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2012年12月20日木曜日

書評『修羅場の経営責任-今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実-』 (国広 正、文春新書、2011)ー 山一と長銀、このふたつの「事件」が明らかにする「法的責任」と「経営責任」の違い


1997年の山一証券破綻、翌年1998年の長銀破綻からすでに15年。

その間に「3-11」という巨大な災害を体験したわたしたちは、すでに4年前の「リーマンショック」ですら、遠い過去のように感じてしまう。

山一証券破綻や日本長期信用銀行(=長銀)破綻という「事件」は、すでに20世紀日本金融史のヒトコマとなってしまっているかもしれないが、本書によって、その最後まで見届ける必要がある。それは、わたしが元長銀関係者というからだけではない。

2012年に発覚したオリンパスの「飛ばし」による粉飾決算などを見ていると、山一の事件は既視感にとらわれる思いがする。「飛ばし」もまた需要サイドがいるからこそ供給されるという経済法則を考えると、一方的に証券会社の責任に帰すことができないのではないか。本書が、そのように再考するキッカケになることを望みたい。

長銀事件は、厚労省事件における「検察不信」も、「国策捜査」なるコトバが世に知れ渡る以前の「事件」であった。「国策調査」とは、元外交官の佐藤優氏の著作によって世の中にしられるようになったコトバである。

裁判というものは、裁判官と検察と弁護士(・・これにくわえて立場は分かれるが法律学者も)という法律のプロどうしの戦いであるだけではない。裁判所と検察という官僚機構の背後にある国家、そしてそれを下支えする大手マスコミと、民間企業の経営者という民間人との「正義をめぐる戦い」でもある。

2012年現在から振り返れば、無罪を立証するまでのプロセスがいかに困難を極めたかは想像に難くない。長銀の経営者たちが最高裁で無罪が確定したことは、「法治国家」としての最低ラインは死守できたというべきであろうか。

本書で逆説的に明らかになるのは、「法的責任」とは性格をまったく異にする「経営責任」を明らかにすることの重要性についてである。失敗原因の追及と法的責任の追及は峻別しなくてはならないのだ。

山一にかんしては、若き日の著者は弁護士として「社内調査委員会」にかかわることとなった。現在の「第三者委員会」の原型である。山一にひきつづいて長銀に関与することになった著者は、刑事事件の被告とされた破綻当時の経営陣の一人の弁護団長として最高裁の無罪判決まで伴走することとなった。

本書に描かれた世界を過去の話と一蹴してしまう前に、その後の法改正や一般国民の裁判やマスコミ観に変化を与える端緒ともなった事件として、貴重な教訓を読み取りたいものである。


(注)amazonレビューとして 2012年4月4日に投稿した文章に加筆修正を行った。





目 次

まえがき
第1章 山一證券破綻と社内調査委員会
第2章 長銀破綻と国策捜査との闘い
第3章 「企業の社会的責任」を果たす「前向きの責任論」
あとがき-「経営責任」とは、どういうことか

著者プロフィール  

国広 正(くにひろ・ただし)
1955年大分県生まれ。東京大学法学部卒業。弁護士(国広総合法律事務所)。専門分野は、企業の危機管理(プレス対応を含むクライシスマネジメントの立案・実行、重大案件の社内調査)、リスク管理体制構築(コンプライアンス、内部統制、コーポレートガバナンス)、会社法・金融商品取引法分野の訴訟(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<ブログ内関連記事>

書評 『マネーの公理-スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール-』(マックス・ギュンター、マックス・ギュンター、林 康史=監訳、石川由美子訳、日経BP社、2005)・・「■スイスの銀行家の「したたかさ」について」という項目で、1998年にUBSとアライアンス(提携)を結んだ「末期の長銀」について回顧した文章を書いている。なお、「長銀破綻」関連書籍については、上記のブログ記事を参照されたい。





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2011年2月7日月曜日

書評 『挫折力-一流になれる50の思考・行動術-』(冨山和彦、PHPビジネス新書、2011)-「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージを真っ正面から受け止めよう




「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージを真っ正面から受け止めよう

 日本の大企業のいわゆる「学校エリート」がいかに安全地帯で挫折を避けているか、そしてその結果、修羅場のガチンコ勝負では決定的に弱いかをつぶさに観察してきた著者による「挫折力」のすすめ。

 事業再生という修羅場で、当事者として再生対象の企業にかかわってきた著者は、歴史上の人物を引き合いに出しだけでなく、自らの豊富な挫折体験についても率直に語っている。

 学校エリートが幅をきかせているのは日本の大企業であるが、守るのに汲々として捨てるのを怖がっているのは、大企業だけでなく、中堅企業のエリートも同じだろう。
 しかし、すでに安定した時代は終わって「大競争時代」にあるのが、いまの日本社会である。グローバル競争のもと、不安定で不安定な状況は今後も終わることなく続き、それが当たり前の状態となる。
 「一寸先は闇」といったら大げさと笑われるだろうが、著者と同世代で、同じく時代の荒波に翻弄されてきた私には、腹の底から共感できる内容である。私も、勤務先が破綻する経験や、数々の修羅場を経験して現在に至っている。

 とくに私が共感したのは、「世の中のいわゆる「成功哲学」の欺瞞について」という一節だ。成功体験を語ったビジネス書があふれている現在の日本だが、後知恵で語った成功哲学など再現性に乏しく、成功物語はレアケースに過ぎないと断言する著者の発言には、まったくそのとおりだと強く同感した。

 チャレンジしたら失敗するのは当然だ。失敗から学び、挫折から学ぶ。自分自身の体験から得た教訓だから、他人の説教やアドバイスよりもはるかに身にしみる。数々の失敗がまた人間を成長させる。挫折もまた同じだ。若いうちの挫折は人生の財産である。何よりも挫折に対する免疫力がつく。
 本書には「挫折力」のポイントが50にまとめられている。いったん読み終えたあとも、このポイントをときどき読み返してみるといいだろう。

 よく言うではないか、「若いうちには積極的に失敗しろ」と。
 だから「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージは、若者と若い心をもったすべての日本人への応援歌なのである。

 悔いのない「ほんとうの人生」を送りたいと切望している人には、劇薬だからと敬遠することなく、ぜひ手にとって読むことを強く奨めたい。


<初出情報>

■bk1書評「「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージを真っ正面から受け止めよう」投稿掲載(2011年1月26日)
■amazon書評「「むしろ積極的に挫折せよ!」という著者の熱いメッセージを真っ正面から受け止めよう」投稿掲載(2011年1月26日)





目 次

第1章 挫折こそが成長への近道
第2章 挫折に打ち勝つ力 (1) ストレス耐性を高め、挫折と折り合う技
第3章 挫折に打ち勝つ力 (2) 人間関係の泥沼を楽しみ、糧にする技
第4章 挫折に打ち勝つ力 (3) 捨てる覚悟を持つための技
第5章 挫折に打ち勝つ力 (4) リアルな「権力」を使いこなす技


著者プロフィール

冨山和彦(とやま・かずひこ)

1960年生まれ。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役社長を経て、2003年、産業再生機構設立時に参画し COO に就任。解散後 IGPI を設立、数多くの企業の経営改革や成長支援に携わり現在に至る。オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、朝日新聞社社外監査役、財務省「財政投融資に関する基本問題検討会」委員、文部科学省科学技術・学術審議会基本計画特別委員会委員などを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<書評への付記>

本書は「経営権力」論についての考察もある好著である

 経営書にしては珍しく、本書の第5章には「経営権力」の本質への鋭く深い考察がある。これは組織の政治学であり、人間学である。「権力」の問題は経営学者は見て見ぬ振りをしているのか、それとも実感としてわからないのか、まともに取り上げているのをほとんど見たことがない。

 しかし、経営組織体における「権力」の問題を避けて通ることはできないだろう。「権力」とは英語でいえばパワーである。経営者からみれば行使すべきチカラのことである。従業員からみれば行使されるチカラのことである。経営者ではなくても、組織の各レイヤーごとに権力は存在する。上司と部下の関係もまたそうだ。

 「経営権力」は、大企業と中小企業には関係なく存在する。 

 パワー、影響力、リーダーシップなどの関係については、突っ込んだ考察が必要だが、このためには経営学では対応できないようなので、政治学や社会学による考察が必要なようだ。

 むしろ、高杉良などのビジネス小説を読むほうがいいのかもしれない。経営組織体における「権力」については、作品世界のなかでイヤというほど描かれているからだ。

 なお、以前bk1に書いた書評があるので、再録しておきたい。

『経営と権力』(松下武義、日本放送出版協会、2000)

机上の経営書とはまったく一線を画した経営バイブル

 経営者、経営者候補生、起業家のバイブルとすべき実践(実戦)の書。企業のトップとしていかに権力を正しく行使するかについて、著者がその豊富な経営者経験をもとに、実例を交えて、明確に語る。経営とは意思による行為そのものである。本書は、机上の経営書とはまったく一線を画している。こういう人こそが、本来実践(実戦)の学であるべき経営学の教授(現在、多摩大学客員教授)になるのは当然である。超おすすめ。
(2001年3月28日)

 残念ながら現在では品切れで入手不能である。

 私は組織体における「権力」の本質には、大学時代に体育会合気道部の主将を務めているときに気がついた。
 そのとき思ったのは、営利だろうが非営利だろうが、組織体にはかならず権力が存在する。権力というのは目に見えないが、明確なチカラとして存在する。権力は行使されるためにある。ただし、正しく行使されなくてはならない、ということだ。
 正しい行使の仕方は、しかしながら権力の本質そのもののなかにはない。権力を行使する個人のバックボーンをなす思想や信念、人生態度によって規定されるものである。だからこそ、理念が重要なのだ。すべての人間に権威が最初から存在するわけではない。

 おそらく私は社会学部にいて、マックス・ウェーバーの「カリスマ論」などを読んでいたことも影響があるだろう。マルクス主義の活動家たちもまたこの問題には敏感だろう。
 大学時代は活動家であった前官房長官が、自衛隊のことをうっかり「暴力装置」とクチにしたが、暴力も権力もパワーという点において、その本質は共有する。出典がマックス・ウェーバーであることは知っている人は驚くべき内容ではない。

 それにつけても、経営学者の経理論に「経営権力」論がないのは不思議でしょうがない。修羅場のガチンコ勝負をしていないから、実感として捉えることができないのだろう。政治学者が政治家になり得ないのと同じことか。

 いや逆に、大学のなかで権力闘争を戦う者は、たとえそれを捉え得たとしても、考察対象とはしないだろう。当事者ゆえに客観化できないということもある。嫉妬や妬みという、人間のネガティブな心理に踏み込まざるを得ないのも言及が回避される理由であろう。

 しかし、「権力」論不在の組織論は私には不毛に思えて仕方がない。組織とは、明確だろうが不明確であろうが、理由と目的があって、はじめて形成され維持される人間集団のことである。そこには必然的に「権力」が発生してくるのである。



<ブログ内関連記事>

『JAL崩壊-ある客室乗務員の告白-』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本
・・著者の冨山氏は、最近では JAL再建に関与を予定していながら民主党にハシゴをはずされた「挫折」経験をもっている

「幾たびか辛酸を歴て 志始めて堅し」(西郷南洲)・・私の座右の銘

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・この本もまた挫折につぐ挫折の経験を語ってやまない


 このほか「失敗」や「挫折」にかんする記事は多数あるので、これらのキーワードで「ブログ内検索」していただくとよいと思います。






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2010年10月18日月曜日

『JAL崩壊 ー ある客室乗務員の告白』(日本航空・グループ2010、文春新書、2010) は、「失敗学」の観点から「反面教師」として読むべき内容の本




間違っても機内に持ち込んで読むべき本ではないが、「経営の失敗学」の観点からは生きた事例の宝庫である

 「JALの現役・OBを含めた、複数の客室乗務員(CA:キャビン・アテンダント)等のグループ」が、主に人事労務にかかわる観点から描いた内幕物である。

 私は昔からよほどのことがない限り JAL は利用しないのだが、この本を読む限りこの会社には実に大きな問題がある(・・あった、と過去形でいうべきなのだろうが、インサイダーではないのでわからない)ことが手に取るようにわかる。

 正直いって、読んでもあまり後味のよいものではない。この本は、どの航空会社であるかは問わず、機内では読まない方がいい。読んでいて不安になってくるから、地上で読むことをおすすめする。

 しかし、読んで損はないと思われるのは、「経営の失敗学」の観点からみたら、生きた事例がゴロゴロしているからだ。「失敗学」とは、畑中洋太郎(東京大学名誉教授)が 2000年に提唱した概念。機械設計の失敗事例から帰納的に導き出したものである。畑中洋太郎氏は、のちに、様々な局面における「失敗」のパタン分析と回避方法について研究を蓄積している。

 日本航空の財務的な面からの失敗原因は、「週刊ダイヤモンド」(2009年11月7日号/特集:JAL 国有化の罠)などビジネス誌が、特集という形で具体的な数字をあげて解説しているので、そちらをご覧になればよい。

 経営資源のヒト・モノ・カネのうち、もっとも重要な資産であるヒトにかかわる状況は、事の性格上、内部関係者にしかわからないものがある。その点、こういう本も読んで損はないわけだ。ただし、鵜呑みにせず、距離を置いて読む必用がある。

 この本の第3章では、航空会社には、業務内容と労働条件があまりにも異なる4つの会社がある、という言い方がされている。すなわち、地上職、パイロット、整備、客室乗務員であるが、もちろん専門性の違いによって処遇に違いがあるのは当然といえ、同じ機内で勤務するパイロットと客室乗務員(CA)とのあいだの格差、しかもCAのあいだに存在する雇用条件の格差(=正社員と非正社員)には眼に余るものがある。国際水準からもほど遠い。

 これに組合問題がからんだ複雑な人事労務問題を処理しなければならない JAL は、再建の担い手からみても、きわめてやっかいな存在であろう。

 人事労務関係の施策があまりにもお粗末であることが、この本の中では何度も訴えられているが、そもそも「会社は頭から腐る」(冨山和彦)わけであり、再建にあたってトップが不退転の決意でもって過去の問題を精算していかない限り、末端まで改革が浸透しないのではないか。そういう感想をもつのは私だけではないだろう。

 第1章では、JAS(旧 日本エアシステム)との統合が最大の問題であったことが主張されている。たしかに「一将功成って万骨枯る」の結果であるようだが、これは経営サイドにおける M&A戦略の明かな失敗であり、なによりも「合併後の経営統合」(Post Merger Integration)の観点の欠如したお粗末な戦略であったことが、労働生産性と人事労務管理の観点から理解されるのである。

 しかし、これは JAL に限った話ではない。日本企業による M&A がうまくいかない理由の一つである。

 また、第3章では、女性管理職のあり方について、いろいろ示唆も多い。女性従業員の多い職場での女性管理職本人、女性管理職を部下にもつ人にとっては「他山の石」として必読であろう。

 航空会社の業務のなかでも、機内での「顧客との接点」(コンタクト・ポイント)である客室乗務員、しかもチーフパーサーやパーサーも含めた、ややベテランの立場からの発言であることを考慮にいれて読むべきだろう。

 顧客との接点といえば何よりも地上職員(グランドスタッフ)の声もまとめて聞いてみたいという感想ももつ。ブランド価値構築にとってもっとも重要なプレイヤーが、こういった現場で地道に働いている職員だからだ。


 最初にも書いたが、正直いってあまり後味のよい内容ではない。だが、とくにサービス業に従事するビジネスパーソンには読むことをすすめたいと思う。「他山の石」として、「反面教師」として、貴重な事例に充ち満ちているからだ。

 他社の失敗経験から貴重な教訓を得ることもまた、大事な「学習経験」となることを肝に銘じておきたい。「人の振り見て我が振り直せ」、と昔からいわれているではないか。
 


<初出情報>

■bk1書評「間違っても機内に持ち込んで読むべき本ではないが、「経営の失敗学」の観点からは生きた事例の宝庫である」投稿掲載(2010年03月28日)

*再録にあたって、大幅に加筆した。




PS 読みやすくするために改行を増やした。内容にはいっさい手は加えていない。あくまでもJAL破綻後の再生前の情報に従って執筆したものであることを強調しておく。 (2014年3月17日 記す)。


<関連サイト>

特定非営利法人 失敗学会
・・畑中洋太郎氏主催

失敗知識データベース
・・「科学技術分野の事故や失敗の事例を分析し、得られる教訓とともにデータベース化したもので、科学技術振興機構(JST)が提供」


<ブログ内感f連記事>

JALの「法的整理」について考えるために

書評 『稲盛和夫流・意識改革 心は変えられる-自分、人、会社-全員で成し遂げた「JAL再生」40のフィロソフィー』(原 英次郎、ダイヤモンド社、2013)-メンバーの一人ひとりが「当事者意識」を持つことができれば組織は変わる
・・その後、多くの人の予想に反して、JALの意識改革と再建が実現した

書評 『空港 25時間』(鎌田 慧、講談社文庫、2010 単行本初版 1996)-「現場」で働くナマの人間の声で語られた「仕事」=「人生」

鎮魂!「日航機墜落事故」から26年 (2011年8月12日)-関連本三冊であらためて振り返る

書評 『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(大宮冬洋、ぱる出版、2013)-小売業は店舗にすべてが集約されているからこそ・・・
・・正社員とパート・アルバイトという処遇体系の異なる従業員が同じ職場で働いている

書評 『失敗学のすすめ』(畑村洋太郎、講談社、2000)-失敗情報をきちんと管理して、「知識化」していれば大きな事故は防げる

(2014年3月17日 情報追加)


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2010年2月8日月曜日

書評『ものつくり敗戦 ー「匠の呪縛」が日本を衰退させる』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)ー これからの日本のものつくりには 「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」 が必要だ!




日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」-問題は製造業だけではない!

 「リーマンショック」発生から1年以上たったが、製造業にとっては、その後に発生した「トヨタショック」のほうがはるかにダメージは大きかった。

 「トヨタショック」とは、トヨタの売り上げが北米を中心に大幅にダウンし、とくに関連部品メーカーに与えた大ショックのことだ。今後も、円高傾向が続けば、量産型の製造業が日本で存続可能かどうか、その答えはおのずから出ることだろう。

 しかもまた、品質問題と大量リコールにともなう「第二のトヨタショック」は、日本の製造業の基盤が揺らぎ始めていることを示している。

 日本の製造業の何が問題なのか、ここで一度キチンと検証しておくことが必要だ。検証は多方面からなされることが必要だが、科学技術の観点からの分析による本書は、その試みの一つである。

 『ものつくり敗戦 ー「匠の呪縛」が日本を衰退させる』(木村英紀、日経プレミアシリーズ、2009)の著者は、評論家でも、経済学者でも、ジャーナリストではない。機械設計においてもっとも重要な要素技術にかかわる「制御理論」の研究者である。

 この立場から、技術と科学の関係が根本的に変化した「第三の科学革命」について考察し、付加価値をつくりだす要素がハードではなくソフトウェアになった時代の技術開発について、現状の日本が抱える問題について診断を行っている。

 中国やインドを初めとするアジア諸国からの追い上げが激しくなる現在、日本が「ものつくり」で生きていくためにはどこに活路を見いだすべきなのか。単なる組み立て(=アセンブリー)など労働集約型産業は間違いなく日本からは消えてゆくだろう。すでに「世界の工場」となった中国は、単なる労働集約型産業から脱し、さらに高度な製造業へとシフトを始めている。

 日本の製造業は、先端技術のキャッチアップではなく、先端技術分野においてブレークスルー技術を開発していかなくてはならない。そのためには、いままで世の中に存在しない、「目に見えないもの」を見えるようにすることが必要であり、著者のいう「理論・システム・ソフトウェアの三点セット」が必要である。

 しかしながら残念なことに、この三点セットは、これまで日本人がもっとも軽視し、しかも弱い部分である。「匠」(たくみ)や「技」(わざ)などの「暗黙知」を過度に重視し、「形式知」であるシステム思考を軽視してきたツケが回ってきたのか・・・

 「ものつくり」そのものではなく、「ものつくり神話」を批判する著者の問題指摘は正しい。とはいえ、問題点の指摘と大きな方向性を示しただけに終わっているような印象もうけないではない。著者による診断では、教育そのものを抜本的に見直さない限り日本の製造業に未来はないからなのだが、教育の効果がすぐにはでないことを考えると・・・

 読んで元気の出る本ではないかもしれない。しかし、冷静な現状認識をもたないかぎり真の問題解決にはつながらない。そのための診断書の一つとして、製造業だけでなく、日本の未来を真剣に考えているすべての人、とくに教育関係者には一読をすすめたい。


<初出情報>

■bk1書評「日本の未来を真剣に考えているすべての人に一読をすすめたい「冷静な診断書」-問題は製造業だけではない!」投稿掲載(2010年2月5日)



画像をクリック!



目 次
序章 日本型ものつくりの限界
第1章 先端技術を生み出した二つの科学革命
第2章 太平洋戦争もうひとつの敗因
第3章 システム思考が根付かない戦後日本
第4章 しのびよる「ものつくり敗戦」
終章 「匠の呪縛」からの脱却―コトつくりへ

著者プロフィール
木村英紀(きむら・ひでのり)
理化学研究所BSI‐トヨタ連携センター長。1970年東京大学大学院工学系博士課程修了、工学博士。大阪大学基礎工学部助手、工学部教授、東京大学大学院工学系研究科、同大学院新領域創成科学研究科教授などを経て、2001年より理化学研究所生物制御システム研究室チームリーダ。横断型基幹科学技術研究団体連合会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<書評への付記>

 このブログに一番最初に書いた記事は、2009年5月4日に執筆して投稿した「円安バブル崩壊」というものである。その直前まで、機械部品関連の会社にいた私は、「リーマンショック」と「トヨタショック」の直撃をくらった。そんな渦中に書いたのが、上記の記事である。

 それから1年近くたつが、基本的な認識を変える必要はなさそうだ。しかしそれは、ある意味では日本にとっては幸せなことではない。

 さらに今回激震をともなってダメージとなるのが、「第二のトヨタショック」とでもいうべき、大量リコール問題である。これにトップ経営層による対外コミュニケーション不足が、とくに米国を中心とした海外でバッシングを引き起こしている。

 こと問題が、トヨタの代名詞であった高い品質のそのものにかかわるものだけだけに、ブランド失墜のみならず、製造業の「ものつくり」の基礎が崩れつつあるのではないか、という強烈な危機感を感じているのは私だけではないはずだ。


 この本は、「円安バブル崩壊」というブログ記事を書いたあとに読んだものだが、あらためて書評に仕立てたうえで紹介することとした。日本の「ものつくり」に根強く存在する「ものつくり神話」を批判したものだからだ。「すりあわせ型」生産による「匠」と「技」にしがみつき、ある種の退行現象をみせている日本人に対して、これでいいのかという疑問を感じるためだ。もちろん「匠」と「技」が悪いのではない。名人芸に依存した「ものつくり」では、時代を超えて前に進むことは不可能である。

 「モジュール型」生産のアンチテーゼである「すりあわせ型」を、日本の「ものつくり」の根幹だと勘違いしただけでなく、日本企業でかつては非常に有効に働いていた「暗黙知」による経営を、日本の経営学者によって過分なまでに礼賛されて、これでいいのだと勘違いしてきた、とくに製造業分野の日本の大企業。経営学者たちの学説を、自分たちの都合のいいように解釈し、自己正当化を図ってきたこれら大企業の慢心。

 これがビジネス界で言説として流通することによって、発生し定着した「負のスパイラル効果」といっていいのではないか。


 「モジュール型」生産で大きく後から追い上げてくる、中国をはじめとする新興国の「ものつくり」企業群に対抗していうためのは、「暗黙知」に安住することなく、「暗黙知」を「形式知」に徹底的に変換していくことが求められる。これが、これからの時代に必要なものなのだ。

 「形式知」への転換能力は、日本人の「言語力」そのものにかかわるものだともいえるだろう。日本人のある世代以上のあいだで通じ合っていた「あうんの呼吸」は、日本国内ですら通用せず、深刻なコミュニケーション問題を引き起こしている。いわんや海外の異文化経営においておや、だ。

 本の紹介 『ユダヤ感覚を盗め!-世界の中で、どう生き残るか-』(ハルペン・ジャック、徳間書店、1987)で、日本人とユダヤ人の共通点と相違点について書いた際、似ている面が多いが、根本的に異なるのは、ユダヤ人が徹底した論理思考であることだと指摘した。「目に見えないもの」を「見えるもの」とする技術開発、この分野においては、日本人の弱点はすでに致命的な弱点となりつつある。

 とくに「言語力」を強化することは、すべての日本人にとって喫緊(きっきん)の課題である。この弱点を克服しない限り、たとえ日本人が世界に誇れる優位性をもっていたとしても、世界のなかで「名誉ある地位」を締めることは不可能となっていくだろう。
 
 とはいえ、教育の効果がでるには時間がかかる。ため息をつきたくなる現状だが、けっして絶望してはならない。勇気をもって立ち向かわなくてはなるまい。


PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判にした。あらたに<ブログ内関連記事>を新設した。2014年時点でも、価値ある内容の本である。逆にいえば、この5年ではたして改革が実行されたのかどうか疑問ではあるが・・・ (2014年8月18日 記す)

PS2 出版から15年たつ。ようやく日本の製造業復活の兆しが見え始めた。だが、本書の史的と提言はいまだ古びていない。(2024年4月9日 記す)



<ブログ内関連記事>

「円安バブル崩壊」(2009年5月4日)
・・このブログでいちばん最初に投稿した記事で、野口悠紀雄の『世界経済危機-日本の罪と罰-』 ( ダイヤモンド社、2009)を踏まえた所感を述べている


ものつくり関連

書評 『製造業が日本を滅ぼす-貿易赤字時代を生き抜く経済学-』(野口悠紀雄、ダイヤモンド社、2012)-円高とエネルギーコスト上昇がつづくかぎり製造業がとるべき方向は明らかだ

書評 『日本式モノづくりの敗戦-なぜ米中企業に勝てなくなったのか-』(野口悠紀雄、東洋経済新報社、2012)-産業転換期の日本が今後どう生きていくべきかについて考えるために

鎮魂!戦艦大和- 65年前のきょう4月7日。前野孝則の 『戦艦大和の遺産』 と 『戦艦大和誕生』 を読む

書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)

書評 『グローバル製造業の未来-ビジネスの未来②-』(カジ・グリジニック/コンラッド・ウィンクラー/ジェフリー・ロスフェダー、ブーズ・アンド・カンパニー訳、日本経済新聞出版社、2009)-欧米の製造業は製造機能を新興国の製造業に依託して協調する方向へ

書評 『アップル帝国の正体』(五島直義・森川潤、文藝春秋社、2013)-アップルがつくりあげた最強のビジネスモデルの光と影を「末端」である日本から解明

書評 『現代中国の産業-勃興する中国企業の強さと脆さ-』(丸山知雄、中公新書、2008)-「オープン・アーキテクチャー」時代に生き残るためには

書評 『中国貧困絶望工場-「世界の工場」のカラクリ-』(アレクサンドラ・ハーニー、漆嶋 稔訳、日経BP社、2008)-中国がなぜ「世界の工場」となったか、そして今後どうなっていくかのヒントを得ることができる本

書評 『空洞化のウソ-日本企業の「現地化」戦略-』(松島大輔、講談社現代新書、2012)-いわば「迂回ルート」による国富論。マクロ的にはただしい議論だが個別企業にとっては異なる対応が必要だ


「見えないもの」を「見える化」するのが科学的発見と理論化

書評 『ヨーロッパ思想を読み解く-何が近代科学を生んだか-』(古田博司、ちくま新書、2014)-「向こう側の哲学」という「新哲学」

『形を読む-生物の形態をめぐって-』(養老孟司、培風館、1986)は、「見える形」から「見えないもの」をあぶり出す解剖学者・養老孟司の思想の原点

最近ふたたび復活した世界的大数学者・岡潔(おか・きよし)を文庫本で読んで、数学について考えてみる

書評 『「大発見」の思考法-iPS細胞 vs. 素粒子-』(山中伸弥 / 益川敏英、文春新書、2011)-人生には何一つムダなことなどない!

企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた-日本科学未来館で 「地球時代の知の巨人」を身近に感じてみよう!
・・「「発見」というものは、たいていまったく突然にやってくるのである」(梅棹忠夫)


言語力と論理力アップのために

書評 『「言語技術」が日本のサッカーを変える』(田嶋幸三、光文社新書、2007)-「論理力」と「言語力」こそ、いま最も日本人に必要なスキル

書評 『外国語を身につけるための日本語レッスン』(三森ゆりか、白水社、2003)-日本語の「言語技術」の訓練こそ「急がば回れ」の外国語学習法!

書評 『言葉にして伝える技術-ソムリエの表現力-』(田崎真也、祥伝社新書、2010)

(2014年8月18日 情報追加)


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