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2021年6月3日木曜日

『ご生誕120年記念企画展 昭和天皇の生物学ご研究』(国立科学博物館 東京・上野)に行ってきた(2021年6月3日)― 生物学者としての昭和天皇

 


この企画展はぜひ見たいと、開催情報を知ったときそう思ったのだが、なかなかその思いが実現しなかったのは、「非常事態宣言」が出されたなか、東京都知事によるミュージアムも閉館すべしという愚かな要請があったためだ。 




幸いなことに6月1日からはミュージアムも開館OKとなったので、6月20日で終わってしまうこの企画展に間に合ったのは幸いだった。企画展は常設展の入館料金でOKだが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため「事前予約」が必要だというのは、まあ面倒臭いことではある。 

企画展の内容は、昭和天皇の生涯を「生物学」との深いかかわりから、少年時代から没後にいたるまで取り上げたもの。昭和天皇が相模湾で収集された生物標本などが多数展示されていて、大いに有意義なものだった。 




特筆すべきは、粘菌研究の「同志」ともいうべき南方熊楠との交友と、南方熊楠が昭和天皇に献上した標本の実物。やはり実物は説得力がある。ただし、今回の展示品は和歌山行幸の際に献上したキャラメル箱にいれた標本類ではなく、ぞれ以前に献上した標本類であった。 

もともと高校1年までは生物学をやるつもりだった私は、小学生の頃から生物図鑑によって昭和天皇(当時はまだ天皇陛下であった)が生物学者であることは知っていて、その面からひじょう親近感を感じていた。その頃は、昭和天皇はウミウシの研究者だと思っていたのだっった。 

コロナのせいで国立科学博物館そのものの来館者が少ないのは、見学する立場としてはありがたい。

だが、昭和天皇がご逝去されてからすでに30年以上たっている現在、もっと多くの人に「生物学者としての昭和天皇」について知ってほしいのに、ひじょうに残念な気もしている。
 



PS 昭和天皇は、1971年に英国の科学者の殿堂である「王立協会」(Royal Society)の「フェロー」(名誉会員)に選出されている。 



<関連サイト>



(上記のコーナー博士による追悼文に所収の写真)




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2020年4月19日日曜日

「ベジタリアン」とのからみで「トルストイ主義」を振り返る ― そのけっして古びないチカラを思い起こせ!



肉食がすべての悪の根源だとする「ベジタリアン」の思想。肉食を否定し、大地から産まれた植物だけを食べることから「菜食主義」と訳されることもある。

だが、インドがその中心である「菜食主義」と、古代ギリシアのヘシオドスやピュタゴラスまでさかのぼることができる「ベジタリアニズム」は、イコールではないのだという。

ベジタリアン(vegetarian)と植物を意味するベジタブル(vegetable)は、いっけん見ているがもともと関係のないコトバなのだ。


■ベジタリアンの思想を知る

ベジタリアンの思想を知ることができるのが、ベジタリアンの実践者である鶴田静氏の『ベジタリアンの文化誌』(中公文庫、2002ベジタリアンの世界-肉食を超えた人々』(人文書院、1997)の2冊だ。

2冊とも部分的に読んではいたが、今回はじめて通読してみた。入手してからずいぶん時間がたつ。 この2冊は重なる面もあるが、出版は前者のほうが早い。後者は、前者の積み残しの課題を解決したものとなる。
   
古代ギリシアのピュタゴラスやヘシオドスに発するベジタリアンの思想は、キリスト教世界の修道生活を経て、中世前期のアッシジのフランチェスコや、中世後期ルネサンス時代のレオナルド・ダヴィンチを経て、イタリアからフランスへ。両者はともに豊かな農業国だ。 そして19世紀の英国で一大潮流となった

「ベジタリアン」(vegetarian)というコトバが誕生したのは、1842年のことだそうだ。それまでは、「ピュタゴラス的食事法」と呼ばれていたらしい。そう呼ばれてきた歴史のほうがはるかに長いということだ。逆にいえば、思想として確立したのは近代になってからということになる。

以後、英国から米国、ドイツ、さらにはロシア、日本へとベジタリアンの思想と行動が拡がっていく。日本では、詩人で童話作家の宮沢賢治がもっとも有名だろう。賢治には「ビジテリアン大祭」という作品がある。


  


■ベジタリアン思想の系譜にあるトルストイ主義

このベジタリアンの系譜のなかにあるのが、19世紀ロシアの文豪トルストイ。土地貴族であったトルストイ伯爵は、自分の農地でみずから汗を流して農作業に従事、大地に根ざした生活を信条としていた。トルストイは、59歳で最終的にベジタリアンになった。肉食はいっさいしないことを決意し、実践するようになったのだ。

非暴力主義と平和主義を実践し、武器を焼き捨て兵役を拒否したのがドゥホボール教徒たちだ。カフカス地方に生まれたかれらについては、武器を焼け-ロシアの平和主義者たちの軌跡』(中村喜和、山川出版社、2002が最新の研究成果である。

ロシア帝国もその1つであった「近代国家」は、兵役を義務としていたが、その兵役義務を拒否したため、徹底的に弾圧されたドゥホボール教徒たち。カナダへの移住を資金援助するため、印税目的で執筆されたのがトルストイ晩年の大作『復活』だ。ああ、そうだったのだなと、あらためて深く感じ入る。ドゥホボール教徒たちの思想信条は、トルストイ主義ときわめて近い存在であったのだ。

いい機会なので、読まないままになっていたトルストイ晩年の思想を小説化した名作光あるうち光の中を歩め』(新潮文庫、1952を読む。

古代ローマの五賢帝時代のハドリアヌス帝時代、いまだキリスト教が迫害されていた時代を背景に描いた作品だ。この小説で、トルストイ主義について知ることができる。享楽にふけるローマ人一般とは異なる、額に汗水流して農作業に従事し、手作業を重視することから産まれる喜び、充実感。「原始キリスト教」の世界を理想としていたトルストイであった。

ドゥホボール教徒は19世紀末にカナダへの移住に成功するが、宗教に基づかないトルストイ主義者たちは、ロシア革命後のソ連で生きていくことになる。ロシア以外では、日本の「新しき村」もトルストイ主義の影響を受けた白樺派の作家・武者小路実篤がつくったものだ。


  


■ソ連に残った「トルストイ主義者」たちの運命

トルストイ主義者たちがソ連でつくった共同生活体(コミューン)に、「生活と労働」というものがあった。

かれらについては、愛と微笑みのパッションー西シベリアを目指したトルストイ主義者たち』(人見楠郎・油家 みゆき・小波宏全、新読書社、2000で、詳しく取り上げられている。

著者の筆頭に名を出しているのは、昭和女子大学の学長(当時)、この大学はトルストイ主義を理想として建学されたものであったことを今回はじめて知った。

コルホーズによる集団農場化が推進されたソ連で、モスクワ郊外にあった「生活と労働」は、さまざまないやがらせを受けるようになる。自由意志にもとづくコミューンが許されない状況となりつつあったのだ。

理想の地を求めてウラル山脈の先、アルタイ山脈の近くの西シベリアに移住を実行、苦労を重ねながらも定住に成功する。

しかし1930年代にはスターリンによる締め付けが厳しくなるなか、コミューンの指導者たちは逮捕され、強制労働の刑を受けたり、処刑された者もあった。そして、コミューンはコルホーズ化され、歴史から消えていった

まさに受難である。タイトルにある「パッション」とは、キリスト教用語で受難を意味する。






■インド独立の父ガンディーに受け継がれたトルストイ主義

ロシアでは息絶えたトルストイ主義だが、その思想はインド独立の父ガンディーにも影響を与えているのである。

南アフリカ時代のガンディーと晩年のトルストイが書簡を交わしており、弁護士として成功していたガンディーは、南アフリカ時代に現地で土地を確保して「トルストイ農場」を開いていた。

言うまでもなく、インド出身でヒンドゥー教徒のガンディーは子どもの頃から「菜食主義」の生活習慣をもっていた。菜食主義を貫くジャイナ教徒たちとの接点があったことも大きい。

このガンディーが、留学中のロンドンで誕生した「ベジタリアン」の思想と出会うことになった。生活習慣としての「菜食主義」と、思想としての「ベジタリアン主義」の出会いである。

ここにおいて、古代インド以来の「菜食主義」と、古代ギリシア以来の「ベジタリアン思想」(=ベジタリアニズム)が融合することになったのである。ガンディーという、インド出身で、近代西欧思想の影響をどっぷりと受けた生身の人間の心身において。

こういう思想の流れがあることを知っておきたい。また、こういう観点からガンディーの思想についても考えて見る必要があるだろう。


  


PS ベジタリアンを実践するのはむずかしい

ただし、私自身は「ベジタリアン」を理想としていながらも、なかなか徹底できないヘタレであります。肉食はできるだけ減らすように努力しておりますが、昔に比べたらあまり肉を食べたいという気持ちは、なくなってきましたけどね。野菜中心の食事を心がけております。もちろん、魚も卵も食べますよ。


<関連サイト>

「コミューン 生活と労働」について
Life and Labor Commune - Wikipedia(英語版。日本語版はなし)
https://en.wikipedia.org/wiki/Life_and_Labor_Commune


<ブログ内関連記事>

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる

書評 『食べてはいけない!(地球のカタチ)』(森枝卓士、白水社、2007)-「食文化」の観点からみた「食べてはいけない!」

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文豪トルストイの『アンナ・カレーニナ』を「緊急事態宣言」から3ヶ月かかってやっと読了(2020年7月4日)-あくまでも「現代小説」として読むべき長編小説だ

(2020年8月2日 情報追加)


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2019年11月7日木曜日

なんと、こんな季節に千葉県北西部で「野生化」したスイカを発見!(2019年11月7日)



昨日(2019年11月6日)のことだが、仕事で移動中、昼食時間帯に千葉県北西部でとあるコンビニで休憩していたら、同行者が駐車場に隣接する空き地にスイカを発見した。


「ほら、あそこにスイカがあるよ!」
「スイカ? どこに?」
「あそこ、あそこ!」
「ああ、ほんとだ。スイカだねえ。でも、なんでここにスイカが?」




枯れ草がからまっていたので、取り除くと、スイカの形がはっきりと現れた。

小玉スイカくらいの大きさだ(写真参照)。 




スイカは蔓(つる)につながったまま。豚のしっぽのようなというか、カボチャの蔓にも似たスイカの蔓だ。右側にたどっていくと茎にたどりつきた。


まさか栽培目的で、こんな砂利場にわざわざ植えるはずがない。誰かが夏のあいだにスイカを食べて、飛ばしたタネが自然に発芽して実をつけたのだろう、と結論。 ある意味、野生化したわけだ。日本で栽培されているスイカは、タネが「FI」(雑種交配1代)にもかかわらず、発芽して生育した固体があったわけだ。




いやあ、それにしても、スイカには生命力あるなあ! 11月のこんな季節に、こんな場所でスイカに遭遇するとは! スイカの原産地の1つはアフリカ南部のカラハリ砂漠のはずなのだが・・・。今年の日本は(すくなくとも関東地方は)秋でも温暖な天気が続いていたからかな。


(カラハリ砂漠の野生スイカ Wikipediaより)


栽培目的の場合、スイカは病虫害に弱いので、通常はカボチャやカンピョウなど、おなじウリ科の植物の苗に接ぎ木する。このスイカが、病虫害の被害にあってないのはなぜだか
わからない。もともとスイカは強いのだろうか。現在は庭付きの家に住んでないので残念だが、スイカのタネを蒔いて自分でも実験してみたい。

もちろん、このスイカはそのままの状態で放置しておきました。もし熟したら、鳥がついばむのではないかな? その前に初霜が降りるようなことがあったら、完熟する前に枯死してしまうだろうが・・・。


 池谷 和信、臨川書店、2014 画像をクリック!



PS 野生化したスイカのことは「野良スイカ」というらしい。しかも毒性あり!

「夏野菜の「先祖返り」に要注意!食用の野菜が”危険な野生種”に逆戻りする(ナゾロジー、2020年8月26日)」という記事によれば、栽培種が野生化すると品種改良前の状態に戻ってしまうことがあるらしい。とくに「ウリ科」の植物が顕著なのだとか。捕食されるのを防ぐため、「ククルビタシン」というステロイド系の苦味成分の量が異常に多いのが野生種の特徴であり、吐き気や嘔吐などの食中毒を引き起こすこともあるので要注意!、なのだと。

(2026年7月8日 記す)




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・・スイカ、パパイヤ、パイナップル。タイではスイカは小玉サイズかラグビーボール型。地方では道路沿いに積み上げられて販売されえている。

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「世界のヒョウタン展-人類の原器-」(国立科学博物館)にいってきた(2015年12月2日)-アフリカが起源のヒョウタンは人類の移動とともに世界に拡がった
・・ヒョウタンもウリ科。スイカもウリ科。ともにアフリカ原産。ヒョウタンは道具として、スイカは水がめとして人類にとって欠かせない。

冬瓜は夏から秋にかけてが収穫期-次から次へと花が咲き実がなるが冬には枯れる

カンボジアのかぼちゃ

ゴーヤ棚はすでに日本の夏の風物詩

ひさびさにカラスウリを見つけた-晩秋になるとオレンジ色に熟したカラスウリが目に入る

『農業全書』に代表される江戸時代の「農書」は、実用書をこえた思想書でもある
・・元禄年間に出版された『農業全書』には、西瓜(すいか)の栽培方法が記載されている。「西瓜、水の多き物なる故、水瓜と云ふにあらず。是もと西域より出たる物也。故に西瓜(てんぢく)の号あり。以下略」。

(2019年11月14日、16日 情報追加)


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2016年8月12日金曜日

ゴーヤ棚はすでに日本の夏の風物詩



真夏日が連続している日本だが、ゴーヤ棚をよく見かけるようになった。

日よけ目的と、実を収穫できる一石二鳥の実益から普及してきたものだが、すでに日本の夏の風物詩となりつつあるのだろうか。

東南アジアで普及しているゴーヤだが、日本ではまず沖縄野菜として登場した。いまでは内地でも広く栽培されている。関東では群馬県産が多い。もはや苦瓜と呼ばれることもほとんどなくなった。

かつてはヘチマやヒョウタンがその役割を果たしていたように思うのだが、ヘチマ棚やヒョウタン棚はあまり見かけなくなったような気もする。

ヘチマの大きな実は食べられないが、乾燥させてタネを除くと、カラダをゴシゴシ洗うブラシとして活用できるし、茎から採取したヘチマ水は美容液にもなる。小学生の頃、学校でそんな作業を手伝った記憶がある。

思うに、日よけ目的なら江戸時代以来の朝顔のほうがいいのではないかな。朝顔はもっぱら花を観賞するのが目的だが、8月いっぱいは花が咲き続けるだけでなく、そう簡単に夏枯れしない生命力がある。

朝顔に対して、写真のゴーヤ棚もうそうだが、ゴーヤは8月中旬ですでに葉っぱは黄ばんで枯れ始めている。これでは直射日光を完全には遮れないだろう。実も完熟すると、真っ黄色になって縮んでしまうしね。

真夏日がつづく日本列島。日本の8月の暑さは世界的に見ても過酷なものの一つだ。ゴーヤであれ、ヘチマであれ、朝顔であれ、植物のつくる緑陰はじつに心地よい。

俳句の季語として「ゴーヤ棚」が定着するのも、そう遠い将来のことではないだろう。



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