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2022年2月1日火曜日

書評『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか? ― 世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』(安西洋之、晶文社、2020)―「2020年代のイタリアの中小企業」に学ぶべきこととは?

 

今年1月に日本公開された映画『ハウス・オブ・グッチ』を見てから、ふたたびイタリアの中小企業への関心が蘇ってきた。


かつて1990年代には「イタリアの中小企業」が大いに注目されたことがあった。『中小企業白書』でも「イタリアの中小企業」が取り上げられているのを読んだ記憶がある。 

ところが、2000年代以降には「世界の工場」となった中国企業との競争で敗れ去ったり、中国企業によってファミリービジネスが買収されているといった話題を耳にするようになった。グローバル資本主義が猛威を振るうなか、イタリアの中小企業の存在がメディアからかき消されてしまったのだ。 

そんなこともあって、自分のなかでは「イタリアの中小企業」への関心が薄れ去っていたのだが、ミラノ在住でデザイン戦略研究家である安西洋之氏の『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?』を読んでみると、この印象が間違っていることを教えられる。 

なによりも、amazon には「MADE in ITALY ストア」が開設されているのだ。食とファッション、家具やインテリアなどの生活製品が中心だが、イタリアならではの機能とデザインを兼ね備えた製品が扱われている。  

安西氏のこの本によれば、もともとイタリアの amazon で始まった取り組みが、グループ内でヨコ展開され、全世界に共有されるようになったのだという。自前でDXできなければ、プラットフォームに乗っかって商売すればいい。中小企業ならではの取り組みだ。イタリアもまたおなじである。

「MADE in ITALY」が世界中で受け入れられているのは、安西氏の整理によれば「意味のイノベーション」と「アルティジャナーレ」によるものだという。 

わたし流に平たく言い換えれば、技術だけに頼らずにイノベーションを実行し、アタマで考えるだけでなく職人的に手を使って動かしてみる、ということだ。 

「意味のイノベーション」という概念は、やや難しく感じるかもしれない。 

機能はおなじ製品でも、それを取り巻くコンテクストが変われば、あらたな意味が見いだされる。忘れ去られていた意味が蘇ってくる。そんな「意味の読み替え」を指していると考えたらいいのだろう。それもまたイノベーションなのだ、と。機能はおなじでも、あらたに見いだした「意味」を、製品に付与して売り出すのである。 

アタマで考えるだけでなく職人的に手を使って動かしてみる、これはもともと日本人にとっては不得意な分野ではないはずだ。デジタル時代だからこそ、デジタルの恩恵は存分に受けながらも、機械にできない部分、すなわち手仕事を活かすべき部分を残すこと。これはひじょうに重要だ。 

また、イタリアの中小企業の製品開発においては、経営者個人の「思い」が濃厚に反映されるのだという。市場調査にもとづいた最大公約数的な量産品では、競争に勝てるはずがないのだ。 

だから、個人的な「好き」や自分が「美しいと感じるもの」にこだわるのである。広く浅くではなく、狭く深く掘る。 

たしかに、「オタク」発祥の地である日本では、個々人の日本人にかんしては消費者としてのこだわりが強いのに、製品開発ということになると、どうも市場規模が比較的大きな国なので、量産思考の安全策をとりがちの傾向がある。これでは、とがった製品は生まれてくるハズがないではないか。 

製品開発にあたっては、日本人はもっと自分にこだわったほうがいい。それは、生き方の問題でもある自分の人生そのものと、仕事以外の趣味や教養がかかわってくる問題だ。 

2020年2月に出版されたこの本は、新型コロナ感染症(COVID-19)が猛威を振るう以前のことであった。コロナ下の2年間で、中小企業の経営が大きな影響を被っているだけでなく、世界的に消費者のマインドも変化している。この日本でも、消費者のあいだで「手作り志向」が復活する傾向がみられるようになってきた。 

消費者のマインドが変われば、ビジネスの世界も当然のことながら変化を受けることになる。「手作り志向」がどう製品開発に反映していくのか、させていくか、自分自身の問題として考えつづけていきたい。 




目 次
序章 意味を問う「メイド・イン・イタリー」 
第1部 「メイド・イン・イタリー」を再定義する
 第1章 「意味のイノベーション」という戦略的デザイン
 第2章 「アルティジャナーレ」が語ること
 第3章 世界における「メイド・イン・イタリー」の存在感
 *コラム1 「カシミアの帝王」はなぜ哲学書を読むのか? 
第2部 衣食住にみる「メイド・イン・イタリー」
 第4章 イタリアファッション産業の底力--紳士服とテキスタイル
 第5章 食のグローバルとローカル--プロセッコとスローフード
 第6章 日常空間を彩るモノたち--ファツィオリとモレスキン 
 *コラム2 審美眼は継承されるのか?
第3部 「メイド・イン・イタリー」のこれから
 第7章 スタートアップ企業は何を考えるか?--「テクノロジー」から「意味」へのシフト
 第8章 アルティジャーノ2.0--デジタルとモノのあいだで
 第9章 幼児教育が鍛える審美性--レッジョ・エミリア教育
 第10章 EUで磨かれる「メイド・イン・イタリー」--セラミックを介した文化交流
 *コラム3 三つ子の手遊び、百まで
終章 日本のビジネスパーソンが「メイド・イン・イタリー」から学べること
おわりにかえて

著者プロフィール
安西洋之(あんざい・ひろゆき)
モバイルクルーズ株式会社代表取締役。De-Tales Ltd.ディレクター。 日本の自動車メーカーで欧州自動車メーカーへのエンジンなどのOEM供給ビジネスを担当後、独立。1990年よりミラノと東京を拠点としたビジネスプランナーとして欧州とアジアの企業間提携の提案、商品企画や販売戦略等に多数参画している。また、2009年より海外市場攻略に役立つ異文化理解アプローチ「ローカリゼーションマップ」を考案して執筆・講演活動も行ってきたが、2017年にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』の監修に関与して以降、「ローカリゼーションマップと「意味のイノベーション」の融合を探索中。 
著書に、『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』、『イタリアで、福島は。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『ヨーロッパの目、日本の目』(日本評論社)。共著に、『デザインの次に来るもの』(クロスメディア・パブリッシング)、『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』(日経BP社)。監修に、ベルガンティ『突破するデザイン』(日経BP社)。(amazonの書籍ページより)
 

<関連サイト>

・・「食品、インテリア、服・ファッション小物、ビューティなどのカテゴリーにおいて、イタリアの企業や職人によって生み出されたさまざまな商品をご紹介します。下記のカテゴリーより伝統的なイタリアの製法を堪能できる厳選された商品をご覧ください。 Amazonおよびイタリア貿易促進機構(Italian Trade Agency)は、イタリア製品の海外販売を支援しています。」

Explore a range of products made by Italian companies and artisans in Food, Home, Apparel and Beauty. Each item has been carefully selected for exemplifying traditional Italian manufacturing produce. Get started by browsing our categories below and discover the full range.

Qui potrai trovare prodotti realizzati in Italia rappresentativi del Made in Italy. Sfoglia le categorie in evidenza e le sezioni regionali che trovi di seguito per scoprire le tipicità del nostro territorio. Se vuoi sfogliare l’intera gamma di prodotti segnalati come Made in Italy dai nostri venditori puoi partire dalla barra di ricerca di questa pagina


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2015年2月1日日曜日

書評『イスラーム化する世界 ― グローバリゼーション時代の宗教』(大川玲子、平凡社新書、2013)― 変化する現代世界のなかイスラームもまた変化しつつある



『イスラーム化する世界  ―  グローバリゼーション時代の宗教』(大川玲子、平凡社新書、2013)は、自分が知らない世界を垣間見るという経験をする本だ。

グローバル化するイスラーム。イスラーム世界に反映されたグローバル化。グローバル化しているのはビジネスだけではない。宗教もまたグローバル化しているのである。

本書で切り取られたこの側面は、なぜかほとんど日本のメディアで紹介されることもない。イスラーム教徒ではない非ムスリムにとっては、そのほとんどが「知られざる世界」である。

同時代に生きていながら、こういう世界があって、しかも活発に活動が行われているのとをはじめて知るのである。そこにこそ、本書を手に取って読む意味がある。

本書の内容は、『クルアーン』(=コーラン)の現代的解釈を英語で発信し、グローバル規模で対話を繰り広げている4人のイスラーム指導者を紹介したものだ。いずれも中東出身者ではなく、アラビア語を母語とする人でもない。しかも、そのうちの2人は成人してからの改宗者である。

その4人とは以下のとおりだ。

アミナ・ワドゥード: アメリカ人の黒人女性の改宗者
●ビラール・フィリップス: ジャマイカ生まれでカナダで成人した黒人男性の改宗者
●ファリド・イサク: 南アフリカに生まれたインド系移民出身のムスリム
●フェトフッラー・ギュレン: トルコ生まれでアメリカ在住

わたしは、トルコ出身の世界的市民運動家フェトフッラー・ギュレン以外はまったく知らなかった。もちろん名前を知っているという程度で具体的な言動や活動については本書を読むまでほとんど知らないも同然であったが。

もともと「近代国家」成立以前からグローバルな存在であったイスラームだが、西欧主導の「近代」という「西洋の衝撃」を体験し、その後のグローバリゼーションの流れのなかで、現代社会に生きるムスリムにとっての「手引き」ともなる解釈が求められるようになっているのである。

クルアーンが現代的問題への答えとなることをムスリムは求めており、それがある程度試みられ成功してきている。(P.127)

自分が置かれたローカルな環境から出発し、グローバルな世界で普遍的な問題解決につながる道を模索しているのである。グローバリゼーションのグローバルとは、多種多様なローカルの集合体でもある。まさにグローカルなのである。

かれらが依拠している「個人見解によるクルアーン解釈」とは以下のようなものだ。

個人やそれを取り巻く社会の問題の解決策をクルアーンから抽出しよう(というの)ではなく、アッラーがすでにクルアーンのなかで示唆していることを、自分たちがようやく理解することができた、ということになる。全知全能のアッラーはどのような時代や場所においても適応できる言葉を啓示として人々に伝えたはずだからである。(P.111)

こういう記述を読むと、なるほどと思わされる。恣意的な解釈ではなく、クルアーン原典を徹底的に精読することをつうじて新たな解釈を引き出してくるというロジックがそこにあるわけだ。

本書で取り上げられている4人は、ムスリムがマジョリティを占めるトルコ出身のギュレンを除けば、いずれも中東アラブ圏から離れた「辺境」の「マイノリティ・ムスリム」である。ギュレンは中東のトルコ出身者だが、トルコは政教分離の近代国家という事情がある。

ジェンダー問題、アパルトヘイトによる差別、西欧的価値観とは違う価値観の「強調」、あるいは西欧的価値観との「協調」と、それぞれの個人的目的意識の出発点は異なるが、多元化し、多様化する現実への対応に、多様化する解釈でもって応じ、実践への手引きを提供するという活動を行っているわけである。

本書で取り上げられた4人のなかで、わたしにとってもっとも興味深いのはギュレンである。スーフィズムの影響を受けているギュレンの「内的解釈」が、非ムスリムのわたしでも共鳴するものを感じるのは、内面性を重視する瞑想法が日本人にも共通して存在するからだろう。

西洋社会との協調を説くギュレンが、英語世界ではイスラーム世界を越えて知られている存在となっているのは、世界中に学校をつくって教育を行っている影響もあるが、スーフィズム自体がイスラームの枠を越えて普及しているからかもしれない。英語圏では、スーフィズムを体現した13世紀のルーミーは「愛の詩人」として有名である。

また、「進歩的クルアーン解釈者」であるワドゥードやイサクが、『クルアーン』解釈にあたって、『コーラン』の日本語訳者・井筒俊彦英文著作『コーランにみる倫理宗教的概念』(・・日本語訳は『意味の構造』)を参照して引用しているという記述も興味深い。ちなみに井筒俊彦は『ルーミー語録』をペルシア語から日本語訳している。

いまこれを書きながらシンガポールの英語放送 Channel News Asia をインターネットで聴いていたら2014年秋にオープンしたロサンゼルスの The Women's Mosque of America が2015年1月30日から金曜礼拝を開始したというニュースを放送していた。女性による女性のためのモスクが世界で初めて実現したということだ。金曜礼拝の指導者であるイマームも女性なのだという。日本在住の日本人が知らないだけで、イスラーム世界もまた確実に変化しつつあるのだ。

このように変化する現代世界のなかで、イスラームもまた変化しつつあることを知ることは、日本人の世界認識にとっては、きわめて意味あることだといっていい。2050年には世界人口の 1/4 がムスリムになるのであるから。

自分の知らない世界を知るという意味でも、一読する価値のある本である。簡潔によくまとまった読みやすい良書である。


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目 次
序章 グローバリゼーションのなかのイスラーム
 イスラームの内側からグローバリゼーションを問い直す
 「分かりにくい」イスラームを超えて
Ⅰ イスラームとコーラン(クルアーン)
 1. クルアーン成立の背景
 2. 聖典解釈の歴史-伝承主義から近代的解釈へ
Ⅱ アメリカ人「フェミニスト」の模索-アミナ・ワドゥード
 1. アフリカ系アメリカ人としての差別と改宗
 2. 男女平等の視点によるクルアーン解釈
Ⅲ アパルトヘイト解決への道-ファリド・イサク
 1. 南アフリカの人種差別とイスラーム
 2. 「他者」(キリスト教徒)との共存をクルアーンに読む
Ⅳ イスラーム主義への回帰-ビラール・フィリップス
 1.  カリブ海からカナダ、そして中東へ
 2. 伝統主義的なクルアーン解釈の継承
Ⅴ 西洋社会との協調-フェトフッラー・ギュレン
 1. トルコが生んだ世界的市民運動家
 2. 自己を律し、他宗教との対話を追求するクルアーン解釈
おわりに-クルアーン解釈の今
 イスラーム社会における限界-アブー・ザイド亡命事件
 マイノリティ・ムスリムの貢献
あとがき
関連年表
参考文献
人名索引


著者プロフィール
大川玲子(おおかわ・れいこ)
1971年、大阪生まれ。文学博士。東京大学文学部イスラーム学科、同大学大学院を経て、カイロ留学、ロンドン大学大学院東洋アフリカ研究学院(SOAS)修士課程修了の後、東京大学より博士号取得。現在、明治学院大学国際学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

Women's Mosque Opens In L.A. With A Vision For The Future Of Muslim-American Leadership (The Huffington Post, By Antonia Blumberg, 2015年1月30日)
・・ロサンゼルスにオープンした「女性による女性のためだけのモスク」で、女性イマームによる金曜礼拝が開始


<ブログ内関連記事>



グローバリゼーションと宗教

書評 『世界を動かす聖者たち-グローバル時代のカリスマ-』(井田克征、平凡社新書、2014)-現代インドを中心とする南アジアの「聖者」たちに「宗教復興」の具体的な姿を読み取る


イスラーム関連

本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入り

「害に対して害で応じるな」と、ムハンマドは言った-『40のハディース-アッラーの使徒ムハンマドの言行録』より

書評 『井筒俊彦-叡知の哲学-』(若松英輔、慶應義塾大学出版会、2011)-魂の哲学者・井筒俊彦の全体像に迫るはじめての本格的評伝


日本とイスラーム世界の身近なかかわり

書評 『日本のムスリム社会』(桜井啓子、ちくま新書、2003)-共通のアイデンティティによって結ばれた「見えないネットワーク」に生きる人たち

日本のスシは 「ハラール」 である!-増大するムスリム(=イスラーム教徒)人口を考慮にいれる時代が来ている

(2023年9月18日 情報追加)


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2013年9月16日月曜日

映画『大統領の料理人』(フランス、2012)をみてきた ー ミッテラン大統領のプライベート・シェフになったのは女性料理人



映画 『大統領の料理人』(フランス、2012)をみてきました。東京・渋谷の bunkamura ル・シネマにて。

フランス語の原題は Les saveurs du palais(宮廷の味)。ここでいう宮廷とはフランス大統領官邸であるエリゼ宮(Palais de l'Élysée)をさしています。日本語タイトルは直訳ではありませんが、そっけないながらもダイレクトに興味をかきたてる「いい味」を出しています。

一言でいって「おいしい映画」です。グルメ映画ではありますが、ただ食べるだけではなく作る側と食べる側との交流が軸に描かれた映画です。主人公が料理人であるという点においては料理映画というべきかもしれません。



『大統領の料理人』の主人公は、ミッテラン大統領のプライベート・シェフとなった女性料理人。ミッテラン大統領の任期は1981年から1995年までの14年間。晩年はガンと闘いながらなんとか大統領職を全うしたとのこと。

フランス語はすでに外交の世界では英語にとって変わられていますが、美食大国フランスにとって「饗宴外交」はきわめて大きな意味をもっています。しかし、饗宴料理ではなくふつうの家庭料理を食べたいというミッテラン大統領のつよい要望から、女性料理人に白羽の矢が立ったのでありました。

ダニエル・デルプシュという実在の女性をモデルにした実話にインスパイアされた作品だけに、借り物でもつくりものでもない、オリジナルなシナリオの良さが前面にでたエンターテインメント作品になっています。


(トレイラーよりキャプチャ画像)

この映画は厨房ものでありますが、政治家と料理人の関係であり、厨房における政治闘争であり、男性支配の世界での女性のキャリアであり、人生後半におけるチャレンジについての映画でもあります。いろんな見方が可能でしょう。

「大統領の料理人」を辞職してから数年後、主人公はなんと59歳(!)で「南極料理人」の職をゲットしています。フランスの南極観測隊基地の料理人という仕事です。30歳が上限という募集条件にクレームをつけ、みごと勝ち取ったらしい。さすがフランス人、南極でも食事にこだわる隊員たちを満足ささえねばならないわけです!

映画は、この「南極料理人」としての一年の任期の末期と、「大統領の料理人」の2年間のキャリアを交差させながらパラレルに進行させています。南極とフランス、現在と回想、過去と未来の交差・・・

(オリジナルのフランス版ポスター)

料理映画で厨房が舞台といえば、デンマーク映画の『バベットの晩餐会』(1987年)を頂点に、ドイツ映画の『マーサの幸せレシピ』(2001年)『ジュリー&ジュリア』(2009年、アメリカ)が思い浮かびますが、女性パティシエを主人公にした『ショコラ』(2000年、アメリカ)もそれに加えていいかもしれません。

主人公の女性料理人の助手としてつけられた若い男の子は専門はお菓子つくりの職人であるパティシエです。パティシエであっても料理は一通りつくるというのが求められるようです。料理における専門とその周辺の関係を考えるうえで興味深いがありますね。

グローバル志向のハリウッドではオリジナルのシナリオが底をついてリメイクばかりが流行ってますが、ローカルでもオリジナルなシナリオにこだわるフランス映画の良さを味わいたいものです。なによりも「見る口福」を味会うことのできる映画です。

肩のこらないエンターテインメントとして、お薦めしたい一品です。

ボナペティ(Bon Apetit) !!!




<関連サイト>

映画 『大統領の料理人』(公式サイト)

映画 『大統領の料理人』トレーラー(日本版)

Les saveurs du palais - Bande annonce(オリジナルのフランス版トレーラー)

「ミッテランの女料理人」に向けられた「嫉妬」(西川恵 「フォーサイト」 2013年7月22日)
・・「フランスの女性料理人のダニエル・デルプシュさん(70)が故ミッテラン大統領(在任1981-95年)に請われ、初の女性料理人としてエリゼ宮入りしたのは88年。2年間、大統領専属の料理人として腕を振るった。昨秋、フランスで彼女のエリゼ宮の体験が映画化され、9月には日本でも『大統領の料理人』の邦題で公開される。デルプシュさんに話を聞いた。」





PS フランス語では Inspire d'une histoire vraie となっています。そのまま英語に置き換えると Inspired by a true story となります。英語なら Based on the true story という表現がふつだが、このフランス語の文言から、実話をベースにしながらも実話そのものではない、というニュアンスを読みとることができるでしょう。

(トレイラーよりキャプチャ画像)


<ブログ内関連記事>

飲食関連

西川恵の「饗宴外交」三部作を読む-国際政治と飲食の密接な関係。「ワインと料理で世界はまわる」!
・・『大統領の料理人』の参考書として、『エリゼ宮の食卓』はぜひ読むことをすすめたい

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる
・・映画 『大統領の料理人』でも主人公のシェフは徹底的に素材にこだわる

「スペイン料理」 の料理本を 3冊紹介

書評 『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』(岡田芳郎、講談社文庫、2010 単行本 2008)

映画 『ジュリー&ジュリア』(2009、アメリカ)は、料理をつくり料理本を出版することで人生を変えていった二人のアメリカ女性たちの物語

『聡明な女は料理がうまい』(桐島洋子、文春文庫、1990 単行本初版 1976) は、明確な思想をもった実用書だ

『こんな料理で男はまいる。』(大竹 まこと、角川書店、2001)は、「聡明な男は料理がうまい」の典型だ

『檀流クッキング』(檀一雄、中公文庫、1975 単行本初版 1970 現在は文庫が改版で 2002) もまた明確な思想のある料理本だ

邱永漢のグルメ本は戦後日本の古典である-追悼・邱永漢

『きのう何食べた?⑥』(よしなが ふみ、講談社、2012)-レシピは読んだあとに利用できます


フランスのライフスタイル

『恋する理由-私が好きなパリジェンヌの生き方-』(滝川クリステル、講談社、2011)で読むフランス型ライフスタイル

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2011年1月号 特集 「低成長でも「これほど豊か」-フランス人はなぜ幸せなのか」を読む


南極関連

アムンセンが南極に到達してから100年-西堀榮三郎博士が説くアムンセンとスコットの運命を分けたチームワークとリーダーシップの違い

南極観測船しらせ(現在は SHIRASE 5002 船橋港)に乗船-社会貢献としてのただしいカネの使い方とは?



■料理と引き出し

なお、食事を食べてつくることについては、拙著 『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(佐藤けんいち、こう書房、2012)「第5章 引き出しの増やし方 応用事例編 「料理」を例に「引き出し」を増やしてみるとしたら」にくわしく書いておいたので、参照していただけると幸いです。

むかし富士山八号目の山小屋で働いていた (3) お客様からおカネをいただいて料理をつくっていた
・・わたし自身の「料理人」としての体験について語ってます


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2012年1月17日火曜日

書評『村から工場へ ― 東南アジア女性の近代化経験』(平井京之介、NTT出版、2011)― タイ北部の工業団地でのフィールドワークの記録が面白い

製造現場でのフィールドワークから得られた知見の数々はビジネスパーソンにも有用だ

本書『村から工場へ ー 東南アジア女性の近代化経験』(平井京之介、NTT出版、2011)は、日本企業での勤務経験をもつ日本人の人類学者が、タイ北部にある工業団地に入居して数年の、とある日系の組み立てメーカーの工場で「参与観察法」による「フィールドワーク」を行った記録である。

参与観察法とは、みずからが研究対象の人間集団のなかに入って活動をともにする研究方法のことだ。調査が行われたのは1994年である。

人類学者のフィールドワークというと、ふつうは未開社会や発展途上国の村落での調査を連想するのだが、本書の着眼点が面白いのは、コメづくりを中心とする伝統的な農村世界に登場した、近代的な製造工場で働く現地人ワーカーを研究対象にしたことにある。

著者はつてを頼って、ある日系企業から調査許可を得て社員として入社し、半年間のあいだタイ語の通訳として働いた。その間、製造現場では著者自身の日本企業における品質管理活動の経験が活用されたという。

さらに工場の現地ワーカーの女性と親しくなり、農村にあるそのワーカーの家族と同居しながら工場に通うことが可能となったため、工場労働における人間関係と、伝統的な農村での人間関係の双方の視点から有意義な観察結果を得ることができた。

コメづくり世界の労働をめぐる人間関係が、モノづくりの世界での労働にどう反映しているのかの分析も、実体験を踏まえた観察であるので具体的で面白い。また現地ワーカーの大半が女性であることから、伝統的な農村における家庭での役割との関係が工場勤務によってどう変化していったのかにかんする考察も興味深い。

本書は基本的に経済人類学の専門書であるが、ビジネスパーソンにとってもじつに興味深い内容になっている。

とくに、東南アジアに工場進出した日系企業で労務管理にたずさわる人にとっては、現地のワーカーをどうマネジメントするかという実践的な観点から、第2章と第3章はきわめて有益であろう。

たとえば、タイ人は学歴が自分より下の人間の言うことは聞かない、たとえ日本人であっても自分よりスキルが低い人間の言うことは聞かないなど実際的な知見の数々が、具体的な事例をつうじて散りばめられている。

本書に登場するタイ人ワーカーたちの大半は、農村出身で工場で働く第一世代のブルーカラーである。一方、工場のマネジメントにたずさわる日本人たちは事務と技術もふくめて管理業務にたずさわるホワイトカラー。そして、タイ人ワーカーたちと日本人管理者たちをつなぐ立場にあるのが「媒介者」としてのタイ人の現場マネージャーたちである。

タイ人ワーカーと日本人管理者、そして媒介者という三者のなかで繰り広げられるパワープレイの具体例がじつに面白い。その意味では、ヒトに焦点をあてた経営読み物としての側面をもっている。

製造業の海外進出の現場を知っていれば、これは自分が勤務する工場で起こっていることだと考えながら読むといいだろう。

本書の知見が、東南アジア全体で一般化できるかどうかは別にしても、自分のアタマでよく考えたうえでなら、応用可能な知識も少なからずあるはずだ。終章でのブルデュー社会学の「ハビトゥス論」を援用した分析も読む価値がある。

製造現場でのフィールドワークという希有な試みを実行し、記録としてまとめられた本書は、人類学の記録としてはもちろん、製造現場の労務管理の観察記録としても面白い内容である。

この世界に縁のある人はもちろん、そうでない人にとっても読む価値のある、ひじょうに読みやすい研究書として一読を薦めたい。


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<初出情報>

■bk1書評「製造現場でのフィールドワークから得られた知見の数々はビジネスパーソンにも有用だ」投稿掲載(2012年1月17日)
■amazon書評「製造現場でのフィールドワークから得られた知見の数々はビジネスパーソンにも有用だ」投稿掲載(2012年1月17日)



目 次

まえがき

序章 工場のエスノグラフィ
タイ農村女性と工場労働
タイ北部工業団地
調査地の選定理由
フィールドワーク
-工場からの調査許可/住み込んだ農村/日本人であることと調査/男性であることと調査/若い農村女性の生活に与えた変化
本書の構成

第一章 伝統的な仕事観
「仕事」とは何か
賃金労働と「仕事」/家の仕事/相互扶助と「仕事」
稲刈りの作法
三つの雇用形態
アオ・ワン/アオ・カオ/ハップ・ジャーン/ハップ・マオ
雇用主と雇用者の関係
-賃金雇用と社会関係/雇用にみられる相互扶助の論理
作業テンポと社会関係
-遠慮と思いやり/ゴシップによる統制/名誉の経済/テンポの駆け引きと人格的つながり

第二章 工場の組織とマネジメント
恩田プラスチック
従業員
採用
面接/採用基準
日本的経営
意思決定/日本人マネージャーがもつタイ人労働者のイメージ/タイ人労働者がもつ日本人マネージャーのイメージ/試される日本人
コミュニケーション
媒介者の情報操作/媒介者間の闘争
オフィスと組立課
事務員の優越性/事務員への敵意/ゴシップによる抵抗

第三章 組立課の実態
組立作業
流れ作業/疎外された労働/作業テンポの調節/相互扶助の欠如
トレーニング
新人研修/給与評価/昇進/処罰/離職/離職する理由
組立課の階層秩序
リーダーの権限/専門知識による権威/伝統的な権威
説得の技術
権威の盗用/ゲームの提供/甘言/感情のマネジメント
オペレーターの抵抗
ゴシップ/暴力行為/離職のほのめかし

第四章 グループの余暇活動   
余暇のグループ
ロマンチックな語り
霊媒カルト
カタログの消費
巧みな宣伝/ワクワクする理由
タン・サマイ
タン・サマイとジャラ―ン
グループと伝統

第五章 家庭生活への影響 
生活条件の変化
恋愛の自由
結婚相手を選ぶ主導権/ふしだらな工場労働者/妻に対する夫の疑念
時間の組織化
家への投資
家電製品の購入/家を化粧する/新築祝いの儀礼
計算の精神

終章 工場労働と文化変容工場労働への適応
近代化の過程
家庭生活の変化
工場労働と自由
あとがき

参照文献


著者プロフィール
     
平井京之介(ひらい・きょうのすけ)
国立民族学博物館民族文化研究部・准教授。
1988年、東北大学文学部社会学専攻卒業。同年、花王株式会社入社、1992年、ロンドン大学UCL人類学部M.Sc.取得。1995年、国立民族学博物館助手、1998年、ロンドン大学LSE人類学部Ph.D.取得、2001年、国立民族学博物館助教授。2008年、ハーバード大学人類学部客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

(出典:U-Machine タイの工業団地マップ)


<書評への付記>

ビジネスパーソンにとってのインプリケーション(示唆)

本書のフィールドワーク対象で企業名も個人もみな仮名になっているが、チェンマイから近いタイ北部のランプーン工業団地に入居する日系の組立製造業である。

タイの工業団地は大半がバンコクの周辺からクルマで1~2時間の場所に立地しているのだが、この工業団地はめずらしくチェンマイ周辺にある。

わたしはこの工業団地そのものには残念ながら訪問したことはないが、タイで創業する日系メーカーの工場は多数訪問して実際に見ているので、本書の内容は感覚的に理解できるものがある。とくに第二章と第三章は、なるほどとうなづきながら読むことができた。

書評に書いたが、タイ人ワーカーと日本人管理者、そして媒介者という三者が、それぞれの立場からいかに自分にとっって有利にゲームを進めようとしているかについての記述がじつに面白い。

タイ人ワーカーはタイ語しかわからず、日本人は日本語と英語か若干のタイ語、そして媒介者のタイ人マネージャーたちはタイ語に若干の英語を使ってコミュニケーションを行っているわけだが、コミュニケーションがディスコミュニケーション(=コミュニケーション不全)になっている状況は、はたしてどこまで当事者たちに理解されているのか

観察者である著者だけは、日本語とタイ語と英語のいずれも理解できるので、三者がそれぞれの立場で発言している内容がすべてわかってしまうのである。

ある意味では、参与観察を行っている当事者でありながら、メタレベルで観察を行う立場にもいるわけで、こういう微妙な立ち位置が本書のエスノグラフィー(民族誌)としての記述を興味深いものにしているのである。

目線でいえば、管理者としての上から目線でも、下から目線でもない、横から目線とでもいえるだろうか。

とくにタイ人たちのホンネがどこにあるかを知る上では、必須の読み物だとえいえるだろう。労働者はけっして「敵」ではないが、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という孫子の兵法を思い出していただきたい。

わたしは常々言っているのだが、上に立つ人間が意識していなくても、下にいる人間は上にいる人間の一挙手一投足まで観察しているのである。このことを忘れてはならない。しかも、日本国内ではなく、現地ワーカーたちの母国にいるのである。日本人からみればアウェーの土地である。彼等からみれば日本人は「異人」である。

タイ人も、同じ上座仏教圏のカンボジア人も、ラオス人もミャンマー人も、日本人と比較すると似たようなものがある。さらにはイスラーム世界のインドネシア人も日本人と比較すれば東南アジア的性格が濃厚である。

その意味では、タイに限らず、東南アジアで労務管理にたずさわる日本人管理者は、読んでおくことをすすめたいのである。


ブルデュー社会学のハビトゥス論

書評の最後に記した社会学者ブルデューのハビトゥス論。聞き慣れない専門用語かもしれないが、これはきわめて有用な概念であるので、ぜひ内容を知ったうえで、さまざまな場面で応用してみるといい。

ここでは教育社会学者の竹内洋(たけうち・よう)氏の要約をつかわせていただくこととしよう。

あの人は上品だとか無骨(ぶこつ)だ、とかいうことがある。このとき、個々のあれこれの行為が言及されているわけではない。個々の行為を処するシステムが指示されている。こういう行為の基礎にある持続する性向(心的システム)をハビトゥスという。ハビトゥス(habitus)とは、当人にも意識されにくい「心の習慣」(大村英昭)のことである。「型」と訳す人もいる。「肌」や「気質」と訳してもいいだろう。ハビトゥスは、家庭や学校で長い時間をかけて無意識裡に形成され日常的な慣習行動(プラティク)をもたらす血肉化された持続する慣習である。社会的出自や教育などによって形成される特有の知覚とそれにもとづく実践感覚をあらわす。
(出典:『日本の近代12 学歴貴族の栄光と挫折』(竹内洋、中央公論新社、1999. 引用は P.189~190)

日本でも、どこの学校を出たのか、どんな職種についたかによって、顔つきまで変わってくることが観察できるだろう。かつては、早稲田のカラーと慶應のカラーは違うなどという表現もされていたものだ。

本書の内容に即していえば、農村におけるコメづくりで養われたハビトゥスが、組み立ての製造現場において変容を経験するということだ。これはカラダの動かし方だけでなく、前近代的な農村の時間感覚と、製造現場の近代的な時間感覚とは異なるということだ。

本書では、組み立てラインで働く女性労働者が主たる観察対象となっている。彼女たちが、労働力の貸し借りの互酬関係の世界から、時間節約の観点から賃労働を選択する方向に向かっているのは興味深い観察である。

本書には言及がないが、徴兵制が敷かれているタイでは、農村男子はその大半が兵役体験をもっていることと思われる。軍隊内部は、農村とは異なり、身体作法も時間感覚も大いに異なる世界であり、その意味では男性のほうがより近代的な感覚を身につけているはずだ。

そういった男女の性差についての研究もあれば、さらに面白くなったのではないかと思う。




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