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2026年2月22日日曜日

『きのう何食べた?㉕』(よしながふみ、講談社、2026)が届いたのでさっそく読んだ(2026年2月22日)― マンガの主人公たちと一緒に歳を重ねていく一読者として思うこと

 

発売されたばかりの 『きのう何食べた?㉕』(よしながふみ、講談社、2026)が届いたのでさっそく読んだ。  

単行本の第1巻から読み始めて、なんと18年! TVドラマ化されてブームになる前から読み続けてきた。

この一話完結型のストーリーマンガは、連載も200回を迎えている。

 マンガの主人公たちも、すでに還暦過ぎて60歳台前半。「後期中年」である。主人公たちと一緒に歳をとってきた一読者として、なんだか感慨深いものがある。 

おお、なんと198話では「高校の同窓会」のシーンから始まっているではないか! つい先週のこと、卒業から45年たってはじめて参加した自分は、なんだかシンクロ感を感じて不思議な気分だな。 

すでに60歳を越えて高齢者へと向かっていくわけだが、つい先日読んだばかりの『老いを読む 老いを書く』(酒井順子、講談社現代新書、2024)のテーマともろに重なっているなあ、と。 

『老いを読む 老いを書く』は、さすがプロのエッセイストだけに文章がうまいし、内容もあいまって、ついつい先へ先へと読ませる本だった。「老い」をテーマにした、1957年から現在にいたるまで日本で出版されてきた本の紹介も兼ねていて面白かった。 

 取り上げられているのは、基本的に小説やエッセイなどが中心で、マンガとしては長谷川町子の『いじわるばあさん』など数点しかた取り上げられていなかったが、よしながふみの『きのう何食べた?』も、「料理本」と「ライフスタイル本」としてだけでなく、「老い本」としてカテゴライズすることも可能だろう。

「老い本」は成長分野である以上、マンガもまたその成長分野(!)を開拓していくことになるのだろうなあ。 


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2024年5月20日月曜日

書評『イランの地下世界』(若宮聰、角川新書、2024)― イスラーム体制の下でイラン人は、なにを考えどう行動しているのか?

 


現職の大統領と同乗していた外相が事故死するという異常事態に見舞われているイランは、はたして今後どうなっていくのか? 

保守強硬派の大統領は最高指導者ハメネイ師の忠実な配下だったが、ライシ大統領の事故死は、現在85歳の最高指導者の後継者問題にも影響を及ぼすことだろう。それがさらなる国内での反発につながっていくのかどうか。

この事件とは直接は関係ないが、きわめてタイミングよく出版された本がある。『イランの地下世界』(若宮聰、角川新書、2024)という本だ。  

5月にでたばかりの本で、わたしはこの本は一昨日読んだ。よもや、大統領死亡など事件が起こるとは夢にも思わずに・・。 

この本の存在は、冒険ノンフィクション作家の高野秀行氏のX(旧twitter)で知った。高野氏が本書の生みの親だそうで、しかも本書の解説を書いている。 

著者の若宮聰氏は、イラン好きが高じてイランで長年暮らし、イラン人とホンネで語り合えることのできる日本人イランのような秘密警察体制下では、ほんとうのことを書くと危険なのでペンネームである。登場人物も当然のことながら仮名である。 

1979年の革命以来40年以上続いている現在のイスラーム体制であるが、この本を読むと現在の体制に不満をもつイラン人がいかに多いかが手に取るようにわかる。 

おそらく著者は、首都のテヘランをベースにあちこちを訪問しているのであろうが、すくなくとも都市部の若年層の不満がいかに大きなものとなっていることか。 ヒジャーブ関連の抗議行動が爆発したこと、それが徹底的に弾圧されたことは記憶に新しい。


■イラン人の「イスラーム疲れ」という現実 

とくに興味深く読んだのが、「第2章 イスラム体制下で進む「イスラム疲れ」」である。 

シーア派のイスラームを国教とし、聖職者が支配するイランの現体制であるが、宗教イコール政治の体制であるがゆえに、政治への不満がダイレクトに宗教への不満につながってしまいやすいのだ。 

そもそもイランは、古代以来のペルシア帝国の末裔である。イスラーム化される前は、日本では拝火教とよばれることもあるゾロアスター教が支配的であった。 




イスラーム体制への嫌悪感が古代ペルシア帝国時代の栄光への憧れをもたらしているほか、イスラームの枠組み内ではあるが、瞑想を中心としたスーフィズム(=イスラーム神秘主義)へと向かわせる現実逃避的な姿勢など、じつに興味深い。禅仏教の瞑想とスーフィズムには類似性がある。



とはいえ、本書を読んでいると、たとえ現体制が転覆されて「世俗化」されたとしても、「歴史は繰り返す」というわけではないが、イランはまたおなじような経緯をたどっていくのかなという気がしないでもない。 

なぜなら、わたしは1979年の「イラン・イスラーム革命」と第2次オイルショックを、TVをつうじてであるが、リアルタイムで知っている世代だからだ。

さすがに「王政復古」は可能性としては低いだろうが、どうやらイラン人も独裁者的なストロングマンが好きなようだ。新体制もまた独裁化していくのであろ

あのときも、すべてではないが多くのイラン国民は革命に熱狂していた。その末路がいまや末期症状を示している現体制なのだ、と。 


(本文の P.231 で紹介されている「邪視よけ」 マイコレクションよりトルコ土産) 



■イラン人は大の日本びいき 

まあ、そういう話だけでなく、「タテマエ」のイスラーム体制のもとでの、「ホンネ」の飲酒やパーティにあけくれるイラン人のライフスタイルなど、本書には面白い話が満載だ。 

イランに関心のあってもなくても、読めば面白い本である。中ロとの悪の枢軸とみなされがちな現在のイランだが、すくなくともイラン人は大の日本びいきだということは、知っておいたほうがいいいだろう。

もちろん、イラン側の片思いに過ぎないのであるが・・。 


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目 次
はじめに 
第1章 ベールというカラクリ 
第2章 イスラム体制下で進む「イスラム疲れ」 
第3章 終わりなきタブーとの闘い 
第4章 イラン人の目から見る革命、世界、そして日本 
第5章 イラン人の頭の中 
第6章 イランは「独裁の無限ループ」から抜け出せるか 
おわりに 
解説 高野秀行


<関連サイト>

・・著者インタビュー記事。大統領選挙で改革派のペゼシュキアンが当選したことをイラン人ったいはどう捉えているか? とはいえ、トランプ氏が米国大統領に返り咲くことになったら・・



<ブログ内関連記事>



■日本とイランの関係







■イランから脱出した人びと



・・「イスラーム国家のイランから脱出してカナダに移住した元ムスリムのアーミン・ナヴァビが・・・かつてイスラーム教徒だった人間が「無神論者」になった例など聞いたこともなかった」


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2021年3月26日金曜日

映画『ノマドランド』と『ミナリ』― 2020年に製作された話題のアメリカ映画を2本見てきた(2021年3月26日)

 

本日、TOHOシネマズにて映画のはしご。話題のアメリカ映画を2本つづけて見てきた。 

『ノマドランド』と『ミナリ』の2本だ。内容は大きく異なるが、2020年に製作された米国映画であり、米国社会の一断面を切り取った作品である。ともに人生を感じさせるドラマであった。 


■「リーマンショック」(2008年)後に疲弊する米国社会の周縁

まずは、本日公開の『ノマドランド』(2020年、米国)。原題も Nomadland といたってシンプルだ。中高年ノマドのロードムービーといったらいいだろうか。



西部の砂漠地帯ネバダ州にある鉱山の閉鎖で企業城下町(company town)ごとなくなってしまい、すでに配偶者を病で先立たれていた主人公の中高年女性は、食も住居も失って放浪の旅にでる。 

どうしても手放すことのできない思い出と、生活道具一式を積み込んだキャンピングカー(中型バン)で寝泊まりし、季節労働者として仕事を求め、一人ハンドルを握って走り続けるライフスタイルだ。 

だが、個は孤にあらず。類は友を呼ぶ。仲間がいる。語り合う仲間がいる。助け合う仲間がいる。いつも一人で走っているが、集まる場所がある。「居場所」があるのだ。

社会の周縁で、喪失感を抱えて生きる中高年どうしの「つながり」がある。

出会いは一期一会だが、けっして Good by ! (さよなら)とは言わない関係。あいさつは See you down the road ! (また会おう)。出会いがあり、そして別れがある。 そしてまた再会もある。あくまでも個を前提に成り立っている世界だ。

だが、それは単なるライフスタイルを超えた、人生そのものなのだ。

自ら選んだと言うよりも、生き続けるために強いられたライフスタイルといっていいかもしれない。なによりも大事にするのが自由人間として絶対に譲り渡さない矜持と尊厳大自然とのふれあい。そんな生き方があるのだ。 

人生は旅。旅に出る前に過ごしていたネバダ州エンパイアやアリゾナ州クォーツサイトに拡がる砂漠、岩山がそびえ立つサウスダコタ州のバッドランズ国立公園などを訪れる主人公。自然のなかで人間は大いに癒やされる。

「一所不住」の禅僧のような生き方には、映像詩というか哲学詩のようなものを感じる。

主人公を演じているのは女優だが、映画には実際のノマドたちも出演している過ごしていた。

作品のなかで詩が引用されるシーンがある。 Shall I compare thee to a Summer's day ? の一節で始まるものだ。作品中では言及はないが、シェイクスピアのソネットである。

このほか主人公が口ずさむのが「グリーン・スリーブス」であることなど、厳しい人生模様を描いているが、美しい響きのBGMもあいまって文学的香気の高い作品となっている。じつに印象深い映画である。


■まだ夢を見ることができたレーガン大統領時代(1980年代前半)

『ミナリ』(2020年、米国)は、韓国人の移民ファミリーを描いたヒューマン・ドラマ。韓国系米国人(コメリカン)2世の監督が、自分の幼少時代の経験をベースにした自伝的作品で、子どもの目線から描いた作品だ。




1980年代前半のレーガン大統領時代にアメリカンドリームを夢見て、米国に移民した韓国人たち。作品のなかでは説明はないが、ベトナム戦争への参戦と引き替えで実現した移民枠によるものだ。

そんな韓国人の一人が、農場を開いて農場主となる夢を抱き、移民先のカリフォルニアから、さらに南部のアーカンソー州へと移住し、トラーラーハウスに住むことになる。

ハングリー精神の持ち主で、夢追い人の若い父親彼に振り回される妻と子ども2人の家族。夫婦間のわだかまりを解消するために本国から呼び寄せた祖母(ハルモニ)。南部のバイブルベルトの住人である白人たちとの交際。

崩壊寸前まで追い詰められた家族を再生させることになった出来事とは・・ 




原題の Minari とは、韓国語で「セリ」のことだという。雑草のようにどこでも生育できるセリは、移民家族のメタファーでもある。セリフは韓国語と英語。夫婦間は韓国語、子どもたちは英語を中心に、親との会話の一部は韓国語。そして韓国語しかできない祖母。

「移民がつくった国」である米国では、この韓国人ファミリーの物語も、「自分たちの物語」として見ることができるのだろう。だから、「アカデミー賞有力候補」ということなのだろう。だが、はたして一般的な日本人はどう見るのだろうか?

作品中に「ダウジング」が登場するのは興味深い。スピリチュアル要素の強い疑似科学的な手法だが、現在でも水脈を探すためにダウジングが使われているのだな、と。


■メインストリームではない米国社会を描いた映画

 ただ、自分自身が中高年ということもあるだろうが、どうも最初に見た『ノマドランド』に強く共感を感じてしまった。だから、『ミナリ』がそれほどすごい作品であるかどうかは、自分としてはなんとも言えない。 

この2本を両方とも見る人は、あまりいないかもしれない。だが、けっしてメインストリームではない米国社会の一断面を描いたものであることは共通している。ともに知られざる米国といっていいだろう。

2008年のリーマンショック以降の米国と、まだ夢を見ることのできる1980年代前半の違い、家族の喪失と家族の再生と大きな違いがあるのだが、共通しているテーマはある。ともに苦難を乗り越えるという点だ。

さらに選択の方向性は違うが、移動と定住というテーマは共通している。『ノマド』の主人公は移動を選び、定住を拒否する。『ミナリ』の家族は、これ以上の移動は選択せず、農場に定住する道を選択する。

どちらも、いわゆるハリウッド映画とはやや違ったテイストの映画であった。 だが、共通するものも多いのである。それは、米国社会を描いているからだ。
 




PS 2021年アカデミー賞の結果が発表

アカデミー賞は『ノマドランド』が作品賞と監督賞『ミナリ』は助演女優賞。作品賞にかんしては『ミナリ』は善戦したが次点だった。作品賞にかんしては、『ノマドランド』推しの私の趣味と一致したようだ。(2021年4月26日 記す)。


<関連サイト>

・・映画を見終わったあとで振り返りと内省を促してくれる語り

・・映画『ノマドランド』は、この番組のテイストに近いものを感じる。つまりドキュメントタッチだということだ。この番組のエンディングに流れるシンガーソングライターの松崎ナオの「川べりの家」がいい


(2021年3月29日 情報追加)
 

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2014年9月8日月曜日

すでに「亜熱帯」化している日本でデング熱が流行したのは不思議でも何でもない-東南アジアのライフスタイルに学び、かつての日本人の知恵も活用せよ!


ここのところ毎日のようにデング熱の話ばかりニュースでやっている。2014年8月に東京の代々木公園が発生源とされるデング熱だが、発症が東京だけでなく日本全国に飛び火しているからだ。

日本でのデング熱の大感染は70年ぶりとされているので、報道各社もニュースバリューが高いと判断しているのであろう。正確にいうと、前回の流行は1942年なのでいまから72年前の戦時中のことになる。日本では1万人以上の死者(?)を出したという。

だが、いま東南アジアに住んでいる人や、かつて住んだことのある人にとっては、それほど驚くべき話題でもない亜熱帯の東南アジアでは、デング熱の話題はあまりにも日常的なものだ。日本人が騒ぎすぎなのではないか?

わたしもタイのバンコクに住んでいたほかに、ブルネイを除く東南アジア全域にはかなり訪れているのだが、幸いなことにデング熱にはかからないで済んできた。知り合いにはデング熱にかかったという人もいる。

デング熱が流行するのは、日本の夏が酷暑になっていることも関係があるだろう。温暖化によって気温が上昇しているため蚊が生息しやすいのである。

8月の日本が酷暑なのである。明治時代に来日した西欧人の白人には耐えられないので、避暑のために軽井沢を開発したことは有名だ。英国の植民地であったインドのアッサムやセイロン(=スリランカ)のヌワラ・エリヤといった高地(ハイランド)は避暑地であるとともにお茶の栽培地でもある。

8月の日本を酷暑と感じるのは白人だけではない東南アジアからみても、8月の日本は暑すぎる。すくなくともバンコクにかんしていえば、3月後半から4月前半が酷暑である。タイの正月であるソンクラーン(=水かけ祭)から雨期に入り、酷暑はやわらぐので、8月は酷暑ではない。一雨あると空気が冷えるので、8月は死ぬほど暑くはないのだ。

その酷暑の8月がさらに酷暑化しているのは地球温暖化と関係がある。気温上昇にともなって、デング熱を媒介する蚊の生息域が拡大していることも、今回のデング熱騒動と関係がある。

だから、日本でデング熱が流行したのは感染源の問題だけではなく、気温が上昇していることが根本原因と考えるべきだ。これだけ多くの人が往来している以上、感染症を媒介する蚊もいっしょに持ち込まれていたとしても不思議ではないし、感染している人もそれと気づかずに入国していることも少なくないはずだ。

ことし2014年の話題といえば、梅雨はすでに終わっているのに全国各地で洪水被害をもたらしている大雨もまたそうである。広島の大規模な土砂崩れでは多数の死者がでているが、大雨の原因は海水温度上昇によるものだという。海水温度上昇のため、北海道ではサケの水揚げが減少しているというニュースもある。

気温の上昇に海水温の上昇。この二つの現象から思うのは、日本はもはや「温帯」ではなく「亜熱帯」なのではないか、ということだ。



ふと思い出して、本棚から『ニッポン「亜熱帯」化宣言-そしてグローバル・ウイルスが逆襲する-』(藤田紘一郎、中公新書ラクレ、2003)という本を取り出してパラパラとページをめくってみた。「亜熱帯」というコンセプトを打ち出した先駆的な一般啓蒙書である。

すでに一度通読はしていたが、詳細については忘れているので、デング熱についての記述を探してみると、デング熱そのものは章立てはしていないが、やはり蚊が媒介するウイルスとしてさまざまに言及されている。デング熱流行は、「亜熱帯」化現象の一つに過ぎないのである。

この本は、正式には重症急性呼吸器症候群というSARS(サーズ)大流行のあと。2003年に出版されたものだ。寄生虫研究で有名だが、熱帯医学が専門の藤田博士は、日本でマラリアやデング熱の大流行が起こるかもしれないと2003年時点で予想している。

「ついに来るものが来たのだ」と捉えるべきだろう。気温上昇によって東南アジアの感染症が北上する危険については専門家はかなり以前から警告されてきたのだが、それがいま「見える化」されてきたということなのだ。


日本では、戦時中は大東亜共栄圏の名のもと、南方(・・現在の東南アジア)まで軍を進めて、多数の皇軍兵士たちが東南アジア体験をしたわけだが、南方に展開しながら熱帯医学の専門家の少なかった日本軍は、大量の白人捕虜を亜熱帯特有の感染症で死なせてしまったという事実を直視すべきだ。捕虜虐待の実態は、強制労働よりも、衛生環境の悪い状態であったことも大きい。

東南アジア医との往来がふたたび活発化した現在でも、熱帯医学の専門家は日本では多くないのがが大きな問題である。黄熱病研究のさなかに命を落とした野口英世博士という先駆者もいたのだが。

(野口英世博士像 上野公園にて筆者撮影)

デング熱はあくまでもグローバル・ウイルスの一つに過ぎない。気温上昇が日本を「亜熱帯」化している現在、デング熱だけでなく、マラリアも、西ナイル熱も日本でアウトブレイクする可能性は低くはないのである。

『ニッポン「亜熱帯」化宣言』の第2部は「清潔志向×温暖化=日本滅亡?」、第3部は「グローバル化の中の無防備国家」と題されており、無菌状態でひ弱になった日本人の脆弱性に警告を発している。『ニッポン「亜熱帯」化宣言』は、現在は「品切重版未定」状態だが、出版社は改訂版を出版するべきだろう。

(世界各地の蚊について実体験から語った椎名誠の『蚊学ノ書』

いくらデング熱を媒介する蚊を退治しようとしても根絶など不可能である以上、当面の対策としては、東南アジアのライフスタイルに学ぶべきではないだろうか。長袖シャツを着て長ズボンをはく、水たまりには近づかない、蚊取り線香を焚いて蚊帳(かや)をつるなどの対策が必要だろう。

蚊帳というと、モスキート・ネット(mosquito net)として現在アフリカ諸国に普及しているが、かつては日本でもあたりまえのように使われていたものだ。なんとデング熱とは比較にならないほど重症をもたらす「日本脳炎」という蚊が媒介する感染症があったのだ! 高熱で子どもの脳がやられてしまう恐ろしい病気である。

「たらちねの 母がつりたる 青蚊帳を すがしといねつ たるみたれども」 (長塚節)という有名な歌があるが、わたしもこどもの頃は蚊帳はあたりまえであった。東南アジアのライフスタイルに学びつつ、かつての日本人のライフスタイルもふたたび復活すべきだろう。ワンタッチタイプの便利な蚊帳が現在では入手可能である

差し迫っている「いま、そこにある危険」への対応は、待ったなしというべきではないだろうか?





目 次

序 コレラが街にやってくる
 「グローバル・ウイルス」が日本を襲う
 コレラが眠りを覚ますとき
 暴発する感染症
第1部 亜熱帯ジャパンの風景
第2部 清潔志向×温暖化=日本滅亡?
 1章 ひ弱な無菌国家日本
 2章 加速する高熱ストレス社会
第3部 グローバル化の中の無防備国家
 1章 新型肺炎SARSの出現
 2章 生態系破たんと「グローバル・ウイルス」
 3章 民族大移動と感染症
 4章 地球温暖化からアウトブレークへ
おわりに


著者プロフィール

藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)
1939年旧満州生まれ。東京医科歯科大学大学院教授。東京医科歯科大学医学部卒、東京大学医学系大学院博士課程修了。専門は寄生虫学、熱帯医学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

デング熱、温暖化で世界的に感染拡大の恐れ ウイルス運ぶ蚊の生息域が日本列島を北上 (ハフィントンポスト、2014年9月11日)

70年ぶりのデング熱日本国内発症、 マレーシアでは患者急増など世界的な脅威に 世界25億人の感染リスクでワクチン開発の競争も激化 (JBPress、2014年9月11日)
・・比較的まともな記事。地球温暖化で蚊の生息域が拡大していることにも言及

日本だけじゃない! 「デング熱」が世界規模で拡大する理由は? (医学博士 大西睦子のそれって本当? 食・医療・健康のナゾ)(Nikkei Trendy、2014年9月12日)
・・地球温暖化が世界的流行の理由であることが指摘されている。リンク早希情報も有用

致死率30%の新興ウイルスが日本に定着している! 長崎大学 熱帯医学研究所 新興感染症学(6) (川端裕人、日経ビジネスオンライン、2014年9月9日)

デング熱の比でない虫による感染症が上陸! ~「対昆虫媒介感染症製品」が爆発的特需 (西川 りゅうじん、日経Bizアカデミー、2014年9月19日)



<ブログ内関連記事>

映画 『レイルウェイ 運命の旅路』(オ-ストラリア・英国、2013)をみてきた-「泰緬鉄道」をめぐる元捕虜の英国将校と日本人通訳との「和解」を描いたヒューマンドラマは日本人必見!
・・南方に展開しながら熱帯医学の専門家の少なかった日本軍は、大量の白人捕虜を亜熱帯特有の感染症で死なせてしまったという事実を直視すべき。捕虜虐待の実態は強制労働よりも、衛生環境の悪い状態であったことも大きい

「無憂」という事-バンコクの「アソーク」という駅名からインドと仏教を「引き出し」てみる
・・南アジアや東南アジアにおける「無憂」とは、まずなによりも伝染病の心配のないことであった。西欧諸国によって植民地化されて苦難を味わった東南アジア諸国ではあるが、徹底的な公衆衛生や検疫体制によって感染症や伝染病を根絶すべく力を入れた植民政府のおかげで、かつてより生活は快適になっているのである

東南アジアでも普及している「ラウンドアバウト交差点」は、ぜひ日本にも導入すべきだ!
・・先進国ではない東南アジアにも学ぶべきものは多い

「タイのあれこれ」 全26回+番外編 (随時増補中)

「ナマステ・インディア2010」(代々木公園)にいってきた & 東京ジャーミイ(="代々木上原のモスク")見学記
・・代々木公園では年間をつうじて、東南アジアやインド関連のイベントが多数開催されている。人や荷物、商品にまぎれてウイルスに感染した蚊がまぎれこんでいても不思議でも何でもない


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