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2016年10月21日金曜日

『イメージとマネージ-リーダーシップとゲームメイクの戦略的指針-』(集英社、1996)-平尾誠二氏のあまりにも早い死を悼む(2016年10月20日)


昨日(2016年10月20日)、ラグビーの平尾誠二氏が53歳の若さで亡くなったことを知った。衝撃的なニュースだった。ショックだ。同世代としては他人事ではない。いや、学校は違うが同学年なのだ。

ひさびさに平尾誠二氏の著書を引っ張り出してきて、パラパラとめくってみた。『イメージとマネージ-リーダーシップとゲームメイクの戦略的指針-』(集英社、1996)。いまからちょうど20年前に出版された本だ。 編集工学の松岡正剛氏との二人の京都人による対話を読むと、平尾誠二氏が選手として優秀だっただけでなく、いかに知的な人であったかがわかる。

この本から平尾氏の発言を中心に抜き書きをしておこう。

平尾 そう、合理的です。流れに従っている。われわれはつい彼らの爆発力に目を奪われますが、実は理屈にあっている。無理がない。流れが正確につかまえられているんです。(P.78)


平尾 イメージがものすごく鮮明だから断定的に物事が言える。(P.121)


平尾 リーダーとして求められることは、物事の本質を見抜けるか、見抜けないかということですね。いろんなものがあるなかで何がいちばん大事なのか、それをある程度はずさないで言えるかが大事だと思います。
(・・中略・・)
松岡 構想力と判断力と理解力でしょうね。もうひとつ大事なことはプロセスを説明できるということ。これからの時代はとくにプロセスを共有することが求められるでしょう。(P.122)


松岡 ところで、バイブレーションを伝える意味で関西弁というのも大きな役割をはたしているんじゃないですか。
平尾 たしかに関西弁というのは、標準語とくらべると、入り込み方が違いますね。ぼくの感じとしてですが、言葉の浸透度が違う。
(・・中略・・)
やっぱりスピード感が違いますね。標準語は理屈っぽいというか、説明をしようとしても、「そんなことはハナからわかってるこっちゃ」というのが、われわれ関西人みんなの感想なんですよ(笑)
(・・中略・・)
ぼくら試合前のしゃべりは瞬発力でしょう。これで一気にテンションを上げていくという世界ですから、これで間延びするとよくないんですよ。関西弁で「ほな、行くでえ」でいいわけです。この言葉に全部凝縮されている感じがある。(P.134~137)


平尾 ぼくは臆病なんでしょうね。何をするにも注意深くて慎重だったしね。でも「怖がり」というのは、けっして悪いことじゃないと思うんです。というのは、何か怖いことが先にあると予測できるからそう思うんですよ。
松岡 その指摘はこの対話中の白眉です。
平尾 だから、怖いと思わないのは無神経というか、思慮深くないことにつながってくると思うんですよ。
松岡 そうそう。大賛成。 (P.149)


平尾 結論からいうと、体でおぼえなきゃダメだと思っているんです。体で覚えるというのは、頭を使わないことじゃないんですよ。体でおぼえるのは無意識的な反応だと思うんです。そこまでもっていかないとダメだということですね。 
(・・中略・・)
ぼくが最近思ってきたのは、体で反応していくということで、これはある種の「超人的な速さ」でないとダメだと思うのです。 (P.162~163)


松岡 (ラグビーが)ぼくがもうひとつ編集的だと思うのは、楕円形のボールによって生まれるイレギュラーなバウンドによってノンリニア(非線形的)な思考が生まれやすいではないかということです。 (P.191)


平尾 すごい戦術とか戦略とか考えついたとします。でも、それだけではまだやるべきことの20パーセントにしか過ぎない。それを仲間にどう説明して、自分のイメージどうりに実現できるか、そこが大事なんだよと。 (P.213)


平尾 ラグビーもそうですが、近代スポーツ、ようするに輸入してきたスポーツは、基本的には日本に適さないところがあるかもしれない。そこをどう考えるか。
世界と日本のラグビーの違いは、闘争心なんです。それがチームとしてのもつ闘争心ではなくて、個人がもつ闘争心に圧倒的な違いがあります。そこをどうするかというのは、すごく難しい。
(・・中略・・)
問題はチームプレーのなかにおける個人なんです。どうしてもチームがからむと甘いものが出てくる。 (P.223)


とくに印象的なのは、チームと個人の関係だろう。チームスポーツとチームワークの意味について深く考えさせられるのは、つねに試合という実践の場において考える人であったからだ。

わたし自身はラガーはないし、とくにラグビーファンというわけではないが、ラグビーといえば平尾誠二という連想があっただけに残念でならない。

53歳という短い人生を走り抜いた平尾氏のご冥福を祈ります。合掌。






<ブログ内関連記事>

書評 『日本力』(松岡正剛、エバレット・ブラウン、PARCO出版、2010)-自らの内なる「複数形の日本」(JAPANs)を知ること

書評 『脳と日本人』(茂木健一郎/ 松岡正剛、文春文庫、2010 単行本初版 2007)

『ちょっと本気な 千夜千冊 虎の巻-読書術免許皆伝-』(松岡正剛、求龍堂、2007)で読む、本を読むことの意味と方法

書評 『法然の編集力』(松岡正剛、NHK出版、2011)-法然は「念仏」というキーワードを膨大な大乗仏教経典のなかからいかに抽出したのか?


英連邦と英国起源の近代スポーツであるラグビー

「近代スポーツ」からみた英国と英連邦-スポーツを広い文脈のなかで捉えてみよう!
・・ラグビーは英国生まれのスポーツ。上流階級のスポーツであるラグビーと中流以下のスポーツであったサッカーとの違い

映画 『インビクタス / 負けざる者たち』(米国、2009)は、真のリーダーシップとは何かを教えてくれる味わい深い人間ドラマだ

「プリンシプルは何と訳してよいか知らない。原則とでもいうのか」-白洲次郎の「プリンシプル」について
・・英国仕込みのジェントルマン


スポーツと知性、アタマとカラダ

コトバのチカラ-『オシムの言葉-フィールドの向こうに人生が見える-』(木村元彦、集英社インターナショナル、2005)より

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)-「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキル

書評 『外国語を身につけるための日本語レッスン』(三森ゆりか、白水社、2003)-日本語の「言語技術」の訓練こそ「急がば回れ」の外国語学習法!

『Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2011年3月10日号 特集:名将の言葉学。-2011年のリーダー論-』

書評 『采配』(落合博満、ダイヤモンド社、2011)-ビジネス書の域を超えた「人生の書」になっている

(2016年10月27日 情報追加)




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2013年9月21日土曜日

『重版出来!①②③④⑤~』(松田奈緒子、小学館、2013~)は、面白くて読めば元気になるマンガだ!


ひさびさに面白くて読めば元気になるマンガに出合ったという思いだ。テーマは女性の人生ドラマであり、仕事マンガである。

「重版出来」と書いて「じゅうはん・しゅったい」と読むのだそうだ。なにを隠そうこのわたしも、このマンガを読むまで「じゅうはん・でき」だと思い込んでいた。これでは、このマンガの主人公の黒沢心(くろさわ・こころ)のことはとても笑えない(汗)

「重版出来」とは、初版を売り切って(・・あるいは売り切るメドがついて)、第2刷に入ることを意味している。第3刷以降についても重版と表現される。マンガに限らず単行本の重版は、その出版物が成功したことを意味するのである。これほど出版関係者を元気にするコトバはないのである。

主人公の黒沢心は大学まで柔道一筋に頑張ってきた女性。怪我で柔道は断念、大学卒業後の就活では出版業界を目指す。こういう一本気で突破力をもったキャラを主人公に設定したことがこのマンガの成功要因であるのは間違いない。現在は青年マンガ誌を読む習慣はないが、もし読んでいたら連載開始から巻き込まれていたのは間違いないと思う。

マンガ出版の世界に限らず、出版界の斜陽化が言われて久しいが、デジタル化がいかに進んでも、仕事の内容はアナログな世界が基本であることに変わりはない。それはそれは人間臭い世界であり、ドラマにもなりやすいわけだ。

著者(・・マンガの場合はマンガ家)、担当編集者、営業担当者、そして書店員の四者を軸に、さまざまな人たちがかかわる出版の世界もまたチームでする仕事である。

出版の世界もビジネスである以上、「売れてなんぼ」なのである。売れ行きがよくなくてもいい作品もあるが、いい作品であればこそ売れてほしい、いや売りたい。その気持ち合致し共有されたとき、商品としてのマンガ単行本が売れることにつながるのである。

それは偶然の結果ではなく、主体的で能動的な働きかけの結果というべきだろう。会社組織を超えてかかわる人たちを巻き込むことによって。仕事は一人でするものではない。

舞台は出版社のマンガ編集と営業の世界。このマンガが連載中の「ビッグコミックスピリッツ」の版元は小学館だから内輪ものでもある。

週刊誌編集の世界を描いた『働きマン』というマンガもあるが、この業界特有の不規則な仕事による過労で主人公の女性は疲弊してしまう。最初は元気の塊のようだったのだが・・・

その点、『重版出来!』の主人公は女子柔道部員出身。体力と気力では誰にも負けないはずだから、たぶん乗り切っていくのだろう、と期待したいものだ。まだ入社して一年もたってない状態だし。

わたしが入手したのは第3刷、『重版出来!』というタイトルのマンガに重版がかからなかったら、それではシャレにならなかったわけだ。こんな面白いマンガなら、その心配はなかったかもしれないが、初版の発行部数との兼ね合いもあるので重版が絶対とは言い切れない。

中年が読んでも面白いが、「青年マンガ誌」の読者ではないだろう20歳代はじめの若者にこそ読んでほしいマンガである。

自分がいまやっている仕事に意味を見出し、仕事をつじて学び成長するとはどういうことかが理解できるはずだ。すくなくとも気づきを得ることはできるだろう。





作者プロフィール   

松田奈緒子(まつだ・なおこ)
1969年、生まれ。長崎県出身。 『コーラス』(集英社)に掲載された『ファンタスティックデイズ』でデビュー。代表作は『』レタスバーガープリーズ, OK, OK!』、『少女漫画』、『えへん、龍之介』他(wiki情報と単行本記載情報から作成)。



PS 『重版出来!』の第2巻をゲットし、さっそく読了。よりマンガ編集の世界に密着した内容。出版社の外部にある製版業者もまた「チームメンバー」だ。第3巻は2014年3月刊行予定とのこと。楽しみだ(2013年9月30日 記す)




PS2 『重版出来!』の第3巻をゲットし、さっそく読了。思わずのめり込んで読めるマンガ。第3巻も熱い! (2014年3月30日 記す)。




PS3  『重版出来!』の第4巻をゲットし、さっそく読了。読むにもけっこうエネルギーを要するマンガ。マンガ家という道を歩くことの厳しさ、働くと言うことの意味。第4巻も熱い! (2014年10月8日 記す)。




PS4 『重版出来!』の第5巻をゲットし読了。このマンガは主人公のキャラの設定が成功したため、まだまだ続いてゆくことだろう。ひきつづき内容が面白いので読むつもり。(2015年6月6日 記す)。



<関連サイト>

ビックコミックスピリッツ「重版出来!」特設サイト | 試し読み (小学館サイト)

重版出来! 1 | ビッグ コミックス | ビッグ コミックス系 | コミックス | 小学館 (小学館サイト)

クッキーまんが家インタビュー 松田奈緒子先生(集英社サイト)


澤本嘉光の「偉人×異人」対談(日経ビジネスオンライン 2013年3月~4月)
作家と編集者の「相性」が、軽く見られすぎてきた 佐渡島庸平さん×澤本嘉光さん 第1回
『宇宙兄弟』の秘密~「講演会」にヒットの芽あり 佐渡島庸平さん×澤本嘉光さん 第2回
我々はなぜマンガの人物に「リアル」を感じるのか 佐渡島庸平さん×澤本嘉光さん 第3回
このキャラを「コンビニのおにぎり」で説明せよ! 佐渡島庸平さん×澤本嘉光さん 第4回
・・CMプランナーの澤本氏が元講談社で現在独立してマンガ編集を行っている佐渡島氏に聞く対談


火曜ドラマ『重版出来』 公式サイト
・・2016年ドラマ化

「私が売らなくてごめんなさい」から始まった『重版出来!』 (編集長・高橋由里が会いたかったこの4人 Vol.3 松田奈緒子)(東洋経済オンライン、2016年7月)

(2016年7月16日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

『マンガ 重版出来』がドラマ化(2016年4月12日)-マンガが原作のテレビドラマはいまや主流だ


働くということは人生にとってどういう意味を もつのか?-『働きマン』 ①~④(安野モヨコ、講談社、2004~2007)

書評 『サラリーマン漫画の戦後史』(真実一郎、洋泉社新書y、2010)-その時代のマンガに自己投影して読める、読者一人一人にとっての「自分史」

本の紹介 『人を惹きつける技術-カリスマ劇画原作者が指南する売れる「キャラ」の創り方-』(小池一夫、講談社+α新書、2010)

書評 『キャリア教育のウソ』(児美川孝一郎、ちくまプリマー新書、2013)-キャリアは自分のアタマで考えて自分でデザインしていくもの

(2016年7月16日 情報追加)



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2011年11月7日月曜日

書評 『法然の編集力』(松岡正剛、NHK出版、2011)-法然は「念仏」というキーワードを膨大な大乗仏教経典のなかからいかに抽出したのか?


法然は「念仏」というキーワードを膨大な大乗仏教経典のなかからいかに抽出したのか?

 法然は、「念仏」と「南無阿弥陀仏」というキーワードを膨大な大乗仏教経典のなかから、いかに抽出し「選択」することになったのか?

 法然の日本仏教史における意味についてすこしでも関心がある人なら、すくなくとも一度は疑問に思ったことがある問いではないだろうか。

 本書は、編集工学の大家が「編集」というキーワードによって、その謎を解き明かす試みに着手したものだ。こういう読み方もあるのか、というおどろきも感じる法然論である。法然の「方法論」を解明することによって、法然を理解するための「補助線」が引かれたことになったといっていいだろう。空海や良寛といった日本仏教を代表する人物をとりあげてきた松岡正剛にとっても、法然はあらたな分野の開拓にもなったようだ。

 本書は「編集論」として読むのもよいが、やはり「法然論」として読むべきものである。とはいえ、「編集」という概念によって法然を解説することには、大きな違和感を感じる人も少なくないのではないだろうか?「編集」という知性の営みと、信仰との接点をどこに求めるかが問題になるからだ。

 その意味では、第三部の異色の比較宗教学者・町田宗鳳氏との「特別対談」は必読である。この対談を読んだことで、「3-11」の意味を主体的に受け止めた法然論、仏教論がやっと出てきたのかという安心感をわたしは覚えている。法然を「思想の革命家」とみなす町田宗鳳氏の発言は、「3-11」後を生きる日本人が法然を考えるための道しるべとなるに違いない。

 法然の主著 『選択本願念仏集』 は、じつは法然による口述筆記を弟子たちがまとめた編集物で、自ら書き下ろしたものではない。この重要性が第一部で指摘されているが、本書もまたほぼ全編が「語り」を編集した本であり、「法然の方法論」を実践した内容にもなっているといえようか。第二部の「絵伝と写真が語る法然ドラマ」もまた、国宝絵巻「法然上人行状絵図」を掲載したカラーページをつうじて、法然をぐっと身近なものに引きつけてくれることだろう。

 「3-11」後に生きる日本人にとっての「法然入門」としても本書を推奨したい。





<初出情報>

■bk1書評「法然は「念仏」というキーワードを膨大な大乗仏教経典のなかからいかに抽出したのか?」投稿掲載(2011年11月7日)
■amazon書評「法然は「念仏」というキーワードを膨大な大乗仏教経典のなかからいかに抽出したのか?」投稿掲載(2011年11月7日)


目 次

第一部 法然の選択思想をよむ
 忘れられた仏教者
   六字名号の謎
   宗教は「編集」されてきた
   法然に吹く風
 専修念仏への道
   父の遺言
   浄土思想との出会い
   末法を生きる
   法然の読書法
   専修念仏の確信
   山から町へ
   乱想の凡夫として
 法然のパサージュ
   兼実の「仰せ」
   「選択」とは何か
   法然のブラウザー
   リテラシーとオラリティ
 「選択」の波紋
   南都北嶺の逆襲
   浄土でつながる
   多重な相互選択
   親鸞と光也 

第二部 絵伝と写真が語る法然ドラマ(カラーでみる国宝絵巻「法然上人行状絵図」)

第三部 特別対談 松岡正剛×町田宗鳳 「3-11と法然」

  大震災を経て
  辺境から生まれる希望
  仏教の土着化
  日本仏教の系譜
  仏教とイメージ
  法然の引き算
  仏教を再統合する
  「悪人」とは誰か
  仏教における死

あとがき


著者プロフィール

松岡正剛(まつおか・せいごう)

1944年、京都市生まれ。早稲田大学仏文科出身。東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授を経て、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。1971年に伝説の雑誌『遊』を創刊。日本文化、経済文化、デザイン、文字文化、生命科学など多方面の研究成果を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。日本文化研究の第一人者として「日本という方法」を提唱し、私塾「連塾」を中心に独自の日本論を展開。一方、2000年にはウェブ上でイシス編集学校と壮大なブックナビゲーション「千夜千冊」をスタート(本データは『松岡正剛の書棚-松丸本舗の挑戦-』(松岡正剛、平凡社、2010)刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

 浄土真宗門徒の宗教学者・阿満利麿、臨済宗の禅僧 20年の体験をもつ宗教学者・町田宗鳳ら、京都生まれの仏教者たちによる、浄土宗の外部からの法然論が面白い。松岡正剛もまた京都生まれである。

 口述筆記による語りを編集したという、法然の主著『選択本願念仏集』。おそらく法然が繰り返し、さまざまな人たちを相手に語ってきたことが、アタマのなかで何度も何度も繰り返し反芻されることによって熟成した思想が文字となったのであろう。法然のパトロンであった前関白・九條兼実の求めによってはじめてまとめられることになったという、他律的な動機もまたよい。

 法然はあえて自ら筆を執ることなく、口述筆記という形を意識的に「選択」していたのではないかという松岡氏の指摘もまた、おそらく正しいのだろう。

 口述筆記による論文執筆といえば、思い浮かぶのは国文学者で民俗学者であった折口信夫である。偶然であろうが、筆名を釋超空としていた折口信夫は、大阪の門徒の家に生まれた人である。中将姫伝説で有名な当麻寺(たいまでら)の「山越えの阿弥陀如来像」に想を得て創作した『死者の書』は、古代日本人の死相観を小説化したものだ。

 これはたんなる連想といえば、連想に過ぎないのであるが、古代からあった日本人の他界観が浄土仏教の西方浄土観と合体したところに「山越えの阿弥陀如来像」があることを考えれば、「法然なかりせば」という気持ちになるのも自然なことではあるまいか。


山越えの阿弥陀如来像


<ブログ内関連記事>

松岡正剛関連

『ちょっと本気な 千夜千冊 虎の巻-読書術免許皆伝-』(松岡正剛、求龍堂、2007)で読む、本を読むことの意味と方法

書評 『日本力』(松岡正剛、エバレット・ブラウン、PARCO出版、2010)

書評 『脳と日本人』(茂木健一郎/ 松岡正剛、文春文庫、2010 単行本初版 2007)


■法然上人と念仏関連

善光寺御開帳 2009 体験記
・・善光寺は宗派には関係ないが、とはいえ天台宗と浄土宗が中心になって管理運営している。極楽浄土を願い庶民信仰のお寺である

「法然セミナー2011 苦楽共生」 に参加してきた-法然上人の精神はいったいどこへ?・・既成教団への失望感を、率直な気持ちとしてつづった

「没後50年・日本民藝館開館75周年-暮らしへの眼差し 柳宗悦展」 にいってきた
・・『南無阿弥陀仏』という著書をもち、「妙好人」を讃えていた柳宗悦は、法然や親鸞のそのさきの一遍上人を見つめていた

『選択の人 法然上人』(横山まさみち=漫画、阿川文正=監修、浄土宗出版、1998)を読んでみた

書評 『法然・愚に還る喜び-死を超えて生きる-』(町田宗鳳、NHKブックス、2010)

書評 『折口信夫 霊性の思索者』(林浩平、平凡社新書、2009)
・・国文学者で民俗学者であった折口信夫は、じつは大阪の浄土真宗の門徒の家に生まれた人でもあった。

Memento mori (メメント・モリ)と Carpe diem (カルペー・ディエム)-「3-11」から 49日目に記す
・・カトリック中世ではよく知られていた標語「死を忘れるな」にからめて書いた生きる意味について


(2022年12月23日発売の拙著です)

(2022年6月24日発売の拙著です)

(2021年11月19日発売の拙著です)


(2021年10月22日発売の拙著です)

 
 (2020年12月18日発売の拙著です)


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2010年3月10日水曜日

講談社の月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」編集部訪問記 (2010年3月9日)




 昨日(2010年3月9日)午後7時半から講談社の月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」編集部訪問イベントに参加してきた。

 「R+ レビュプラス」主催の、『クーリエ・ジャポン レビューコンテスト 第6回』にエントリーしたブロガーが参加できるイベントであった。

 当日のイベントは、編集室内を説明しながら案内していただいたうえで、編集長やスタッフとブロガー11人を交えてのフリーディスカション、その後はビールもでてきた懇親会の席で、みなさんと中身のある会話や意見交換ができたのは、たいへん有益であった。


 編集長の寛大な方針で、編集部内はすべて撮影 OK というのは少し驚きだった。マスコミだから? 最新号の印刷が終わって少し余裕がでていたから? すべてさらけ出してしまえるというのは、自信があるからだろうか?



 すべて見せていただいて、さらにいろいろ質問もさせていただいて感じたのは、世界中に網を張り巡らせて情報収集を行っている調査部門のような部署なのだな、ということだ。(・・上掲の写真ページは校了済みの最新号)。

(デスクの上にはフランス語の週刊誌)

 もちろん、雑誌単体で採算を取らなくてはならないので、企業の調査部門とは違い、コストセンターではなくプロフィットセンターではあるのだが、それでも講談社にとっても頭脳部門の一つとして戦略的な位置づけがあるのかな(?) な~んて印象はもった。実際はどうなのかは知りません。

 仕事は大変でも、勤務中に外国の雑誌を読める部門で働くのは「知的」(?)でいいなあ、もし自分が講談社の社員で20歳台なら、第一希望で配属を希望するなあ、などと夢想してみたりして・・・

 「情報収集」は個人でやるには時間や語学能力のキャパシティの関係から限界があるが、大企業ならカネや人手をかければ不可能ではない。要は、どのような切り口で、どのような海外記事を選択して読者に提供するかというのが、こうしたタイプの雑誌の腕の見せ所だろう。「企画力」と「情報編集力」、これはまさに現代に生きる人間にとっての必須のスキルでもある。

 とはいえ、印刷媒体としての雑誌のビジネスモデルは、従来のままではさらに困難さが増すことは十分に予想される。ウェブ上のネット版というだけでなく、さらに「無料」ビジネスモデルが拡がりつつある現在、どこでどうやって付加価値を出して、顧客(=読者)の支持を得ていくか、次号5月号からの新しい編集長・冨倉さんも、なかなか大変なミッションを背負うことになったものだ。やりがいのある仕事だろう。

 私も4月から開業予定です。お互い頑張りましょう!

 今回のイベントに集まったのは、社会人歴は長いが、ブログ歴1年未満の初心者のような私から、ブログ歴は長いが大学生も含めて若い世代の人たちが大半で、共通しているのは、同じ内容の雑誌をレビューしていることのみ。 

 ブロガーの「オフ会」みたいな感じだったといえようか。ブログやミクシィ、ツイッターを使いこなす若い世代の人たちと、いろいろ会話ができて面白かった。また、編集長以下、編集スタッフの皆さんとも直接会話ができたのは、読者交流という意味でも有意義であったといえるだろう。

 編集長以下、編集部のみなさん、お疲れ様でした。
 ではまた!!



PS 読みやすくするために改行を増やした。写真は大判に差し替えた。一部の語句の修正を行った (2014年8月29日 記す)



<ブログ内関連記事>

『クーリエ・ジャポン レビューコンテスト 第6回』 で、【編集長賞】 をいただきました!!
・・このおかげで編集部を訪問できました

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2010年3月号の特集「オバマ大統領就任から1年 貧困大国の真実」(責任編集・堤 未果)を読む ・・このレビューで「編集長賞」をいただきました

(2014年8月29日 項目新設)



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