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2021年4月6日火曜日

書評『イスラーム宗教警察』(高尾賢一郎、亜紀書房、2018) ー サウジアラビアを中心に知られざる「イスラーム宗教警察」の実態に迫る



「イスラーム」と「宗教警察」といういかめしい漢字熟語の組み合わせ黒ずくめの衣装に身を包んで目を閉じた女性たちのカバー写真

こんなものを見ると、「イスラムは怖い」というイメージが一人歩きしそうだ。 

正直いって敬遠したくなるが、だからこそかえって好奇心がかき立てられることもある。私もその1人であり、まずは読んでみることにした。

「百聞は一見にしかず」というわけにもいかないので、文字情報でアプローチするわけだ。 


■サウジアラビアの状況を中心に

「イスラーム宗教警察」については、建国当初から制度化されてきたサウジアラビアが事例研究の中心となっている。 

イスラム研究者である著者が、2011年から3年間にわたって在サウジアラビア日本大使館で専門調査員として勤務していたためである(・・ちなみにイスラム法学者の中田考氏もおなじ経験の持ち主)。

「宗教警察」の任務は、イスラム法の行動規範を遵守させるため「勧善懲悪」を行うことになる。勧善懲悪というと水戸黄門のようなイメージだが、英語で表現すれば、"the promotion of virtue" and "the prevention of vices" となる。読んで字の如く、「美徳」を推進し「悪徳」を防ぐという意味だ。 

なんだか、学校の「風紀委員」のようなイメージだな。躾(しつけ)がなってない、聞き分けのない子どもに対して、目に見える形で指導するのが任務のようだな。

だが、そんな指導を大人に対して実行するのが宗教警察の役割なのだ。 イスラム教にもとづく社会規範のお目付役というところだろうか。どんな社会もそうだが、すべての人が品行方正というわけではない。

著者も指摘しているように、「宗教警察」を考えるにあたっては、サウジアラビアの特殊性について考慮に入れる必要があるだろう。

イスラム教の純化を唱えるワッハーブ派とサウジ家との盟約によって誕生した部族国家サウジアラビアは、「近代国家」とは言い難いものがある。エジプトのように西欧列強による植民地化を体験することなく、いきなり近代世界に出現したような存在だ。だから「宗教警察」という制度が生まれたのも不自然な話ではないわけだ。 

とはいえ、そんなサウジアラビアも若年層が急増しており、近年はムハンマド皇太子の強力な指導のもと、女性の社会進出も制度的に緩和されつつある。

サウジアラビア社会が激変のなか、一般人の「宗教警察」に対する受け止め方や、その位置づけにも変化が起きているようだ。サウジアラビアの一般人からしても、行きすぎと見なされる行為もあるようだ。どうやら煙たがれる存在となっているようだ。

本書は、その意味では「宗教警察」を軸にしたサウジアラビアの社会学的分析として読むこともできる内容になっている。 詳しくは直接読んでみてほしい。


■インドネシアのアチェの事例が興味深い

このほか「自称イスラム国」とインドネシアのアチェの事例が取り上げられているが、アチェの事例もまた興味深い。

スマトラ島西端のアチェは、インドネシアのなかでは地理的にもっとも中東に近く、とりわけイスラム色の強い地域である。独立心も旺盛で、オランダ統治時代から叛乱が絶えない地域でもあった。スマトラ島沖地震(2004年)で大規模被害を受けてからは、インドネシア政府との和解が進展し、落ち着いた状況となっている。

そんなアチェだが、なんといっても東南アジアである。アフガニスタンのタリバンや、自称イスラム国のようなものとはほど遠い。よくいえば比較的に寛容、ある意味ではいい加減なところもある。鞭打ち刑もあるが、形式的に叩く程度のものであるようだ。 

「宗教警察」については、学問研究の対象としては研究蓄積が薄いだけに、まだまだわからないことが多いようだ。その意味では、本書は先駆的な内容のものである。

ぜひ多数派のスンナ派世界のものだけでなく、シーア派のイスラム国家であるイランについても、比較研究がなされることを期待している。 





目 次 
はじめに 
序章 イスラーム社会と風紀 
第1章 イスラームにおける勧善懲悪 
第2章 サウジアラビアの勧善懲悪委員会 
第3章 サウジアラビア社会が迎える変化 
第4章 「イスラーム国」のヒスバ庁 
第5章 インドネシア・アチェ州のヒスバ警察 
終章 勧善懲悪について振り返る 
あとがき 
主要参考文献

著者プロフィール
高尾賢一郎(たかお・けんいちろう)
同志社大学大学院神学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(神学)。日本学術振興会特別研究員PD(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)。専門は宗教学ならびに現代イスラーム思想・社会史。訳書にサーミー・ムバイヤド『イスラーム国の黒旗のもとに――新たなるジハード主義の展開と深層』(共訳、青土社)がある。


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