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2023年11月25日土曜日

書評『ウクライナのサイバー戦争』(松原美穂子、新潮新書、2023)ー サイバーセキュリティの専門家が「サイバー戦争」という側面から「ウクライナ戦争」を分析

 
「サイバー戦争」(cyberwarfare)とは、敵国に対する攻撃を「サイバー空間」、すなわちインターネットとそれに接続されているコンピュータ内で行われる戦争のことだ。

コンピュータウィルスをつかったランサムウェアワイパーなど、悪意あるソフトウェアである「マルウェア」によって、敵国のインフラを物理的に停止させたり破壊したりして、社会を麻痺させ、戦意を喪失させる戦争行為である。

サイバー戦争の対象となるインフラには、石油やガスのパイプライン、原子力発電所、ダムなどのインフラだけでなく、金融機関や病院など社会インフラも含まれる。また、敵国の国民の情報を管理する政府機関も含まれる。

「サイバー戦争」が「見えない戦争」といわれるのはそのためだ。

ロシアが「サイバー戦争」に力を入れてきたことは周知のとおりである。ミサイルや空爆によって物理的破壊を行うことなく、比較的ローコストで行うことができるからだ。現在のロシアは、通常兵力による戦争と組み合わせた「ハイブリッド戦争」に傾斜してきた。

このロシアを中心とした「サイバー戦争」について、2022年2月に始まった「ウクライナ戦争」に即して分析と解説を行っているのが、ことし2023年8月に出版された『ウクライナのサイバー戦争』(松原美穂子、新潮新書、2023)である。著者は防衛省にも在籍していたことのあるサイバーセキュリティの専門家である。

2014年のクリミア侵攻以前からウクライナに対して行われていた「サイバー戦争」。攻撃に対して脆弱であったウクライナがサイバー戦争の脅威に目覚め、米軍や英軍その他ファイブアイズの諸国を中心にした協力を受けながら、サイバー戦能力を高めていった状況を知ることができる。

そして戦火のなか、技術者たちが通信網と電力網の維持のため、見えないところで戦っている現状にも注意が向けられる。インターネットもコンピュータも電力がなければ動かない。電力についても目を向けることが重要だ。

2022年6月のウクライナ侵攻作戦において、ロシアによる「サイバー戦争」が大規模に発動されなかったのは、どうやらプーチンが規定した「特別軍事作戦」という性格に起因するようだ。

通常でもサイバー攻撃には、1年から2年程度の周到な準備が必要だが、今回はそのような準備が事前にされていなかったようなのだ。ただし、ロシアのサイバー戦争の内在的論理までは外部からはわからない。

「サイバー戦争」は、攻撃する側(オフェンス)と防御する側(ディフェンス)にわけられるが、後者だけでなく前者の能力を高めることも大事である。やられたらやり返すことができる能力と意思は、抑止力となるからだ。米軍のこの分野におけるパワーの源泉はそこにある。また、セキュリティクリアランスを前提とした民間IT企業との連携も重要だ。

「サイバー戦争」は基本的に「平時」の攻撃であるが、「有事」においても同時に実行される。発電所や放送塔などインフラの物理的破壊をともなう戦争状態では、サイバー戦争のウェイトは「平時」よりも低くなるが、両者を同時に行うことで相乗効果をあげることはできる。

サイバー戦争の担い手は基本的に国家であるが、民間企業やハッカーも動員される。

ところが、今回のウクライナ戦争での動員を嫌って、IT技術者を中心に100万人規模のロシア人が国外に脱出してしまった。

ロシア産業の将来を暗くさせるだけでなく、ロシアのサイバー戦争遂行能力を低下させることになるのであれば、われわれにとっては悪い話ではない。

『ウクライナのサイバー戦争』が、情報ネットワークそのものへの攻撃を行う「サイバー戦争」の実態を扱ったレポートであるなら、『破壊戦 ー 新冷戦時代の秘密工作』(古川英治、角川新書、2020)は、フェイクニュースやディスインフォメーションなどの偽情報をつかった「情報工作」を扱ったものである。

この2書をあわせて読むことで、ロシアの「ハイブリッド戦争」の実態を、「サイバー戦争」と「認知戦」(cognitive warfare)という側面から、より複眼的に理解することが可能となろう。そして、台湾有事への影響や、日本と日本人にとっての教訓も引き出すことが必要である。

サイバー戦争に注力しているのはロシアだけではない。われわれの周辺では中国や北朝鮮という大敵が控えている。そのためにも、ウクライナ戦争におけるサイバー戦争の実態について知る必要がある。



目 次
はじめに
第1章 「クリミア併合」から得た教訓
第2章 サイバー戦の予兆:2021年秋~2022年2月
第3章 サイバー戦の始まり:軍事侵攻前日~2022年6月
第4章 重要インフラ企業の戦い
第5章 ロシアは失敗したのか
第6章 発信力で勝ち取った国際支援
第7章 ハッカー集団も続々参戦
第8章 細り続けるロシアのサイバー人材
第9章 台湾有事への影響
おわりに 日本は何をすべきか 
謝辞

著者プロフィール
松原実穂子(まつばら・みほこ)
NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト。早稲田大学卒業後、防衛省に勤務。フルブライト奨学金を得て、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)に留学し修士号を取得。シンクタンク勤務などを経て現職。著書に『サイバーセキュリティ』。(出版社サイトより)



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