章 海上自衛隊の実力
第5章 中国海軍と海上自衛隊の真の実力
第6章 中国との有事にどう対処すべきか
第7章 日中尖閣沖海戦
おわりに

著者プロフィール

本文を参照

<関連サイト>

防衛費5%増ではメッセージは伝わらない-新防衛大綱、発表のタイミングは絶妙(日経ビジネスオンライン 2013年12月25日)
・・「安倍政権が12月17日、新しい防衛計画の大綱を閣議決定した。元海上自衛隊海将補の川村純彦氏は、このタイミングを高く評価する。ただし、大綱が挙げる新施策を防衛費5%で実現できるかどうかに疑問を呈する。(聞き手は森 永輔)」



<ブログ内関連記事>

「かくすれば かくなるものと知りながら やむにやまれぬ 大和魂」(吉田松陰)・・2年前の2010年に発生した「尖閣事件」と「尖閣ビデオ流出」にかんして所感をつづったもの

『何かのために-sengoku38 の告白-』(一色正春、朝日新聞出版、2011) を読む-「尖閣事件」を風化させないために!・・ハンドルネーム「sengoku38」氏の憂国の情にあふれた手記

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂 聰、新潮社、2009) ・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!

海上自衛隊・下総航空基地開設51周年記念行事にいってきた(2010年10月3日)・・航空母艦なき現在、陸上にある海軍航空基地は最前線である! 対潜哨戒機について

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)
・・海は日本の生命線!

書評 『日本は世界4位の海洋大国』(山田吉彦、講談社+α新書、2010)
・・点と線ではなく、面、さらには体積をもった三次元で考えよ

書評 『日米同盟 v.s. 中国・北朝鮮-アーミテージ・ナイ緊急提言-』(リチャード・アーミテージ / ジョゼフ・ナイ / 春原 剛、文春新書、2010)・・日米同盟の重要性と限界について

書評 『海洋へ膨張する中国-強硬化する共産党と人民解放軍-』(飯田将史、角川SSC新書、2013)-事実を淡々と述べる本書で正確な認識をもつことが必要だ

書評 『集団的自衛権の行使』(里永尚太郎、内外出版、2013)-「推進派」の立場からするバランスのとれた記述
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