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2022年3月21日月曜日

習近平(68歳)とプーチン(69歳)は一心同体ではない!ーThe Economist の今週号(2022年3月17日号)の表紙は、習近平(X)とプーチン(P)

 
The Economist  の今週号(2022年3月17日号)の表紙は、習近平(X: Xi)とプーチン(P: Putin)「オルタナティブな世界秩序」というタイトルだ。

何やら集合論の「ベン図」のような構図だが、なかなかうまいなあ、と感心してしまう。 大男の習近平の顔が、小男のプーチンの顔より大きいのは、物理的にいって当然だが、中国とロシアの関係をうまく示している。 

GDPによる経済規模からいったら中国はロシアの10倍以上あるが、軍事面ではロシアは中国の先輩格にあたるから、そこまで顔の大きさの違いはないわけだ。

(現在の中ロ関係の逆転状況を象徴的に表現した The Economist 2019年7月27日号のカバー)

また、プーチンはけっして習近平の「部分集合」ではないという事実も示している。 

両者がまじわる領域(X∩P)は反欧米という「共通集合」であるが、両者のあいだには異なる領域がある。中ロは一心同体ではないのだ。

「二つの国家の友情に限界はない」(friendship between the two states has no limits)というキャプションが、皮肉に響く(笑) 


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2021年4月22日木曜日

書評『ユーラシア・ダイナミズム-大陸の胎動を読み解く地政学(叢書・知を究める 17) 』(西谷公明、ミネルヴァ書房、2019)-ユーラシア大陸内部の大変動をロシアビジネス通のアナリストが解く


ユーラシア大陸の東端から距離をおいて位置する島国・日本からは、ユーラシア大陸内部で進行する長期的な「地殻変動」については、なかなか視野に入ってこないだけではない。感覚的にピンとこないこともある。 

『ユーラシア・ダイナミズム-大陸の胎動を読み解く地政学(叢書・知を究める 17) 』(西谷公明、ミネルヴァ書房、2019)は、ロシアと中国の関係を、経済関係を中心に考察したものだ。切り口は、モンゴルと中央アジアという、大国の狭間にある国々の視点である。
         
1980年代から進行する事態を一言で表現すれば、ロシアと中国の選手交代ということになる。 
  
石油とガスという資源輸出に依存したロシア経済は、ソ連崩壊とその後の存亡の危機ともいうべき大混乱を招いた一方、第3次グローバリゼーションの波にうまく乗ることができた中国は「世界の工場」として台頭した。 

GDP規模からみたら、中国はロシアの8倍になっている。ロシアと中国の関係は、この40年で完全に逆転したのである。この関係はそう簡単にくつがえることはなさそうだ長期的な変動プロセスであると考えるべきであろう。 

(現在の中ロ関係の逆転状況を象徴的に表現した The Economist 2019年7月27日号のカバー)

このユーラシア大陸内部における大国・中国とロシアの狭間に位置しているのが、ソ連の衛星国であったモンゴルであり、ソ連崩壊後に独立した中央アジア諸国である。 

中国の西端に位置するのが新疆ウイグル自治区だが、この地と国境を接するカザフスタンをはじめとした中央アジア諸国は、中国が構想する「一帯一路」の「陸路」における重要拠点となっている。シルクロード時代の「中継貿易」の再来である。 

巨大な中国経済圏のなかに飲み込まれつつある中央アジアは、しかしながら一方では軍事安全保障の面ではロシアに依存する姿勢を示している。

経済面では重要なパートナーであるとしても、中国を完全に信頼しているわけではない。だから、中央アジア諸国は中国におんぶにだっことはならないのである。ソ連時代の70年間の統治下でロシア語が普及し、ロシアへの親近感が強いことがその根底にあるという。 

この状況は日本の立ち位置と構造的に似たものがあるような気がする。実質的に巨大な中国経済圏に組み込まれつつある日本も、安全保障面では米国に依存している。ねじれ状態が発生しているのである。 

もちろん、ロシアと米国ではプレイヤーとしての性格は異なるが、中央アジアも日本も、巨大な中国に飲み込まれまいと牽制する点においては共通したものがあるといえよう。 

経済関係からみた中ロ関係は、資源国ロシアが中国に石油とガスを輸出し、中国が消費財を含めた工業製品をロシアに輸出するという関係にある。経済的にも密接なパートナーとなっているのである。 

経済関係を軸にすると、さまざまなことが見えてくるが、もちろん経済関係だけがすべてではない。 

中国との長い国境線をもつロシアにとって、経済と安全保障をどう両立させているかについてのロシアなりの解決策が、極東からのパイプラインの敷設ルートに端的に表現されている。この指摘は重要だ。 

著者は、ウクライナ日本大使館専門調査員を経て、ロシアトヨタの社長としてロシア国内の販売網構築に奔走した経験をもつエコノミストである。経済データと歴史文化、旧ソ連圏での豊富な現場経験を踏まえた記述が、読ませるものとなっている。 

「ユーラシア大陸内部で進行する中ロ関係の構造的変化」をテーマにしたものだが、タイトルは、もっと内容に即したものにしたほうが良かったのではないかという気がするのだが・・。 




目 次
はしがき-動態的ユーラシア試論
関係地図
序説 モンゴル草原から見たユーラシア
第1章 変貌するユーラシア
第2章 シルクロード経済ベルトと中央アジア
第3章 上海協力機構と西域
第4章 ロシア、ユーラシア国家の命運
第5章 胎動する大陸と海の日本
主要参考文献
あとがき
索引

著者プロフィール
西谷公明(にしたに・ともあき)
1953年 生まれ。 1984年 早稲田大学大学院経済学研究科国際経済論専攻博士前期課程修了。 1987年 株式会社長銀総合研究所入社。ウクライナ日本大使館専門調査員をへて、 1999年 トヨタ自動車株式会社入社。ロシアトヨタ社長、BRロシア室長、海外渉外部主査などを歴任。 2012年 株式会社国際経済研究所取締役理事。同シニア・フェローをへて、2018年独立。 現 在 エコノミスト、合同会社N&Rアソシエイツ代表。株式会社国際経済研究所非常勤フェロー。(*本情報は刊行時のものです)



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2018年8月5日日曜日

書評『ロシアと中国  反米の戦略』(廣瀬陽子、ちくま新書、2018)―「離婚なき便宜的結婚」というフレーズに見る「中ロ蜜月」のタテマエとホンネ



英米を中心に(・・トランプ大統領は別だが)ロシアとプーチンを非難する姿勢や論調が支配的だが、実際はどうなのか疑って見る必要はある。
 
逆にそういった論調がロシアを中国に追いやって、「反米」を国是とした「中ロ蜜月」状態を作り出しているのではないか、と。 たしかに、権威主義的な国家資本主義体制という点においては共通する中ロ両国ではあるが・・・。

そんな印象をもっているので、『ロシアと中国 反米の戦略』(廣瀬陽子、ちくま新書、2018)という出版されたばかりの新刊書をさっそく読んでみた。この著者の著作は、わたしはほとんど読んでいる。 

論旨が行ったり来たりして、やや重複感がなきにしもあらずだし、著者の専門が旧ソ連なので中国の分析がやや手薄で物足りなさを感じることは否定できないが、「中ロ蜜月」のタテマエとホンネを、さまざまな側面で検証しているので、ものを考えるための参考にはなる。

スパッと黒白で割り切れない、まどろっこしい叙述そのものが、「中ロ関係」にかんしてはホンネとタテマエが明確に区別できないあいまいなものであることを示唆しているともいえよう。

ロシアは中国を必要とし、中国もロシアを必要としている。こういうものの見方が「中ロ蜜月」論を生み出しているのだが、たしかにお互いが必要としあっていることは事実であるものの、呉越同舟とまでは言わなくても、双方の思惑にはどうやら少なからぬズレがあるようだ。 

というのも、ロシアは中国経済に期待しており、中国はロシアの資源と最新軍事技術に期待している。だが、中国の「一帯一路」は、ロシアの「影響圏」(sphere of influence)、とくに中央アジアの旧ソ連圏(カザフスタン・ウズベキスタン・タジキスタン)においては食い込んでおり、ロシアの利害に抵触しかねない状況である。

しかし、ロシアは「忍の一字」のようだ。経済力の点ではますます中ロの格差が開く一方だし、中国と長い国境線を接しているロシアは、中国とは軍事的な衝突は回避したいのがホンネのようだ。 

著者は、こうした中ロ関係を「離婚なき便宜的結婚」というフレーズを使用して説明している。お互いが必要としあっているので離婚はしないが、あくまでも自己利益第一の関係であって、そこには愛情はないということだろう。別の箇所では「偽装蜜月」などという表現もでてくる。 

そもそもロシアは、はたして現在でも「大国」なのかどうかも疑ってみるべきだ。たしかに周辺の小国にとっては依然として大国であることは否定できないし、いまだに核弾頭を所有し、周辺諸国に軍事的圧力を掛けているロシアだが、もはやかつてのソ連のような圧倒的存在ではない。いまでは一隻しかない空母も、実質的に不稼働資産と化している。

いまのロシアは、「大国」イメージをうまく活用しているだけなのではないか? 冷戦時代のソ連の位置に、現在では中国が取って代わったというべきだろう。「米ソ冷戦」から「米中冷戦」へという流れは、まさに象徴的だ。

長い目で見れば、ユーラシア地域の歴史は、モンゴル帝国の後継者である中国とロシアのせめぎ合いの歴史である。ロシアが優勢なときは中国は劣勢であり、中国が優勢な現在はロシアは劣勢である。おそらく長期的には、ふたたび逆転現象が見られるかもしれない。とはいえ、今後数十年は中国が優勢の状態が覆されることはなさそうだ。

つまり、現在ではロシアと中国は対等な関係ではなく、著者によれば、ロシアはすでに中国の「ジュニアパートナー」(弟分)的存在だという見解もロシア人研究者のあいだでは少なくないらしい。わたしも同感だ。 

この本は、基本的に「ロシア側からみた中国」についてのものだが、逆に「中国側からみたロシア」についても考えてみたい。おそらく、中国にとっての最大関心マターは米国であって、ロシアはワン・ノブ・ゼムに過ぎないのかもしれないが・・・。 


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目  次  
序章 浮上する中露-米国一極支配の終焉  
第1章 中露関係の戦後史-警戒、対立、共闘  
第2章 ロシアの東進-ユーラシア連合構想とは何か  
第3章 中国の西進-一帯一路とAIIB  
第4章 ウクライナ危機と中露のジレンマ  
第5章 世界のリバランスと日本の進むべき道 
あとがき  注  主要参考文献

著者プロフィール 
廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)  
1972年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了・同博士課程単位取得退学。政策メディア博士(慶應義塾大学)。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。著書には『コーカサス 国際関係の十字路』(集英社新書、アジア・太平洋賞特別賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<ブログ内関連記事> 

書評 『帝国自滅-プーチン vs 新興財閥-』(石川陽平、日本経済新聞出版社、2016)-ロシアを政治や軍事だけで判断するなかれ。基本は経済であり財政だ

書評 『ソ連史』(松戸清裕、ちくま新書、2011)-ソ連崩壊から20年! なぜ実験国家ソ連は失敗したのか?

書評 『米中戦争前夜-新旧両大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ-』(グレアム・アリソン、藤原朝子訳、ダイヤモンド社、2017)-「応用歴史学」で覇権交代の過去500年の事例に探った「トゥキディデスの罠」

書評 『モンゴル帝国と長いその後(興亡の世界史09)』(杉山正明、講談社、2008)-海洋文明国家・日本の独自性が「間接的に」あきらかに

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ

JBPress連載コラム第22回目は、「日本は専制国家に戻るロシアを追い詰めてはいけない-「東洋的専制国家」の中国とロシア、その共通点と相違点」(2018年3月27日)

JBPress連載コラム16回目は、「「米中G2時代」の現実から目をそらしてはいけない-日本人が想像する以上に長くて深いアメリカと中国の関係」(2018年1月2日)

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態


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